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2005年10月10日

イノベーションと企業の成長法則

第一フェーズ 「製品開発」

ある企業が破壊的イノベーションをもって市場に参入する。
それによって作られた製品は、常に、その段階において
顧客の要望を満たさない不十分なものである。

その企業の製品は、新しい市場、ないしは
既存市場のローエンドに定着する。
ローエンドの顧客相手のビジネス相手のための
低い利益率でも運営可能なビジネスモデルが
構築される。

既存の大企業は、その生み出す利益があまりに
小さいことから、その市場に注意をはらわない。
もしくは、その市場では、既に採算が取れなくなっているために
参入者が現れると、さっさと撤退してしまう。


第二フェーズ 「製品開発競争」

ローエンド、あるいは新市場に根を下ろした
新規企業は、その顧客相手から上がる利益を元に
破壊的イノベーションを発展させつづける。
顧客は、それに喜んで金を払う。

理由は、その製品が、発売当初は「不十分なもの」だったからである。
顧客は、既存の製品が、不十分なものである場合、その
技術改良製品には、喜んで金を払う。

また、この時期から後発の参入者があらわれる。

この時期の企業が行うべきことは、このフェーズにおいて
破壊的イノベーションは、持続的イノベーションに
変わるので、それに伴ない、企業の体質は、創造的雰囲気から
官僚的雰囲気に変化させねばならない。

持続的イノベーションの分野では、データに基づいた
市場リサーチ、極めてシステマチックな企業運営が
行われなければ、成功はおぼつかないからだ。

これに失敗すると、その企業は、後発の参入者によって
蹴散らされる。


第三フェーズ 「行き過ぎ」

製品の開発競争の結果、製品性能が顧客の利用能力を超える。

結果、「行き過ぎ」が顕著になり、製品本体の性能改良に
対しては、顧客は金を払わなくなる。

一方で、顧客の要望が多様化する。

製品のオプションに対しての要求が顕著になり
「性能競争」からカスタマイゼーション、
リリース速度、利便性に競争の原則が変化する。

また、同コスト構造の企業間の競争も激しくなる。

そのため、上記二つの問題を解決するために
企業は、この時点で、構造をまた変化させる必要が出る。

企業構造をモジュール化し、技術の外部委託を行う。
(この時点で製品の性能は「行き過ぎ」ているので
その技術は外部委託しても問題がない。それ以上改良しても
誰も買わないからだ。)

それにより、より低いコストで、高コストの競合企業と
戦えるモジュール型企業へと脱皮し、さらに
あらゆる顧客の要望に、よりスムーズに対応できるようにする。

また、顧客を選別し、良い顧客と悪い顧客の定義がなされる。
ハイエンドの顧客をより効率的に攻略する段階に移り
利益率の悪いローエンドの市場からは
撤退をせねば、この時期は乗り切れない。

これに失敗すると、競合企業に食われる。



第四フェーズ  「成長の終った企業の死と新しいプレイヤーの勃興」

モジュール化は、高コストの競合企業と
戦う上では、極めて正しい戦略である。

しかしながら、高コスト企業が市場から駆逐されると
今度は、同一コスト構造の企業との戦いが待っている。

この結果、その企業が優位にたてるものは、
製品のカスタマイゼーションになる。

そしてカスタマイゼーションをもたらす事ができる
サブシステムの重要性が増す。

これによって、サブシステム企業の製品は
顧客にとって「十分でない」領域まで
再び落される。

この時期、技術の外部委託とモジュール化、組織の官僚化
によって企業内部には、独自技術がほとんど消失している。
あるいは、既存顧客相手のビジネスしかできない企業構造に
変質している。

結果、新たなプレイヤーとの競争をするための
能力が、失われ、
そして、抜け目のない新規プレイヤーは
自分達が、顧客にとって最も重要な
「十分でない」製品の製造能力をもっている事に気付く。

彼らは、自らの事業を、第三フェーズの旧企業が
見捨てた顧客相手に開始する。

そして、彼らは、フェーズ1の道を辿り始める。




残された旧企業を株式市場は、容赦なく罰する。
やがて、株価は低迷し、経営陣は更迭される。
もう、成長する要素は何もないからだ。

新経営陣は、ここで、大抵の場合、本業回帰と
ブランドに頼ろうとする。
そのことだけを株式市場は好感し、株価は一時的に上がる。

が、すでに、本業はコモディティ化と同一コスト構造の
企業による消耗戦であり、あとは敗戦処理への道筋を
書くだけに終る。

旧企業のゲームの終了宣言が破産という形でお上から告げられる。




posted by pal at 09:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
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