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2005年07月28日

電車男のネットワーク解析とオンライン時代の広告手法

やっと、ひできさんにご紹介いただいた「SYNC」を読み終えた。

ネットワーク解析を学ぶならば、
「実践ネットワーク解析」、「SYNC」、
「スモールワールドネットワーク」、「新ネットワーク思考」
は必読といえそうだ。素晴らしい体験だった。

この四つの著書を読んで、僕が新しく手に入れた概念は
「ハブ」によって支配されるネットワークである
「スケールフリーネットワーク」システム。

そして、世界は全てたった「六次のつながり」で繋がるという
「スモールワールドネットワーク」システム。

ハブのもつ情報の統率力と
ネットワークからの拘束力という危険性。

二つのティッピングポイント。
ネットワークの接続度があまりに低い場合には
それは、小島のように分散し、流行は起こりえない。

一方で、接続度が高い状態では
(ここを第一ティッピングポイントとダンカン・ワッツは呼ぶ)
バラバラになった小島がリンクで結ばれ、
いくつもの小島同士の「ショートカット」が生まれることによって
ネットワーク全体で大規模な流行が起こる可能性が生まれる。

だが、この接続度があまりに高くなりすぎると
今度は、流行の規模は大きくなるが、流行の発生率は
低くなっていく。ここがポイントになるだろう。
オンライン時代においては。

そして、ネットワークの接続が臨界を越えると
そこで、大流行、カスケードはぴたりとやむ。

この臨界点を「第二のティッピングポイント」と
ダンカン・ワッツとスティーブン・ストロガッツは呼んだ。

この第二のティッピングポイントを生み出しているのが
「希薄化効果」と呼ばれるものであり、
それは、一つのノードがあまりに多くのノードが集中した場合に
起こる現象で、ハブと呼ばれるノードが辿る運命ともいえる。

これは、流行の原則のおいて、
ノードの閾値は、
「隣接ノードが活性化した割合に応じて設定される」
事から起こる。

つまり、隣接ノードが100個あるハブの閾値が
0.3であった場合には、周辺ノードの3割が活性化せねばならないが
そのためには30個のノードを活性化させねばならなくなる。

一方で、10個の隣接ノードをもつ閾値が0.3であるハブであれば、
10個のうち、3個を活性化させれば、それを活性化させる事が可能になる。

ヒトというノードの閾値が周囲の人間の活性化の割合によって
設定されているとするならば
リンクを持てばもつほど、一人のヒトが周囲にもつ影響力は減ずる。

この現象は、おそらく、今、ブログだけでなく、全ての情報メディアにおいて
起こっている現象といえる。
マスの力は、減ずるしかない。
ネットのような強力なリンク生成媒体が現れた以上は。
構造は常に機能に影響を及ぼす。
マスメディアのもつ力は、今後、縮小していくだろう。

この世界は、「スモールワールド」ネットワークなので
一人の人間と知合いになるだけで
その人間が持っている一次リンク先の人間に簡単に
たどり着けるようになる。

ゆえに、現在、ネットによってもたらされた
このリンクの増大は、
ティッピングポイントを第二のポイントへ移しつつある。

つまり、将来のネット社会、いわゆるユビキタス化社会では
より流行は生まれにくくなるが、もし、起きた場合には
かつての流行とは比べ物にならないほどの規模での
流行が生まれるという事になる。
なぜなら、リンクが密接であるゆえに、一度火がついたら
それは、かつてないほどの速さで全体に燃え広がるからだ。

おそらく、将来的な広告手法は、こちら側に移っていくことに
なるのではなかろうか。

現在は、まだ、リンク数が「さほど」密接ではない為に
第一ティッピングポイントの付近にあるのではないかと思われる。
この場合、広告を打つ場合に有効なのは、ネットワークの
中心部にあるノード、つまりハブだ。

だが、将来のネット時代の広告手法においては、
ハブ、つまりポータル中心の広告というのは、
強くなくなる。リンクの増大によって、その広告能力、
情報の伝播能力は逆に「弱まる」からだ。

そのために、流行を起こしうるのは「ハブ」ではなく、
その先にあるノードになる。

ハブの先に点在する、小さな集団からなる閉鎖的で
リンクが少なく、閾値の低いコミュニティを
「燃やす」ことが求められる。
着火できるポイントはそこしかなくなるからだ。

小さなコミュニティから、
小さなコミュニティに向かって火の手をあげ、
やがてはネットワーク全体を燃やす大火事になるように。

ある意味では、電車男の流行とは、
第二ティッピングポイントで
着火してはじまったといえるかもしれない。

最初は、2ちゃんねるの毒男板と呼ばれる板から
火の手があがった。小さなコミュニティ内で燃え上がった火は
「まとめサイト」を作り上げ、そのサイトから次々と
2ちゃんねる内に直リンクが張られていった。

そして、小さな火の手は、2ちゃんねる内において
細分化されていたそれぞれのスレッドで燃え上がり、
やがては2ちゃんねる全体を燃やす火事となった。

火事は、やがて、出版社、映画会社、TVにまで
燃え広がった。かつてない規模でおこったカスケードは
映画においては200万人の入場者を突破させ
200万部のミリオンセラーを生み出し、
TVでは視聴率20%という大ヒット商品となったと。

これは、ダンカン・ワッツがまさに予言した通りの
カスケードそのものといえるかもしれない。

第二のティッピングポイント付近で着火した
炎は、かつてない規模のカスケードをもたらすという形での。

ネット時代においては、かつてのように
大規模なカスケード、流行は起こらないだろう。
大ヒット商品は極めて生まれにくいのだ。

だが、もし、第二のティッピングポイントを精査し、
それを集中的に狙って広告した場合には
それは、かつてないほどのカスケード現象を巻き起こす
可能性が生まれる。

おそらくだが、これからは、大規模な広告を打ちたいならば、
まず、「一つ下」のノードこそ、重要になるのではなかろうか。

インターネットのネットワークは、

ポータルサイト

ハブ(アルファブロガー、TVの公式サイト、ランキングサイトなど)

ハブと少ない本数で結ばれた小さな脆い、無数の閉鎖的コミュニティ

という形での構造になっていると思われるが、
リンクがどんどん密接になっていく以上は、
ポータルサイトでの広告のように、マスにリーチしたいのであれば
まず、最初には、ポータルに広告を打つのでなくて、
一段階下のハブ的ノードから燃やし始めることが重要になり、
ニッチな市場にリーチしたいのであれば、
無数の閉鎖的コミュニティから燃やし始めることが
近道なのかもしれない。

色々と試してみたいが、手段がないのが辛い。
いずれにしろ、ネット広告においては、おそらく、
マス相手にしろ、ニッチ相手にしろ、最初に
巨大なハブに打っても効果が薄いので、
一段階小さなコミュニティのハブに広告うって、
きっちり燃やしてから
一つの上のハブに移るという
段階的な宣伝手法のほうが効果が高い
のかもしれない。

その意味じゃ、トヨタとか日産のブログ宣伝においては、
アルファブロガーや関連ブログを見つけ出して、
ポータルに打つ前に、
そちらにきっちりと打つべきだったのかもしれない。

そして、十分な数の小さなコミュニティに情報が行き渡ってから
ポータルでどどんと打つほうが効果的であるのかもしれない。

なんか、シュミレーションで試してみたが、
僕には、そっちの技術が全く無い!
なんということだ。


posted by pal at 09:57 | Comment(3) | TrackBack(2) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
この記事へのコメント
初めてコメントさせていただきます。
本を探しているのですが「実践ネットワーク解析」が見つけられません。Amazonアソシエイトでご紹介いただければと思います。

それと、「スモールワールドネットワーク」はAmazonのレビューだと賛否両論のようですが、やっぱり必読でしょうか?
Posted by 小林 at 2005年08月25日 20:39
>>小林さん

申し訳ありません、
タイトル間違ってました。
安田雪著 「実践ネットワーク分析」です。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4788507811/249-5721203-7955561

アマゾンだとこちらから購入できます。

ただ、レビューにある通り、
恐ろしく数値や計算式がたくさんあって、
数字に強い方でないと
理解するのが難しい部分が多いのではないかと
思います。ちなみに僕は文系の出なので
ひーこら言いながら読みました。
それでも計算式の意味が良くわからなくて
今でも理解できていない場所が結構あります。

ダンカン・ワッツの
「スモールワールドネットワーク」は
僕の感想としては、
情報のカスケードの項なんかは
凄く興味をそそられる内容でした。

どちらも高い本ですので
図書館などで借りてきて、一読してから
ご自分で買うかどうかお決めになるのがいいかと
思います。
Posted by pal@管理人 at 2005年08月25日 21:04
ありがとうございます。レビューを見ると「ワードマップ ネットワーク分析」の方を先に読んだ方がいいのかも? という感じですね。「スモールワールドネットワーク」も、候補に入れておきます。

行動範囲にいい図書館がないので、とりあえず買っちゃえ、という感じになってしまいがちですが^^; とりあえず「SYNC」を注文しました。
Posted by 小林 at 2005年08月26日 15:43
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