クリステンセン以後の人の研究というのは
本当に恐ろしい事実を研究していると思う。
今、リチャード・フォスターとサラ・カプランの
「創造的破壊」を読んでいるのだが
のっけから、嫌な事が書いてある。
大企業神話。
日本では、ちょっと前まで、大企業に入るのが
ステータスだった。
アメリカも20年くらい前までそうだった。
だが、恐ろしい事に、実に恐ろしい事に
フォーブスやS&P500などを
企業ランキングを調べると、およそ20〜30年の間に、
トップ企業の10社中7社が姿を消している。
フォードやGMといった世界に冠たる企業ですら、
1917年から1987年の間の成長率は
信じられない話だが、アメリカ全体の市場平均以下なのだ。
アメリカ全体の成長率は、この期間7.5%だったが
フォ−ドもGMも6.9%しか稼げていない。
つまり、市場平均以下の成長率しか稼げていないのだ。
もし、投資家が大企業ブランドに目がくらみ
こういった企業に投資していたならば、市場平均以下の
リターンしか稼げないという事を意味する。
この期間中、市場平均以上を確保できた企業は
GEの7.8パーセント、デュポンの7.7%のみ。
GEのような「最高」の企業ですら、
市場平均を0.2%上回る業績しかあげれていないのである。
投資家の基準でいえば、明確に「失格」である。
こういった企業に投資するくらいならサルにダーツを
投げさせたほうがマシだ。
インデックスがそれを証明している。
これらの企業は、生き残る戦術には長けていても
株主に対する長期的利益は何ら保証しない。
株式市場では用の無い存在といっていい。
つまりだが、優秀な企業に投資するのでなく、
マーケットインデックスに投資するほうが
長期的には遥かに、笑ってしまうほど遥かに、
投資家の利益になるわけである。
大企業などというのは神話にすぎない。
いい企業などというものは存在しない。
常に市場平均の成長率のほうが、
マーケットに「優秀」と思われている企業の
成長率を上回る。
これが事実のようだ。
恐ろしい話である。
結局、大企業病、すなわちだが、
「競争で生き残る為に身に付けた術」が
変化することを、そして失敗することを
拒否させるシステムが常に企業内に働くという
事なのだろう。
残酷だが、資本主義と株式市場は冷酷だ。
成長を生み出せなくなった企業は
買収されるか倒産するしかない。
日本で、株式のメカニズムが働き始めた以上、
この力は、容赦なく既存企業に働きはじめている。
変化できない企業は死ぬ。
そういう時代に入ったのだろう。
ちなみに、現在だが、S&Pの入れ替え率は10%である。
これは、ある企業がリストに載っている事が可能な期間が
10年になったことを意味しているそうだ。
単純計算すればその通りである。
アメリカの雇用が流動的なのは、当然だろう。
アメリカの企業寿命は、恐ろしい事に10年間にまで
縮められてしまったのだ。
企業寿命30年説どころではない。
今のアメリカ企業の寿命は10年だ。
いずれ、日本もこうなるだろう。
企業の寿命はあまりに短い時代に入りつつある。
大企業に就職するという事が意味がなくなり
企業することが金持ちへの早道という時代に
なりつつあるのかもしれない。
恐ろしい話だが、大企業に就職しても
何の保証もなくなる時代へと突入しつつあるのだろう。
サラリーマンの子はサラリーマンになるしかない。
いや、そうじゃないんですよ。
ここまで、市場においてトップ企業の
クビのすげ替えが頻繁に起こるように
なったのは、下から上に向かってくる
連中が異常に増えちゃったからなんです。
ようするに、市場は成長を終えた企業を
下克上によってぶち倒す新規プレイヤーを
常に求めています。
成長する企業への投資こそが
確実に儲かる投資ですから。
このプロセスが進みすぎたのが
今のアメリカで、MS,アマゾン
グーグル、デル、アップルなんて
今のIT列強は、最初は、どれも
ガレージ起業で始まってますから。
0から始めた連中が大企業をぶったおす
仕組みを作って市場を永続的に成長させてるのが
アメリカ株式市場で、ある意味では
今のIT列強も市場の駒に過ぎないとも
いえます。
>>佐藤秀さん
仰る通り、ベンチャーが倒産する確率は
短期的には高いです。
ただ、これからは大企業でも20年間以下で
10社中7〜8社は倒産するか買収される
時代になっているわけですから、
(80%近くの大企業が20年間でやられる)
自分という最大の商品を売りつける相手として
成長の終った大企業を選ぶのは
危険な時代だな、と思うわけです。
そうですね。
メディア企業にとっては
厳しい時代だと思います。