池田先生のとこで、この記事読んだ時に、ちょいと書こうと思ってた記事があったんですが、ここ数日、市場が乱高下して、そっちにへばりついていたので、ブログ更新サボってたpalです、皆さん、こんばんは。
で、なんですけどね、ここ数日ほど相場見ながら、twitterとかしてたんですが、金利とか為替について、知らない人が結構多いってのでびっくりしたんです。
いやね、これ、基本中の基本として、知っといたほうがいいと思うんですよ。金融リテラシーの向上、なんて崇高な理念をぶち上げるつもりはないし、そんな実力はないですけどね。
「岡っ引き根性」の議論を繰り返す人々は、企業家精神というものを理解していないのだろう。資本主義の本質は「額に汗して働く」ことではなく、カーズナーのいうように、「だれも知らない情報を見つけて鞘をとる」ことなのである。この意味で、利潤の出る取引はすべてインサイダー取引だといってもよい。
資本主義はインサイダー取引である
池田先生のトコからの引用になりますけど、資本主義ってのは、個人・法人が利潤を求めて、ルールの枠内で競争するシステムです。
で、なんですけど、このゲームは、基本的に、鞘取りゲームなんです。どれだけ多くの鞘を取れるかってのがゲームの基本部分なんです。
で、その理由なんですけどね。
知っている人には、退屈な話になるかもしれませんけど、何で、投資家の人たちが、あんなに狂ったように「金利金利金利金利」って、末期のアル中患者みたいに金利に固執するかって話からはじめます。
まず、なんですけどね、国の中には、金利というのがあります。皆さんが、銀行に預金すると、利子がつきますよね?それが金利というものです。
ですけど、銀行だって、慈善で商売してるんじゃないから、預かったお金を、どこかに貸して、鞘を抜かなきゃいけない。
これは、銀行の代表的なビジネスモデルですけど、短期で集めた資金を、長期で企業や、住宅を購入しようとする個人に貸して、その間の鞘を取るってのがあるんです。
皆さん、よく、経済ニュースで、設備投資の増減とか、住宅市場関連のニュースをよく見かけると思います。それは、銀行のビジネスモデルが上手に回っているかどうかを簡単に知れる指標のひとつだからなんです。
まず、銀行ってのは短期で借りて長期で貸すことによって、鞘抜きをするのがビジネスモデルのひとつだって事を頭にいれておいて下さい。
銀行を例にとるなら、彼らがやっているのは、鞘取りに他ならないんです。
で、なんですが、ここからが大事なんですけどね。同じように、普通の企業とかも、鞘取りなんです、やっていることは。特に貨幣に関しては、ね。
仕組みを説明させていただきますが、製造業では、新しい工場建てるとき、銀行からお金借りて建てるか、手持ちの現金で建てるからのいずれかになります。
で、なんですけど、銀行から借りる場合には、(銀行から借りた金+利子)以上の利益を出さないといけない。すなわち、鞘取りできないようなら、借りないほうがマシなんです。もし、鞘取りできなかったら、破産するしかない。
いっぽう、手持ちの現金で立てた場合ですが、(銀行に預けた場合の利子+現金)を上回る利益を出せないようなら、銀行に金を預けていたほうがマシなわけです。
というわけで、企業ってのは、延々、この鞘取りゲームを繰り返しているわけなんです。資本主義が鞘取りゲームだといわれるのは、そういう理由です。そして、この鞘こそが、利潤、利益であり、企業活動の源泉なんです。
極端な話ですけど、この鞘をめぐるマネーゲームこそが、資本主義の原動力なんです。鞘を抜くために、競争し、勝ったほうが市場に残り、負けた相手は市場から淘汰されていく・・・・とね。
これは、ゲームのルールですから、それ自体に、僕は文句は言わないわけですよ。
ただね、鞘取りの上手さは市場で勝ち抜くためには必要だけど、それ自体が資本主義の目的じゃないんです。
イギリスのヴィクトリア朝の政治家ディズレーリが言った言葉がありますけどね、
「イギリスが商業的に優勢で繁栄している原因を金本位制に求めるとしたら、それは途方もない勘違いです。わが国の金本位制は商業的繁栄の原因でなく、その結果なのです。」
って言葉が残っているんです。当時は、金本位制といって、貨幣は中央銀行にいけば、金と交換できた時代でした。金本位制度ってのは、今からは想像しにくいですが、絶対必要なシステムと、当時はみなされていた部分があります。現実的には、金なんて、ほとんど何の役にも立たない金属なんですけどね。
あのね、確かに鞘抜きは大事です。これこそが、資本主義の原動力なんですからね。でもね、勘違いしちゃいけないのは、鞘抜きが目的じゃないってことです。鞘抜きゲームは、実際には、副産物なんです。ディズレーリが金本位制をイギリス繁栄の原因でなく、結果と看破したようにね。鞘抜きも同じようなものなんです。
資本主義の最大の利点は、その創造力なんです。(自分で言ってて臭いけど)
マンキューの「経済学の十大原理」のひとつに、
第八原理:一国の生活水準は、財・サービスの生産能力に依存している
ってのがありましてね。ちと、マンキュー経済学から引用させてもらいますが、
生活水準の格差や変化のほとんどは、各国の生産性の相違によって説明できる。生産性とは、1人の労働者が1時間あたりに生産する財・サービスの量である。労働者が1時間当たりに多く生産できる国では、ほとんどの人が高い生活水準を享受している。労働者の生産性の低い国においては、ほとんどの人がより低い生活水準を甘受しなければならない。
3 経済は全体としてどのように動いているか
ってのがあるんです。もうひとつ、引用させて頂きますけど、
生産性が生活水準の基本的決定要因であるならば、他の要因は二義的な重要性しか持たない筈である。例えば、過去1世紀のアメリカにおける労働者の生活水準の向上を、労働組合や最低賃金法の功績であると考える人もいるだろう。しかしながら、アメリカ人労働者の本当の英雄は、彼ら自身の生産性の向上なのである。また、アメリカの所得が近年低成長なのは、日本を始めとする国々との競争の性であると主張する評論家たちがいる。しかし、本当の悪者は海外との競争ではなく、アメリカ国内における生産性成長率の低下なのである。これが大事なことなんですけど、資本主義というゲームは、その性質的に鞘取りゲームです。
ですが、大事なことは、鞘取りゲームを通じて、生産性を高め、生活水準を高めていくことなんです。そうしていけば、時間はかかりますけど、世界は豊かになっていくんです。
ちょっと、話はそれますが、
乗数効果
乗数効果(じょうすうこうか, multiplier effect)とは、一定の条件下において有効需要を増加させたときに国民所得が乗数によって増加する現象。
ってのがありまして。
ちと、これだとわかりにくいかもしれませんけど、理論的なのを全部はしょってぶっちゃけると、「一定の条件下では、投資が増えると経済が発展するよ」って事です。投資が消費を刺激し、それが国民所得を増やし、それがさらに消費を増やすという効果が生まれるためなんです。
経済を発展させたければ、まず投資が増えなければいけないってのは、この理論によって証明されたわけです。設備投資とかが、景気指標で常に気にされるのはこのせいです。
で、なんですけど、またマンキュー経済学に戻るわけですけどね、
例えば、過去10年間というもの、アメリカでは財政赤字(財政支出の財政収入に対する超過分)が議論の的であった。後述するように、財政赤字に関する危惧のほとんどは、財政赤字が生産性に与える悪影響に関するものである。政 府が赤字を穴埋めするために借りれば借りるほど、他の借り手が利用できる資金量が減少する。こうして、財政赤字は、人的資本への投資(学生の教育)も、物 的資本への投資(企業の工場)も減少させてしまう。今日の低投資は明日の低成長をもたらすので、財政赤字は生活水準の向上を妨げると一般的に考えられてい るのである。
このように、財政赤字が嫌われるのは、最終的には、人的資本への投資と物的資本への投資を減らしてしまい、それが将来の低成長を招くからなんです。
そして、これは、金利にもいえるんです。
投資を増やしたかったら、方法は二つ。ひとつは、企業ががんばって利益をだして、利益の再投資を行うこと。そしてもうひとつが、銀行などからお金を借りて、設備投資をする場合です。
そして、この場合、どちらも、金利が重要になるんです。金利が高かったら、企業はお金を借り難く、設備投資が難しくなります。または、お金が銀行に引き寄せられて、設備投資にまわらないかもしれない。
それは、明日の低成長をもたらし、ひいては、人々の生活水準の低下をもたらすんです。
今、狂ったように、みんなが日銀だとかFRBの金利政策に注目しているのは、そのせいなんです。
いま、日本でもアメリカでも、景気後退の兆しが見え始めたわけです。すでに、景気後退に入ったという論調まで出てきている。
こうなったら、財政か金融当局が、何らかの手段で、景気刺激策を取らないといけなくなる。
景気を良くするためには、投資が増えないといけない。投資を増やすのに、もっともいい方法は何か?
それは、長期金利が下がることなんです。
長期金利が下がれば、企業はお金が借りやすくなって、その結果、鞘取りがしやすくなる。また、住宅投資においても、住宅ローンなどが軽くなるので、その分、家計の可処分所得が増えて、消費が増えます。つまり、需要が刺激される。
だから、ここ最近、アメリカのFRBの動向にみんな注目しているわけです。あたりまえの話ですけどね。
無論、FRBが短期金利を下げつづければ、インフレになって、結果としてより酷い結果になります。また、市場との対話において、失敗してもだめなんです。
ここ半年のバーナンキFRBは、ちょんぼが多すぎて、市場に失望を与えまくっているんですけど、そのくらい、FRB、そして短期金利ってのは大事だってことなんです。
市場を通じて、生産性を高め、労働者がより豊かな生活水準を享受できる経済をつくる手助けをするのが中央銀行の究極的な意味での使命といってもいいんですがね。
もっとも、日銀は、もう金利は下げれる限界まで下げてて、あと一回くらいしか利下げできないし、FRBも、そんなにもう下げる余裕がないのが困りものなんですけど。
詳しいことは明日にでも書きますけど、FRBのバーナンキさん、非常に困った立場にあります、今。
とりあえず、今日はこんなとこで。
前任者のグリーンスパンが金利を上げすぎてたところにサブプライム問題。金利を下げたら下げたでインフレ懸念で批判される。下げなければ株式市場が崩壊。
何やっても何らかの問題が出る状態だと思います。しかし何もやらないよりはいい。そういう意味で私はバーナンキ氏の反応の速さは素晴らしいと思います。