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2005年07月02日

多分、日本でも数少ない分業制度が未発達な漫画製作現場

しばしば、この仕事をしていて思う。

日本の漫画は世界に冠たる分野で、その裾野のでかさと言ったら
もう個人では把握できないほどだけど
その製作現場に関しては、およそ、17世紀くらいのレベルだ。

つまり、分業制度といったものが、あまり発達していない。

スミスの「国富論」での有名な例をあげるけど
例えば、針を作る過程は18の工程からなり
人は、それぞれの仕事を専門にしてやっている。

こうやって、一人一人の仕事を専門化する事により
一人の人間が針を作った場合よりも
遥かに多くの針を作り出すことができる。

漫画というのは、特に週間連載の分野は
とにかく量との戦いになるので
分業制度が高度に発達していいはずなんだけれど
アメコミのように、シナリオライター、ペンシル、インク、
カラーなどを分業するといった事には
あまり熱心でなかったりする漫画家が多い。

無論、こいつには原因があるんだけど
最大の原因は、一人でも出来ちゃう点だ。

製作コストが安いため、
一人でほとんどのことをやってしまえるんである。

その為、どうしても漫画家って奴は
一人で全ての作業をやりたがる部分が大きく、
また、読者もできるだけ、作家が直に書いた絵を望む。

そのせいというべきか。

漫画家にかかる負担がとんでもなく大きく
北条司さんがキャッツアイを連載しはじめた当初など
一週間で3時間しか寝れなかったなんて状況が現出する。

ぶっ倒れた作家なんて、知っている漫画家の数だけいるし
週間連載は、ごく少数のパワフルな漫画家を除き、
労働基準法なんて通用しない修羅の世界である。

とくに厄介なのが、ストーリーが浮かばない時で
作家がそういう状態になると、もう編集者からアシスタントを
巻き込んでの修羅の様相を呈する。

少数の漫画家だけが、分業を上手くやっている。
量をこなす為にはこいつが一番いい。
だが、どうにもこうにも、そこを上手くやれてない人がおおい。
経済的な問題や斡旋上の問題から腕のいいアシスタントを
雇えなかったりする場合とか。

それと、同業者から、分業スタイルが受けが悪い。
とにかく、全部一人でやるのが普通と思われている部分もある。

今は、コンピューターがあるから、それでやっている人は
大分、作業を簡略化できるようになったけど
作家にかかる負担は相変わらず多すぎるほど。

しばしば、もっと漫画そのものの分業化を進めたほうが効率よく
良い作品を読者に提供できるんじゃないかと思うが
どうにも、漫画家は使い捨ての部分が多く、
出版社の人達は、そのあたりに意欲的に取り組まない。

週間連載をしている人達とかを見ていると
ストーリーとネーム、下書きなどの重作業全てを
一人でやらなければいけないため、一人にかかる負担がでかすぎると
思っている。コーヒー飲み杉で顔色悪い人多いし。

みんな、好きでやっているから
こんな仕事しているわけで、好きじゃなきゃ
続かないよなぁ、としみじみ。

アニメとかは分業が進んでいるけど
そっち方面で見習うべきだと思うんだよね。
アニメの分野は、早くから分業、デジタル化が進んだけど
漫画は、分業すら上手くいってない。

やっぱ、製作コストが安すぎるってのもアレなのかなぁ。
最近は、パソコンのせいで、さらに安くなってきてるし。
どうなるんだろう、これから。

いい方向に進む事を祈りつつ。


posted by pal at 14:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画 このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
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