中嶋さんの記事に便乗して、記事書こうと思っていたら、忘れていて、今ごろ尻馬。もとい遅馬。
さてさて、なんだけど、有史以来、ギャンブラー達は、どうやったら、ギャンブルで勝てるか、というのを模索してきた。これは、確率という学問が、もともとは、どうやったらギャンブルで勝てるかに端を発した学問であることからも明らかなんだけど。
で、なんだけど、あるはずの無いカジノ必勝法があったという話で、有名な話の紹介が、今日のエントリの主題。
これについては、ちゃんとした本も出てる。ギャンブルの古典なんだけどね。
で、紹介するのが、エドワード・オークリー・ソープ著の「ビート ザ ディーラー」ね。
そして、彼が編み出したカジノ必勝法こそが、カウンティングと呼ばれるテクニックで、ブラックジャックでディーラーを打ち負かすための、当時は唯一の方法だった。
この本は、ブラックジャックというゲームが、唯一、統計的にカジノに対して有利にプレーできる可能性があることを説いた本でもある。要するに、期待値が1を上回ることがあるゲームなんである。(今はルールが変更されて無理っぽくなったみたいだけど)
もともと、ソープは、数学の博士号を取った後、MITで数学を教えていた人だったんだけど、ふとしたきっかけから、ブラックジャックを統計的に解剖する事に興味をもった。そして、彼が、研究の結果、生み出したのが、カウンティングと呼ばれる手法であり、この手法をとることにより、統計的に有意にカジノに勝てる、つまりは、ディーラーを打ち負かせることを彼は証明したわけである。
なんたって、期待値が1を上回っている以上、その気になれば、カジノを乗っ取ることだって出来るのだ。
彼が凄いのはここからで、彼はこの理論を携えて、実際にカジノに乗り込み、ディーラーをビートしたのである。MITの若い学生や同僚を引き連れては、週末にカジノに乗り込み、ブラックジャックで稼ぎまくったわけである。
そして、彼は、1962年、「ビート ザ ディーラー」を著書として発表。これがベストセラーになったわけだけど、数学者としての才能をここまで、効率的に換金してしまった人も珍しいといわざるを得ない。そして、彼の理論が発表されるやいなや、カジノ側は、ブラックジャックのルールを変更せざるを得ない方向に追い込まれたわけである。
そして、彼の活躍は、ココで終わらなかった。史上最大のギャンブル、つまりは金融の世界に次のターゲットを定めたわけである。
次の彼の著書は「Beat the Market」、つまり、彼がカジノを数学的に打ち負かしたように、今度はマーケットを数学的に打ち負かす方法を提案したわけである。
ソープは、会社まで立ち上げて、この賭けを始めた。数学の分野で金融工学で最も成功したのは、ブラックショールズ方程式が最も有名だけど、それに先立って、彼は数学を金融の世界に組み込んだわけである。
そして、彼は、この分野でも、同じように成功した。彼の個人資産の大部分は、これによって作られたものだからだ。
彼が最初に設立したヘッジファンドであるPrinceton/Newport Partners は、19年間で年率15.1%のリターンをあげた。これは、同期間における市場平均を上回る成績だった。
彼は、自身の個人投資の成績を28.5年間で、年率20%のリターンと報告している。これは、元資金を28.5年の間に180倍に増やしたことになる。
時に、学者が「貴方は、この国でもっとも頭がよい人なのに、大金持ちでないのは何故ですか?」と言われてからかわれることがある。特に経済学者については。
だが、ソープは学問の世界で終わらずに、自身の理論を実地で運用して、文字通り、大金持ちになった稀有な例だった。