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2005年10月11日

モジュール化した後の自動車産業のルールの変更と金の向かう場所

日本の自動車産業は、現在、最高潮に有るようにみえるが
同時にデススパイラルの一歩を踏み出している。


先日の日経の1面が示すとおり、日本自動車産業は
より利便性、製品のリリース速度、カスタマイゼーションに
特化するために、外部委託を本格化させている。

自動車産業にも、ローエンド、ミドルクラス、ハイエンドの
大まかな三種が存在し、ローエンドは、現状、
世界的に韓国車が、大幅にその台数を伸ばし始めている。

日本自動車産業は、採算の取りにくいローエンドから
撤退を始めており、ミドルクラス、ハイエンドへと
軸足を移してきている。

ミドルクラスに存在するトヨタ、ホンダ、ニッサンの車種の
信頼は、ずば抜けて高く、その技術力も他の車種を引き離すが
一方で、その性能については、すでに「行き過ぎ」が見え始めている。

よって、ルールは変更されつつあり、自動車本体に関する技術力は
競争力との相関性を失いはじめるだろう。

ルールの変更により、利便性、
顧客の要望にあわせたカスタマイゼーション
そして、製品のリリース速度が、競争力と高い相関性を示すように
なってきており、これは、ミドルクラスにおける自動車産業の
モジュール化を推し進めることになるだろう。

同クラスに高コストのプレイヤー、つまりGM,フォードがいる限りは
この戦略は極めて有効だが、この二つは、すでに競争力を失い
やがては、この市場から撤退するだろう。あるいは駆逐されるだろう。

同クラスに日本車のみが存在するようになった後は、
日本自動車産業が、ミドルクラスから魅力的な利益を
出すことは実質不可能であると考えたほうがよい。

フォード、GMに対する日本車の最終的な勝利は、
利益の消失によって払わされる。


一方で、ハイエンドクラスを攻略しはじめた日本自動車産業だが
ミドルクラスにおける、日本自動車産業の覇権が迫った今、
ハイエンドへと進出しない自動車会社は、やがてくる
勝利の代償による利益の消失に備えられない。

日本自動車産業は、いまだ、技術力というルールが
存在するハイエンド市場を早急に攻略せねばならない。
ただし、この分野では、上位のプレイヤーは
本気で生き残りをかけて戦いに挑むので
より厳しい戦いが待っていると思われる。


最後がローエンドになるが、世界的にみて、
このローエンド市場を食い荒らす韓国車を甘くみてはならない。

彼らは、やがて、ローエンド市場を制覇し、
そして、ミドルクラスへと駆け上がってくるだろう。

これは、避けられない戦いとなり、
そして、この戦いに負けた場合には
かつてのフォード、GMと同じ状況に追い込まれると
思われる。

一旦、ローエンドに定着してしまった韓国車を
駆逐するには、再び、ルールを変更させる以外に
ほぼ、方法はない。

ローエンドでは、常に価格が競争の第一ルールとなる。

現状、自動車の性能は行き過ぎており、
同じガソリン車でのローエンドでの戦いは、極めて
困難を極めるため、やはり、電気自動車のような
コストを低く抑えるための、車種が
ルールを変更するための第一の方策であると考える。


現状、電気自動車のコストの問題は、バッテリーの一点に尽きる。
そして、バッテリーの性能が「不十分」だからこそ、
ルールの変更を強いる最高の技術である。

性能が「不十分」でない分野においては、
常に技術改良がルールの競争となる。

現在、リチウムイオン電池の技術開発は
それが、携帯電話やノート型パソコンの分野において
「売れる」ことによって、飛躍的に進んだ。


電気自動車、ハイブリットにおいて、
性能が「不十分」なのは
バッテリーの問題に尽きるからであり、
このバッテリーが新たな競争ルールに変更される可能性は
高い。

性能が「不十分」な領域に常に金は向かう。
そして、そこが新たなブランドに設定されるのである。

ローエンド市場の新たなルールは、
サプライヤーの技術が「不十分な」領域に
落される。自動車の基幹技術はどれも
十分すぎる領域にあり、それが新たな市場ルールに
なることは考えにくい。


現在、ハイブリット、燃料電池車、電気自動車
その全てにおいて、電池技術が「不十分」である。

この技術次第では、現在のハイブリット車でも
一回の給油で1000キロ走ることを可能にする。

強力な電池さえあれば、それを前もって
充電しておくことで、信じられない距離を
走ることはすでに可能であり、
トヨタのプリウスにバッテリーを積んで
1000キロ走る車をつくったアメリカの会社がすでに
存在する。


バッテリーはいまだ、不十分である。
電気自動車一台に関して、そのコストの半分以上を占める。
富士重工がリリースしようとしている電気自動車は
当初の価格が150万円といわれるが、その半分近い
70万円なし80万円がバッテリーに費やされると思われる。

ただし、一旦、ローエンド、ないしは新市場に定着した場合は
そこから技術開発が劇的にすすむので
従来のプロセスを考えると
7年程度で、価格が半分以下になると考えたほうが良い。

2008年発売として、もし新市場を開拓したならば
2015年には、ローエンドの市場を丸ごと変える可能性が
ある電気自動車が誕生することになる。

そして、その競争のルールは、
やはりバッテリー技術になり、
バッテリー技術を有するプレイヤーが勝利者となる。

自動車業界は、ルールの変更が迫っている。
現在、性能が十分な自動車関連技術でなく、
既存のサプライヤー企業が有する
不十分なバッテリー、電池技術が、次のコアインビタンスになり
それがブランドを確立するものとなると思われる。

パソコン組み立て技術が必要十分を満たした後、
そのブランドが、OS、部品関連に移ったように。

既存の技術が成熟し、産業のモジュール化が
進んだ後は、そのコアインビタンス、ブランド、
金が集る場所は、サプライヤー企業の技術になる
事が多く、自動車産業において、そのルールの変更は
おそらく、電池技術に集約されていくと僕は考える。



posted by pal at 03:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
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