このブログの人気エントリを読みたい方はこちら
もう一つのブログはこちらです。

2005年09月04日

ジャーナリズムとエンタメの根っこにあるもの

総選挙について、ブログでも盛り上がるにつれて
また、ジャーナリズムとエンタメについて考えてしまった。

この二つは、実は、非常に親和性が高い。

理由は、人間の感情行動における
ある同一の部分に根ざしている所があるからだ。

その部分は、「笑い」だ。


詳しく説明すると、「笑い」には大きく分けて
三種類の原則がある。

「優越」、「ズレ」、「開放」である。

以前、「言うべきか言わざるべきか」で述べたように
「優越」とは、勝利、あるいは、他人に対する優越感を
覚えた時に、人間の中に湧き上がる笑いである。

つまり、他人の中に欠点、あるいは弱点を見つけ出し
それを自己と比較することによって
自己のうちの比較者に対する卓越性を何らかの形で
認識することから生じる突然の大得意そのものである。



一方で「ズレ」の笑いとは、予想外、
想定外の結果が起こった事からおこる笑いである。
これは、エンタメの世界で幅広く確認される
行動である。


ズレの理論の背景にある基本的な考えは、
極めて単純である。
すなわち、我々は秩序だった世界に生きており、
そこで我々は事物や、その特性や出来事の間には
一定のパターンが存在すると予期するようになっている。

パスカルのいうように

「予期したことと実際に見ることの間に生じる不釣合い以上に
笑いを生み出すものは何もない」

というわけである。


「開放」の笑いの理論は、何らかの形で抑圧された状態に
ある人間がその状態から開放された時に
湧き上がる笑いを説明する。

家に一人でいるときの寂しさ。
そういう時に、友人が訪ねてきて
くれたとき、人は自然に笑う。
また、試験などが終った時、学生達が
歓声をあげて笑う。

これらは、何らかの形で抑圧された状況に
おかれた人間が、そこから開放された時に
笑う事の照明となる。


これら、笑いの三原則をエンタメでは使いまわす。
三種類しかないので、ちょっとずつスパイスを変えながら。

基本的に、この三つは、エンタメの領域にあるものだ。

ところが、僕は、新聞やTVニュースを見るとき、
そこに、しばしば、笑いの法則を見出す。


山岡さんの

情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)

にも、そういった法則があるのが見て取れてしまう。

山岡さんの取材原則は
政・官・財、マスコミ、闇社会と、あらゆる巨悪追及だ。

これが、何故、笑いと関係するのかというと
笑いの3原則のうち、「優越」の原則に
この取材原則が強く結びついているからだ。


こういった悪という名の道徳的な欠点は、
歴史を通じてかわることなき、
笑いの対象とされてきた。

うそつき、のんだくれ、怠け者、好色家、
ゴシップ好き、卑怯者、偽善者。
弱虫、学者馬鹿、ヘビースモーカー、
悪徳商人、腹黒政治家、悪徳役人etc・・・・


これらは、みな喜劇にお定まりの人物である。

プラトンは、道徳的欠点こそ唯一の笑いの対象で
あるとまで言い切っている。

それは誇張であるにしても我々の笑いの多くの部分は
人間の悪徳に向けられたものである。

他人の悪徳を見て笑うという人間の優越原則に
これは乗っ取っている。
エンターテイターが、2000年の間、幾度も
繰り返してきた事だ。


マスコミで、これらの原則が使われているのを見るとき
彼らとエンターテイメントの違いとは
何なのかと思うことがある。

おそらくだが、それを味付けする時の違いなのだろう。

エンタメは、他人の道徳的欠点をみせて、
読者を笑わせる調理法を追求している。

一方で、ジャーナリズムは
悪と言う名の道徳的欠点を発見し、それを正すことを目的と
一次ソースを調理している。


ところが最近は、その調理の過程において
記事にエンタメの調理法が使われている事があって
疑問を覚える時がある。

スポーツ新聞やワイドショーならともかく
まともな新聞までこの手法を使っているのをみると
どうなっているんだと思ってしまう。

事実という名の通行札を手に
対象の道徳的欠点を笑いの対象にする
意図を織り込んでニュースを流すのは、ルール違反な気がする。

エンタメの調理法に、事実というスパイスを加えると
アジテートが出来上がるからだ。

エンタメの手法、つまり優越の笑いの原則を
上手く使い、対象の道徳的欠点を
笑いの対象にして記事を書いたほうが
面白いのは当然だが、それをしていいのは
ワイドショーとスポーツ新聞、ブログまでだと思うわけだけど。

選挙になってから、この手の記事が
新聞などでもしばしば見受けられて
ほんと、どうなっているんだと思ってしまう。


結局、売ることが至上目的なのだから、
決して間違ってはいないけども。

ただ、結局、その程度の記事として、見限られても
仕方ないということもそういうニュースを流す人達は
覚悟するべきだとも思う。


posted by pal at 18:29 | Comment(0) | TrackBack(0) | メディア このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。