漫画とネットワーク解析についての考察を続けるうちに
ほぼ全ての漫画において、主人公とはハブである事が
わかった。
漫画のみならず、ほとんどの創作モノで
主人公は、作中の他のどのような人物(ノード)よりも
大量のリンク(他の人物との関わり)をもつ人間であるという事である。
つまり、主人公とはネットワーク解析的にハブなのだ。
ナウシカを例にとって、ひできさんが
ネットワーク解析を試みておられるので
興味があるひとはそちらをどうぞ。
ナウシカをネットワーク分析する
最近、何故、主人公というノードがリンクを沢山もつことが
ほぼ全てのストーリーにおいて、共通しているのか、
という事をずっと考えていた。
まだ、思考途中なので、はっきりした答えは出せていないが
おそらく、これは、ネットワーク外部性と共通意識に起因している。
つまり、大多数の人間に共通する特徴であるが、
「他の多くの人間が知っている知識は
例え、それが、自分が興味のない知識であっても
人は知りたがる」
「沢山のリンクをもつノードに対して個々のノードは優先的にリンクする」
という傾向ゆえ、である。
つまり、主人公が、ハブである理由とは、
作中の人物の多くが、主人公を知っている状態にすることにより、
作中全ての人間の共通意識としての主人公のビジョンを作りだし、
そうすることによって、
「他の多くの人間が知っている事を、人間は知りたがる」
「沢山のリンクをもつノードに優先的にリンクさせる」
という状況を作り出し、主人公に対して、
読者側の興味をそそる部分を作り出しているのである。
読者に主人公に興味をもってもらうのは
ストーリーを作る上で重要な要素なのだけれど
それが何故か、どうやるべきなのかまでは、深く考えた事がなかった。
だけど、ネットワーク解析を学んでから
主人公のあるべき姿というか、キャラの立て方というのが
だいぶわかってきた気がする。
協調性問題や、ネットワーク外部性を利用した方法といっていいのかもしれない。
ハブとしての主人公というのは。
よく、最初の一巻がつまらないと言われる名作がある。
「失われた時を求めて」、「指輪物語」などなどである。
これらは、物語が進めば進むほど、面白くなるが、
ひょっとしたら、物語が進むにつれて始まる主人公のリンクの増大と
相関性がある程度あるかもしれない。
最初の、リンクが少ない状況での主人公というのには
普通の読者は興味をもちにくい。
だが、物語が進み、主人公の周りに複雑なリンクが張り巡らされ
主人公が否応なしにネットワークに拘束され、そして
ハブに成長し、ネットワークからの拘束がもたらす苦悩と
ハブとして、力をつけていく
(ここではリンクを増大させていく、あるいは敵対者のリンクを減らす事を指す)
事で、主人公は、現実の人間関係でそうであるように、否応なしに
注目を集めていく。目が離せなくなり、主人公のことを知りたくなる。
こういう手法は、様々な物語で確認できるし、
力のある作家というのは、意識的にか、無意識的にか
こういったネットワーク外部性の問題を利用していると
いっていいのかもしれない。