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2005年10月21日

日本漫画インスパイア列伝

末次由紀氏の漫画の事と関連してなのだけれど、
しつこいけども、もう少し、書いておきます。

ぶっちゃけ、たけくまさんの擁護として
なんですけどね。


たけくまさんが


許される模倣・許されない模倣


で話されていますが、法的に模写もトレースも
大して変わらない状況です。

著作権法は、そこに
創作性+アルファが付け加わっているかどうかを
判断にして、盗作・剽窃を判断するようです。


NaokiTakahashiの日記「誰のためにもならない怒り」

ポストモダンもお話に過ぎない


文学理論では、1970年代あたりに語り尽くされた話です。
上記のリンク先の話は。

構造主義学派って文学理論家達が指摘した事なんですけどね。

ものすごく簡単にまとめると、

「オリジナルなんてない」

「ストーリーは再生産の時代に入っている」

「新しいプロットなんてない」

「作家は、文化と言う名の百科事典から物事を抜き出して
並べなおす能力しかない」

要約すると、こういうことです。
完全オリジナルな作品は、もう存在しえないんです。
たけくまさんも言ってますけどね。


っつーわけで、日本インスパイア列伝と銘うって
日本漫画の暗黒史、つまりマネ、パクリ、インスパイア、
まぁ、どれでもいいですけど、日本の漫画において
繰り返されてきたインスパイアの歴史を振り返って見ましょう。

他のウェブで話されていますが
バッハやモーツァルトがパクリ作曲家だったのは
あまりにも有名です。
また、画家の中でも、パクリ作品と呼べるものは
数多くあります。

ゴッホが日本の浮世絵に興味をもっていたのは
有名ですが、それをまんま模写した作品もあります。
また、ミレーの作品に明らかに
インスパイアされた作品もあるのも有名ですよね。


オリジナリティの塊と思われがちなゴッホですが
結局、インスパイア作家の一人に過ぎないともいえます。

天才は模倣しないとか言う人もいますが、
僕は、それには疑問を持ちます。
過去、天才と呼ばれた作家、作曲家、画家ですら
模倣、悪く言えばパクリを繰り返してきたからです。



では日本漫画インスパイヤ列伝。



1950〜60年代
全ての始まり。手塚治虫。
だが、彼がオリジナルであり、他人の真似を
しなかったというのは有り得ない。

残念だが、彼の作風は、当初、ディズニーアニメを
激しくインスパイヤしていることは明らかである。

ディズニーアニメーションなくして
手塚は存在しえなかった。彼もまた、大いなる先人の
叡智の上にたって、様々な作品の要素を真似して
それを並べなおす事しかできなかった。

ジャングル大帝は、ディズニーの動物アニメなしでは
存在しなかっただろう。

また、ブラックジャックでは
様々な小説の二番煎じ的なストーリーが
垣間見れる。

おそらくだが、手塚は、アイザック・アシモフ的作風を
していたと思われる。

SFの巨匠アイザック・アシモフは
ネタに困った時に、他人の小説を最初だけよんで
そこからネタを拾っていたと、著書の中で公言している。

手塚もネタに困った時は、
しばしばこれをやったと思われる。
BJには、モンテ・クリスト伯やシラノ・ド・ベルジュラック
その他の西洋の作品の影響が色濃く残る。
悪く言えば、真似たともいえる。
良く言えば、影響をうけた、だ。

探せば、もっともっと出てくるだろう。
そんなものだ。

文豪アレクサンドル・デュマは、盗作疑惑をかけられたとき
「たしかにパクリはしたが、俺の方が面白い」
と歴史に残る発言を行った。

作家なんて、その程度のものであるとも言える。

藤子・F・不二雄ですら
パーマンというスーパーマンのパロディともいえる作品を
書いている。

日本オカルト漫画の源流ともいえる
水木しげるは、様々な日本の妖怪を集め、
それで作品を描いたが、それは著作権がないから
パクリではない。ある種の共有資産だ。
だが、真似したともいえる。勿論、広義の意味でだが。

忍者漫画の金字塔、カムイ伝は、それまでの
忍者活劇の影響をあまりに強く受けている。
これも悪くいえばパクリだ。

1970年代からは、仮面ライダーや8マン、デビルマン
その他特撮ヒーローのようにアメコミの猿真似漫画が
勃興した。

多くは、日常は自分の正体を隠しながら
悪の組織と戦うといったアメコミのドミナントな
ストーリーを、日本風にカスタマイズして
多くの作家が成功をおさめた。

またアメコミ的な劇画の流行があった。
これも、アメコミの悪くいえば猿真似だと言える。
やってられん。


1980年代になると
うる星やつら、タッチといった新感覚作品が
出始めた。これらは、応用の応用といっていい作品で
この辺りから、漫画作画技術が複雑化しはじめる。

ちなみに、高橋留美子の作品は
しばしば、色んな作品のパロディだし

あだち充の作品は、延々とラブコメ、三角関係、
野球、ボクシングで、1パターン。

要するに、この時期、それまで別個だった少女漫画と
少年漫画のハイブリットが生まれ始めたのである。

結局は既存のものを組み合わせ。
これを創造と呼ぶかどうかは、その人次第だ。
それ以上のことは人間にはできないのだから。

また、この時期、AKIRAがでたが、
AKIRAは、その時期にあったバイク漫画と超能力漫画の
ハイブリットで、鉄男の設定には超能力漫画「超人ロック」
の中のロードレオンの設定があまりにかぶりすぎる所が
あるように感じる。

また、DBが生まれたのもこの時期だが
孫悟空だとか如意棒だとか、西遊記をインスパイアしすぎ
なんだよな、アレ。

鳥山明は、作品をパロディにすることで、
パクリのそしりを逃れている人だから、
それはそれでいいのだけれど。

スッパマンとかもそうだし、他の登場人物もそうだけど。


ジョジョは、かつて、タロットカードの盗作問題をかけられた事があり、
書き直しを行っているし、末次さんがパクったバスタードは
様々な作品のパロディがちりばめられている。

そもそも、バスタードの初期の女性の書き方は、松本泉の女性の
完全トレースといってよい。他にも様々な作品から
明らかなインスパイアをうけたコマが大量に存在する漫画であって、
パクリ禁止なんて言われたら話を作れないのではないか、とも
思える作品である。


現在、ジャンプで連載しているワンピースは、
オディッセイアの創作スタイル(島から島へ主人公が旅を続ける)
を模倣しており、シャンクスの顔の傷跡などは、「うしおととら」
の瓢からのインスパイアとしか思えないし
ナルトは、無限の住人のキャラをインスパイアしている
のも明らかであり、他にもクグツといった設定、蟲使いなども
他の漫画をインスパイアしているようだ。


マイナーな作品は除いたけれど、
メジャー作品でも剽窃、盗作疑惑はかけれない事もない。

もっとも、法的解釈をするなら、これらの多くは白であると
思う。なぜなら、創作性+アルファがあるからだ。

しかし、パクリ=真似という定義で、話を進めるとなると
上記の作家は全員黒である。


結局、文学理論を多少なりともかじった身と
しては、内田先生と同じく
「何かが新しい」
なんて言葉には、ほんと、胡散臭さしか感じれない。


真似なしでは、漫画、小説、ドラマ、アニメは作れない。
これが厳然たる事実だと思う。
そして、多くの場合、過去の作品から多くを学び、それを
上手に自分の作品に生かせる作家が、成功できる。


我々は、先人達が作り上げた叡智の上にたって、その上で
かつてあったものをこねくり回して、それまでのパターンを
整理したり、並べなおしたりしながら、今までなかった
パターンを探り当てるのが、せいぜいなんだろう。

これを創作というかが微妙なんですがね。

必ず、どこかから、力を借りて来ざるを得ないんだから。
そして、力を借りる上では真似をするしかない。

文学分野では構造主義を脱却するために、
ポスト構造主義というのが立ち上がり、
それは、脱コンストラクションを目指して
進みました。

しかしながら、内田先生のいうように
いまだにドミナントなストーリーは
物語の中で厳然として存在し、作家はそれを
繰り返しています。

結局、それが人間の限界なんでしょう。


posted by pal at 17:33 | Comment(1) | TrackBack(1) | 漫画 このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
この記事へのコメント
初めまして、記事のパクリ又はインスパイアを読んで、私自身興味のある話題なので少し書かせてもらいます。
私は漫画をよく読むんですが何年か前からネットで自分の好きだった作品がパクリだったという記事を見て、その元ネタを見てがっかりした経験があります。
そしてそれからは自分の前の世代漫画を読む事が多くなり、今では家にかなりの量の漫画があります。
そして途中から感じ始めた事なんですがオリジナルなんて一つの作品に一部でもあるんですかね?
嫌これは漫画に限らないんですが例えば小説も何十年も前に過去の作品を並び換えただけという議論が出されています。
他のジャンルからだったらセーフならもしかしたら大丈夫かもしれませんが小説漫画、映画と様々ある中からくっつけた可能性もあります。
もしかしたら無意識にしろ同じかもしれません。
長く見にくい文章ですみません、色々書きましたがだから漫画が嫌いと言ってるわけでなくパクリという言葉に自身悩んできたのここに書き込みました。
Posted by トオル at 2010年09月25日 11:08
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