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2007年10月13日

スポーツと金

久しぶりの本家更新だが、亀田VS内藤の試合の後、そこいらでボクシングの話が上がっている。なんで、せっかくなんで、この話に便乗して、スポーツと金の話でもしておきたい。


プロスポーツと金の話は切っても切れない。プロスポーツはビジネスなのだから当然だ。しかし、前回の亀田対ランダエタの八百長試合の時から、そっち系の話が少ないように思ったので、ちょっと書いておこうと思う。






まず、プロボクシングというのがもつ、制度的な問題についてになる。


プロボクシングというのは、興行主と選手の所属ジムが一緒になっているケースがある。ここがプロボクシングの構造的な問題だ。


これは、プロボクシングだけでなく、芸能界などでも、見られる現象なのだが、どういう風にお金が流れるか、について知っておくと理解しやすい。


まず、なのだが、TVの登場で、プロスポーツというのは金になるようになった。これは、スポーツの興行では、チケット販売だけでなく、スポンサーなどから広告料などを期待できるようになったからだ。これが酷くなってしまったものに、アメリカのメジャーリーグがある。


ちと、wikipediaにあるので引用するが、


テレビ放映権

MLBのテレビ放映権は、全国放送に限りメジャーリーグベースボール機構が管轄し、ローカル放送は各チームがFOXスポーツネット(FSN)に代表されるローカルスポーツ専門チャンネル(Regional Sports Network)や地元放送局などと直接契約を結んでいる。チームの本拠地が大都市であれば収入が大きくなり、小都市だと収入が少なくなるため、レギュラーシーズン・ポストシーズン全試合の放映権を管轄しているNFLとは違い、チームによって放映権料収入は大きく異なる。


メジャーリーグベースボール






という形で、チームごとの放映権収入に大幅な違いが出てしまっているほどだ。それゆえ、貧乏チームは良い選手を抱えることができず、チームごとに戦力差が如実にでてしまうようになった。現在のヤンキースのように、人気球団は良い選手を抱え込み、貧乏チームは良い選手を取れず、負け続ける・・・・といった負の連鎖がおきるようにもなった。


無論、ドラフトやFAの際には、戦力均衡のためにいくつかの救済策があり、それを美味く利用しているのが、「マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)」で有名なビリー・ビーンGMとアスレチックスであったりする。しかし、やはり、金があるところが大抵は強く、プレーオフに進出できるチームは金持ち球団が圧倒的に多くなってしまった・・・という問題は起きている。



さて、ボクシングの問題に戻る。



ボクシングでの世界戦での大まかな収入源は、チケット販売とTV放映権料などになる。そして、後者が非常に重要な収入源なのだ。興行主、つまりジムにとっては。これを高くT売れるかどうかは、ジムの運営に直結もする。


視聴率が取れるかどうかは、亀田兄が気にしていたのは、そういう理由だろう。テレビ放映権料を高止まりさせれるかどうかは、そこにかかっているから。テレビ放映権料がどれだけ取れるかどうかで、興行主(所属ジム)が潤うかどうかが決まるんだから。


ボクシングの中での金の流れは、


スポンサー+観客+TV局→興行主(ボクシングジムであるケースがある)→選手



といった形で流れていると思われる。先にも述べたように、プロボクシングの世界では、興行主とボクシングジムが一体となって担っているケースがあり、今回の興行もその一つと思われる。(確認はしていない。そこまで調べてませんごめんなさい。しかしこれはあまり良いことではない。理由は後で。)



そして、ボクシングにはプロスポーツとしては、幾つか決定的な弱点がある。


まず、第一に試合数が少ないということだ。相撲なら年6場所+地方巡業、野球なら年120試合以上、サッカーは34試合前後もできる。


当たり前だけど、試合数が多いほうが、興行主は儲かる。そのため、試合数が多くて客が呼べるスポーツのほうが好ましいという話にはなる。


無論、そうではないが、儲かるスポーツもある。代表的なのはアメリカンフットボールだ。毎年死人がでるような激しいスポーツで、1チーム年16試合+ポストシーズンで行われている。アメリカでは一番人気のあるスポーツで、スーパーボウルの視聴率は桁が違う。


が、ボクシングではそれができない。さらに激しすぎるスポーツなのだ。ガチで殴りあうわけだから当然だけど、年にせいぜい6試合程度しかできない。


こうなってしまうと、数もこなせないので、よほど人気のある試合でない限りは、興行的に儲かるはずもない。つまり、TV放映権料が相当期待できるような世界戦でもない限りは、まず儲からないプロスポーツになってしまっているのだ。世界王者にでもならないと、金にならないプロスポーツと言われるのは、こういう理由からだろう。



このことが、さらに問題の根を深くしている。



儲からないプロスポーツの世界では、しばしば八百長が起こる。野球でもそうだった。TVが出現し、選手の年俸が跳ね上がる以前の野球の世界では、メジャーでも日本でも八百長の話が幾つか残っている。


選手だって人間だ。霞を食って生きているわけではない。現金収入が少なければ、そういった手段を使ってでも稼がないといけないって時もあったんだろう。


今は、ありえない。それはメジャーリーガーや日本のプロの年俸をみればわかる。


だが、興行主と選手の所属先、つまりはボクシングジムが一緒で、さほど儲かるプロスポーツでもないボクシングの世界では、そうもいかないのだ。


興行主とボクシングジム(一体の場合もある)は、是が非でも興行、つまり試合を成功させて、TVの放映権料やチケット販売をさばかねばならないというプレッシャーにさらされている。


TV局は資本の論理で動いているから、視聴率が最優先事項だ。だから、視聴率の取れない試合には用が無い。


そして、興行主は、しばしば自分で選手を育てている。


どうなるだろうか?この状況で?



亀田対ランダエタが、八百長だと騒がれたが、興行主からすれば、ドル箱である亀田が負けていいわけがない。彼には、勝ってもらって放映権料やチケット販売を成功させつづけねばならないのだ。そうしなきゃならないのだ。


だから、どうしたって汚いアレが吹き出る。ネット上でも試合前から、そういった言説があったし。


今回の試合でもそうだが、ネット上で、リングの大きさが狭かっただとか、マットが柔らかっただとか、内藤不利の状況が組まれていたという話で持ちきりだ。しかも、亀田弟のほうは反則三昧と来ている。


特にサミング(グローブでの目潰し)とバッティングによる瞼のカットは「らしい」と言えばらしいやり方だったようにも思う。


これは、アレな話だけど、

毒入りオレンジ事件


にあるように、亀田兄弟が所属する協栄ジムには、黒い噂があって、その一つがこれになる。これについては、以前、安部譲二さんが確か、サンデーの連載記事で書いていたが、故金平会長に言わせれば


「もらったオレンジを食べちゃうほうが馬鹿なのさ」


という話にもなる。黒い話にもなるが、試合数が少なく興行的に難しく、儲かりにくいプロボクシングの世界では、負けたら次の興行がどうしたって難しくなる。だから、興行主であるボクシングジムとかトレーナーは勝つためには手段を選ばないという方向に論理が向かいがちだ。そうではない人も沢山いる。というかほとんどだ。だが、人間、飯を食わなきゃ生きてはいけないのだ・・・


勝つ以外に生き残る道がない状況でジム、そして興行主は


「正々堂々やって負けるか、汚い手段を使ってでも勝つか」



という二択を迫られるケースがあるのだ。だから、時には汚い手段にでることもある。阿部譲二さんは、トレーナーをしていた時のこんなエピソードが忘れられない。


安部さんの選手の試合で、対戦相手が瞼を切った時だ。安部さんは、自分の選手に対して


「クリンチしたら、グローブで相手の傷を広げて、そこをたたけ」


と指示したそうだ。その結果、その試合では、安部譲二さんサイドの選手は、流血TKOで勝利したそうだ。そのことを安部さんは、やましいことだとは考えていないようだった。プロスポーツなんだし、「負けたら試合を組んでもらえなくなってしまう」のだから。


今回の試合で、バッティングで内藤が瞼を切った時に、亀田弟がそこを狙ってサミングしたり、グローブでグリグリしていたのをみて、「あ、流血させてTKO狙いだ」と思ったボクシングファンは多いんじゃないかと思う。僕はボクシングファンじゃないけど、それを心配した。


幸い、それには至らなかったけれど、あの試合では、亀田弟が勝つには、それしかなかったんじゃないかとも思う。だから、彼がその手段に出てくるのは、当たり前だったのかもしれない。


もともと、前の試合で、内藤は、瞼を切っていたみたいだし、そこを狙われるのはわかっていたのかもしれない。セコンドの流血対策は見事だった。あれだけサミングされたりして目を狙われたのに、流血TKOには至らなかった。



採点の点数見る限り、審判の買収は起こらなかったみたいだけど、なんというか、後味の悪い試合ではあった。興行上の汚い部分が思いっきり出たというか。(ずーっと亀田の試合はそうだったともいえるのかもしれないが)


次の試合がどうなるかはわからない。


ただ、まだ、亀田兄のほうは無敗だし、そして、先日の試合も高視聴率だった。


WBCフライ級タイトルマッチ 内藤、亀田大破り初防衛 次戦へ高いビジネス評価


内藤vs亀田の舞台裏



ネット上では、こんな意見もあったけど、亀田弟には、もう興行的な価値がなくなってしまった。自業自得といえばそれまでだけど、メッキがはがれて反則三昧で負けたとなれば、興行主とすれば、もう客が呼べるボクサーではなくなってしまっている。


だが、まだ兄のほうは、無傷で残っている。そして、まだ視聴率が取れる。今回の試合のようにだ。



人気の亀田兄弟のうちまず大毅が戦い破れたことで、次に興毅が名乗り出てリベンジマッチとすることで世間の注目を集めることができる。普通ボクシングは1回戦えば完結するが、人気ドラマの続編のようにさらに盛り上げることができる



僕は、多分、このシナリオのとおりに試合が、近い将来組まれるんじゃないかと思っている。絶対に視聴率が取れる試合だからだ。


興行主とTV局が絶対に放ってはおかないはずだ。内藤選手サイドとしても、確実に儲かる試合だ。やらないとはいってたけど、おそらくだが、ファイトマネーもけた違いになるわけだし、勝てば間違いなく人気も上がる。


もし、あるとしたらだが、次の試合も、多分、「汚い」ものになるんじゃないかとは思う。内藤選手は強いボクサーで、どうやら亀田選手とは力量の違いがはっきりしている。


だが亀田兄は、勝つ以外にない。


そうなった時に、取れる手段はどうしたって限られてくる。


「正々堂々やって負けるか、汚い手段を使ってでも勝つか」


という二択を迫れている状況だ。



審判の買収は、もう流石に出来ないだろうし、内藤選手は八百長試合には応じてくれない。なのに、戦うしかないとすれば、取れる手段は限られてしまう。



そして彼にはもう後がない。


posted by pal at 16:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
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