読んでいるのだけれど、最近、ちょっと本の内容と
関連した話題がブログ界隈で出ていたので、
それについて書いておこうとおもう。
本当に技術が必要とされる現場にgeekがいない
見慣れない場所のビジネス
大規模サービスを展開する企業が陥るジレンマ
それぞれ、アルファブロガ-のエントリなんだけれど、
ついているポジションがそれぞれ違うので
意見が異なっている風にも見える。
隊長は投資家、実業家で、R30さんはビジネスマン、
naoyaさんは技術者だ。
最初に挙げた「キャプランとノートンの戦略バランスト・スコアカード」では
企業がとるべきビジネス戦略三つあげている。
1 製品リーダーシップ戦略
2 顧客関係重視戦略
3 卓越した業務戦略
である。
1は、技術革新によって、常に最新の技術を投入しつつ
先行者利益を最大限に利用して市場を新たに開拓していく
ビジネスモデルで、ITではグーグルが代表例だと思う。
2は、技術でなく、サービスで、他の企業と自社を区別戦略を
取る企業であり、顧客のニーズを最大限に読み取りつつ、
市場をセグメント化し、高度なサービスを提供することによって
ハイエンド市場における「金払いのいい顧客」に
資源を集中する企業。ITだとIBMみたいに
高度なサービスと自社製品販売を組み合わせたビジネスモデルが
有名だろうな。
3は、製品のチャネルとコストを効率化し、
価格や利便性、物流などで他と差別化するビジネスモデルで
アップルのipodの戦略が、これにあたると思う。
卓越した業務戦略が強みであり、
マイクロソフト・ヤフーなどは、こちら側にある企業ではないかと思う。
で、だ。
それぞれのビジネスモデルで、中心となるべき層が
違うってことだ。
1は技術者が大事なビジネスモデルで
技術によって、製品の差別化が可能な
領域で勝負する。
2は、サービスによって製品の差別化を行うわけだから
顧客関係を重視する上でも最前線の営業マンなどが
非常に重要になってくる。
3は、業務戦略が重要になるために、
会社の経営部門がより重要になる。
こういう風に考えると、
naoyaさんや、切込隊長、R30さんが
それぞれ違う視点でビジネスを
眺めるのも仕方ないかな、と思う。
技術者であったり、クリエイティブな仕事であったり
記者であったりは、自分の作り出した製品の良さを
最大の売りにしたい。
営業であれば、自分の提供するサービスによって
製品の差別化を行いたいだろう。
実業家、管理職であれば、自分の策定した
業務戦略によって、収益を最大化するのを
目標とするだろうと思う。
一般的に、それぞれのビジネスモデルの
どれかに特化した企業が強く、バランスよく
三つを提供しようとすると失敗する。
ビジネスにおいては、製品の改良が進むに従って
有効なビジネスモデルは
1→3→2
といった時間軸で移動する。
トヨタがいい例で、最初は技術革新から始まり、
次に、コストダウン、流通、利便性に重きを置いた
卓越した業務戦略ビジネスモデルに、
そして、最近は、レクサス販売のように
サービスに重きをおいたビジネスモデルへと
なってきている。
サービス型企業になった後は、
もう次に逃げるべき市場がないので
次は、もう一度、1のビジネスモデルへと
回帰するしかないんだけどね。
これが難しいんだが。
トヨタの上層部は、それがわかっているらしく、
次の「金のなる木」を探している。
この三つのビジネスモデルは、それぞれに弱みをもつ。
1のイノベーションビジネスモデルは
製品が顧客の利用能力を超えた段階で
技術によって製品を差別化することが困難になる。
それ以上の技術革新に対して、顧客が
金を払わなくなるから。
だから、永続的に新しく、革新的で
顧客を「驚かせる」製品をリリースし続けないといけない。
が、これはかなりムズカシイ。
破壊的イノベーションを常に
起こしつづける企業というのは
過去に存在した試しがないからだ。
2のビジネスモデルの問題は
高いサービスを提供することで
喜ばせることができる顧客は、常にハイエンド付近の
顧客層だということ。
ハイエンド層が存在しない事業では
この戦略は、絶対に取れない。
さらに技術でなく、サービスで差別化するということは
そのサービスに対して、余分な料金を払ってくれる
顧客層をターゲットにするという事なのだから
市場のローエンド付近の顧客を見捨てなくてはいけない。
そして、ローエンドを見捨てると、
大抵、何らかの技術革新が生まれるのは
ここなので、潜在的な競争相手を
生み出す土壌を作ってしまう事に繋がる。
3のビジネスモデルは業務戦略を練りこんで
価格や利便性などで製品を差別化するのを強みとするんだけれど
同じ市場から高コストのプレーヤーが逃げ出し、
同一市場に同コスト構造、同チャネル構造の
プレーヤーが現れると、価格と利便性で差別化が
不可能になる。
結局、それぞれのフェーズで、必要とされる
コア技術、発想が違う故に、
変化の時代が来ると、企業は試練の時にたたされる。
パナソニックは、
「TVを制するものは家電を制す」
といった戦略をもっていたが、
この戦略は、根本から発想を変える必要があった。
TVのコモディティー化、パソコンの勃興のせいだと思うけど。
それに失敗したせいで、社長の首がこないだ
飛んじゃったわけだけど。
企業は、変化の時を迎えた時、
企業文化の壁、発想の転換を迫られるが、
その時にそれまでの功労者が、
その変化の時において
一番の邪魔者になる事が多い。
だから、変われずに、死んでしまう事がある。
市場は、非情であり、いらないものは
捨てろというシグナルを送る。
投資家は、ダメな株はすぐ売って、
有望な株を買う。
でも、企業が人間の集合体である以上は
感情的に、それまでの功労者達をすぐには切れない。
いらなくなった社員を速攻できって、
必要な社員をすぐに雇うなんてことはできない。
市場が常に、大企業の業績を上回れるのは
こういったスピードの差が大きい。
市場はあまりに非情だ。
ただ、変化の時代においては、市場と同じスピードで
変化しないとついていけない。
技術者も、営業やサービスを勉強しなきゃいけないし
営業は技術と経営を勉強しないといけないし、
経営者は、技術や営業の最前線を理解し続けないと
いけない時代なんだろうと思った。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453219184X/250-2778288-9420267
僕とnaoyaさんの言ってる話についてはそういう分類もありかなーとは思うけど、隊長のはちょっと違う気が。
でも、示唆に富んだ分類なので良かったです。
コメントありがとうございます。
こんな辺鄙なブログにコメント頂き
光栄です。
「ナンバーワン企業の価値基準(バリュー・プロポジション)読んでみます。
隊長のは、仰る通り、違いますね。
自分でも、読み返してそう思います。