digg経由。
「VGChartzは、PS3とX360がPS2と同じペースで売れていることを示している」
って感じで、diggで盛り上がってましたんで。
なわけで、今日は、それに尻馬してPS3が「どのくらいのペースで売れているのか?」という問題について、ちと話をしてみようかと思います。
えーと、まず、VG Chartzからキャプってきましたが、現在のところ、PS3のセールスは、悪くありません。PS2と、そんなに変わらないんですね。
実際のところ、ほぼ同ペースなんです。
じゃあ、「イケテル?」と思われるかもしれませんが、まぁ、ちょっと待ってくださいや。
まず、こちらのチャートを。VG Chartzからキャプった奴です。
これは、セガサターン、任天堂64、PS1のチャートです。
簡単に、このチャートに説明を加えますが、まず、緑の線のセガサターン。サターンは、1994年11月22日発売されたハードです。初期価格は44,800円。
青の線のPSは、1994年12月3日に発売。初期の価格は39,800円でした。
赤の線が、1996年6月23日に発売された任天堂64です。初期価格は25,000円。
サターンは、発売106週目までは、青の線のPSと良い勝負をしていたのがわかると思います。で、発売106週目というと、1996年の11〜12月あたりです。年末商戦で、台数が伸びるのは当然なんですが、年末商戦が終わった後、サターンは台数の伸びが鈍ったんです。
理由は、大きくわけて二つ。キラータイトルであるFFのPS移籍と、PSの価格ダウンですね。
スクエアは、1996年2月9日にFF7を発表し、その後、台数が飛躍的に伸びたのはよく知られた話です。ただ、チャート的には、発売後ですね、飛躍的に伸びたのは。その後もキラーソフトがPSに流れ、バイオなんかもヒットし、さらに立て続けにSCEはPSの価格を下げていきます。
1996年2月9日にFF7を発表
↓
1996年3月28日発売開始のSCPH-3500型で24,800円に値下げ
↓
1996年6月22日発売開始のSCPH-5000型で19,800円に値下げ。
↓
1997年1月31日 FF7発売
↓
1997年11月13日発売開始のSCPH-7000型で18,000円に値下げ。
↓
SCPH-7500型で15,000円に値下げ
という形です。
セガも負けじと、価格を下げましたし、任天堂も最終的には15000円まで価格を下げたのですが、結局、PSの勢いをとめることは出来ませんでした。
さて、ゲームハードビジネスは、「ネットワーク外部性」が働くビジネスだと言われます。
「ネットワーク外部性」が働く場所とは、
ある財から得られる効用が、その財を消費する人数の大きさに依存している
というような、サービスや製品のことを主に指します。
例えば、有名なのがファックス、それから電話、そしてインターネットなどなど。
ファックスは、他の人が誰も持っていなかったら、それを買っても何の意味もないわけですが、周りの人が沢山持ち始めたら、みんな買い始めるわけです。
携帯電話や、普通の電話も同じ事が言えます。周りの人達が、「どれくらい所有しているか」で、その財を買うかどうかが、しばしば決まるわけです。
で、ゲームハードになるんですが、これは、ちょっと違うんですが、
ゲームハードから得られる効用は、そのゲームハードでプレイ可能なソフトの量・質に依存している
となります。つまり、よく言われるように「ソフトがハードを売る」わけです。逆はありません。今までの所は。
しかし、ネットワーク外部性が働く市場では、面白い特徴があります。250$の壁とでもいいますか。
これは、ファクシミリ市場で起こった例なんですが、250$以下になると、一斉に人が買い始めたんですね。無論、価格だけが問題なのではないのですが、しかし、価格の問題は避けては通れないんです。
ちと、ハル・R・ヴァリン著の「入門ミクロ経済学」から図を引用させて頂きますが
「34.3 ネットワーク外部性」にある図です。
とりあえず、ファクシミリの図を見てください。平均価格が、1986年あたりに、250$くらいに、一気に下がったのが見て取れると思われます。
そして、同時期に、販売数が一気に増えたんですね。
ファクシミリには、ネットワーク外部性の力が働きますので、
ある財から得られる効用が、その財を消費する人数の大きさに依存している
わけで、ネットワークの多きさがモノを言うのは間違いないのですが、一方で、ファクシミリの価格が、ある一定のラインまで下がると、一気に普及したというのもたしかなわけです。
つまり、
「価格が下がれば下がるほど、ハードを買うハードルが下がる」
んです。結果として、何がおこるかというと、価格が下がれば下がるほど、ネットワークの大きさを拡大しやすいということになります。ネットワークの大きさが大きくなればなるほど、その価値が高くなりますので、結果として、沢山売れるようにもなるわけです。
結果として、ポジティブスパイラルがまわって、一気に製品が普及するんですね。
さて、もう一つ、図を出します。これは、ネットワーク外部性が働く市場をグラフ化したものです。
数式のほうに興味ある方は、ハル・R・ヴァリン著の「入門ミクロ経済学」を読んでいただくとして。
図で放物線を描いているのは、需要曲線で、横の平行な線が供給曲線です。
このグラフが示すものを、ごく簡単に言ってしまうとですね。(僕の理解が大いに間違っている部分は多いにありますが)
まず、二つの安定的な均衡点が存在するという事です。
上記の図からわかるように、単位費用が高い場合、安定的な均衡は一つしかありません。
ですが、単位費用が下がってくると、二つの安定的な均衡が生まれます。
これは、低位均衡と高位均衡と呼ばれます。
そして、一旦、何らかの刺激で、ネットワークに接続している人の数に変動が加わると、システムは不安定な均衡を超えて、低位均衡から高位均衡に押し上げられます。
費用が減少し、臨界点に到達した場合、ネットワークは左側の低位均衡から右側の高位均衡に押し上げられる可能性が生まれるわけです。
で、ゲームの話になりますが、セガサターン、任天堂64、PS1は、熾烈な価格競争を繰り広げたのですが、最終的に、高位均衡に押し上げられたのは、PS1でした。
ネットワーク外部性の働く場所では、どうやって低位均衡から高位均衡まで、製品・サービスをもっていくかが肝になります。
一旦、低位均衡に押し込まれてしまったら、高位均衡にのし上った製品と価格が同じでも、売れなくなります。特に、ゲームハードで、これは顕著です。いったん、負けハードと見られてしまうと、恐ろしい勢いで売れなくなるんです。恐ろしいことに、価格を下げても売れなくなります。これが恐ろしいところなんです。一旦、負けハードと消費者に認識されると、価格downが、まったく消費を刺激しなくなる部分があるんです。
ユーザーが、そのネットワークに接続している人が少ないと思っている場合、ユーザーは、その財に対して、支払い意識を持たない・・・というネットワーク外部性が働く場所での特徴からではないかと思います。ここが恐ろしい所です。
これをゲームに言い換えますと、「あるハードで出るソフトが少なく、質もよくない場合、ユーザーはそのハードを買おうとは思わない」という感じになります。
この場合、いくらハードの値段を下げても、ユーザーは、そのハードを買ってくれません。低位均衡に押し込まれ、そこでネガティブスパイラルがまわり始めると、そこから這い上がるのは非常に難しいんです。
ハードがあまり売れてないからサードはソフトを作らない
↓
ソフトがないからユーザーはハード買わない
↓
ハード売れないから、サードはやっぱりソフトを作らない・・・
という形で、ぐるぐる回って、売上が伸びなくなるんですな。
ファクシミリなどの例を見る限り、最初の価格設定は、やはり250$以下に抑えるのがよさそうと思います。日本では25000円以下ですね。
あとは、ソフトが沢山出せる体制を整えると。もっとも、どこの企業でもやってることですけど。
上記のチャートでは、任天堂64が最初、サターンやPSに比べて極めてよいスタートを切ったにも関わらず、その後、停滞してしまったのが見て取れると思います。一度、「時のオカリナ」効果で、一気に売れた時期もあるんですが、勢いは続きませんでした。
任天堂64は、ソフトの質は最高に良かったんですが、絶対数が少なすぎました。発売後、しばらくソフトが全然でない時期とかありましたし。
「ユーザーがネットワークに接続している人が少ないと思っている場合、ユーザーは、その財に対して、支払い意識を持たない。」
というネットワーク外部性が働く市場での特徴にやられてしまった面は、間違いなくあると思っています。
さて、次は、PS2,ゲームキューブ、それからXboxのチャートです。
こちらの図からわかるのは、前世代のゲーム機戦争では発売30週目あたりが天下の分け目だったということですね。
最初の30週くらいまでは、Xboxもゲームキューブも、PS2についていけてたのですが、30週目あたりから、突き放されていきました。
PS2は、ゲーム開発が難しくて、結構サードが苦労してたわけですが、それでも日米あわせて1500 タイトル前後でたわけです。
一方で、GCが282タイトル、Xboxが219タイトルですから、差は圧倒的でした。しかも、PSとの互換性をもっていましたので、プレイできるソフト数は圧倒的です。
基本、ハードは最初はよく売れますが、ソフトの出る本数が少ないと、
「ユーザーがハードに接続可能なソフトが少ないと思っている場合、ユーザーは、そのハードに対して、支払い意識を持たない。」
というネットワーク外部性が働く市場でのユーザー意識から、ハードの売上が失速し、
「ハード売れてないからサードはソフトを作らない」
というサードの思惑が働いて、ネガティブスパイラルがまわっちゃたんだと思います。大体、発売から半年〜一年くらいで、それがGC、Xboxを襲ったという事でしょうか。
こちらはWiiを加えた、現世代のチャートです。
Wiiが、恐ろしい勢いのロケットスタートを切ったわけですが、しばしば言われるように、ちと「玉不足」気味なところがあります。ゼルダ、Wiiスポーツの後が、微妙に続いてないといいますか。
これから、鬼門の30週目過ぎにさしかかろうという所なので、これからが正念場だと思われます。前世代では、GCが失速し、PS2が伸びていったのは、30週目をすぎたあたりでしたから。
もっとも、今年の夏にでるソフトの数は、Xbox360とほぼ同じですので、サードとの協調体制を、任天堂は今回相当気をつかっているという印象です。無論、ゲームキューブの開発環境を流用できて開発しやすいハードというものあるんでしょうが。
PS3はここからが正念場にもなります。今年の夏にでるソフトの本数は、Xbox360やWiiより少なく、価格がネックになっているのは明らかです。これで、年末商戦もソフトが全然でないようだと、失速してしまう可能性が高いです。開発が難しいハードなので、そこもネックになってくるでしょう。PS3は、PS2との互換性があるので、それで、どこまで凌げるか、だとも思います。
しかし、一旦ここで、失速すると、前世代のGCやXboxのようになってしまう可能性があります。30週目あたりから失速。ここから半年は正念場です。失速するようなら、早期のテコ入れは必要でしょう。次世代ディスクの規格争いもありますし。
Xbox360は、日本では盛大にすっこけていますが、全世界での総売上数は、チャート的にはPS2と変わっていません。また、現在のところ、失速の兆しは見えていませんし、ソフトも海外パブリッシャーが良いソフトを作っていますので、とりあえず、一安心といったところではないでしょうか。
もうすぐ、北米でのキラーソフトの一角である「Halo3」が出ますし、ハードのシュリンクも年内に行われるはずです。おそらくは、
「Halo3」発売
↓
年末商戦あたりにシュリンク済み新型Xbox360投入、価格down
という形で、一気に北米でのシェアを固めにくるんではないでしょうか。そうなれば、北米での勢いは途切れ無そうに無い感じでもあります。
こちらは、Wii、Xbox360、PS3のチャートです。Wiiが調子よすぎるというのが印象です。任天堂64みたいに、最初だけ良くて失速しないしないかどうか、ではないかと思われます。
こちらは、PSP、DS、PS2のチャートです。PSPも、PS2並に売れてはいるんです。売れては。
DSが予想以上の売れ行きを見せたというだけで。
とりあえず、DSとWiiが予想以上の売れ行きを見せている、というのが、結論ではあります。過去の他社製ハードや、ファミコン、スーファミなんかと比較しても、グラフの傾きが非常に急です。
DSは完全に安定期っぽいですが、Wiiは、まだ安定したとは言いがたいので、ここからだとは思います。
もう3〜4ヶ月程度経って、それでも勢いが衰えなかったら、Wiiは、ほぼ高位均衡まで押し上げられた、と考えてもよいかとは思うわけですが。
ここ10年程度のゲームハードを見ていると、大体発売30週〜40週程度の期間で、勝ち組みと負け組みがはっきりしてしまう傾向があるので。
PS3の逆転プランとしては、とにかく、今は我慢して、MGS3とFF13が出るのと同時に、一気に価格を下げて巻き返す・・・くらいでしょうか。というか、それしかないんですが。
PS1の時も、FF7移籍と価格downで一気に高位均衡に持っていったので、「もう一度あの奇跡を・・・」という感じです。それまでは、とにかく地道にソフトの本数増やしていくしかありません。
しかし、任天堂64をキング オブ ゲームスなんて言われる「時のオカリナ」が救えなかったように、MGSやFFですらも、一旦、ネガティブスパイラルに入ってしまったハードは救えないかもしれませんが。
結論としては、
「もう3〜4ヶ月様子をみて、売上が落ちないようならPS3も捨てたもんじゃないよ、もし落ちたらヤバイよ」
という感じです。チャート的な話ですが。もし、売上が落ち込んだら、そのまま低位均衡まっしぐらになるんじゃないか、と。
落ちないようなら、それなりの数、売っていける可能性は、まだ十分あります。今のペースを維持して、MGSやFFの発売と値下げで一気に巻き返しを計ってください。
Wiiに追いつけるかどうか、は知りません。Wiiは、恐ろしいロケットスタートを切っているので。
あきらめたらそこで試合終了です。
それでは、本日はこのあたりで。ではでは。
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Wiiはバーチャルコンソールで人気ソフトを無尽蔵に増やすことも可能だし死角なしですな。
均衡点は0か高位均衡点なのに低位均衡点という言葉が使ってある時点で読むのをやめた。
低位の交点は均衡しないわけであのグラフは無理やりに(ゲイツマネーとかで)低位交点を越えれば自然と高位均衡点に達するという図なんだけど?
メタルギア、マリオ、そしてスマブラが秋には続くはず。
Wiiに負ける要素が無いように見える。
バーチャルコンソールで名作出たらそれも援護するし。
PS3・・もはやFF13にそれだけの魅力は無いぞ。
そのグラフだとスタートが合わせてあるから途中までついていってるように見えるけど
実際には全然勝負になってなかったと思いますが。
それでも頼れるものがこれしかないのがPS3である
ということが現実問題なわけで。
ちなみに細かいことですが、MGS3ではなくてMGS4では。
MGS4は360でも発売する可能性が高いと散々いわれていますので
「360でも出るかもしれないならわざわざPS3買う必要はない」
というイメージが浸透しているため
これが覆らない限りキラーにはなりえません。
コストの比率がある手前単純に売れた数字だけで
本当の意味で売れたということにはなりませんし。
例えるなら低い方の交点は山の頂上、高い方の交点は谷の底です。
ボールを置いたら余程上手く置かない限り転がって行っちゃいますね。
こういうボールが他から転がってくるのがアトラクタ、つまり均衡点です。
市場の均衡点とはこのようなグラフからでは見ることはできません。
「価値-価格」曲線と「期待価値-支払額」曲線(普通直線を使いますが)の交点の内、
アトラクタとなるものが均衡点と呼ばれます。
ネットワーク外部性が持つ意味とは、「売り上げ量によって(ネットワーク外部性から来る)付加価値が付くので(逆もまた然り)、アトラクタが作用する範囲が広がるよね」ということです。
「価値-価格-売り上げ量(or時系列)」の3次元グラフのアトラクタ範囲を見れば、このことが理解しやすいと思います。
そもそもゲームハードが持っているのは基本的に間接的ネットワーク外部性のみで、
ファクシミリのような直接的ネットワーク外部性ではありません。
定量的な比較はもちろん、定性的な比較も難しいと思います。
「ゲームハード売り上げ曲線のスタートを揃えた場合、
ある期間で明暗が分かれる」というデータを出した視点は素晴らしいと思います。
現状の経済学で定量的な臨界点を示せる訳でなし、
低位均衡、高位均衡は忘れてチャートの比較に徹した方が面白いことが分かりそうな気がします。
もう何週間起動してないだろ・・・。
早くスマブラが出て欲しい。。
PS3はトロステ見たさに毎日電源入ってるなァ。だけど、パッケージソフトを買ってるかって言うと、微妙・・・。 体験版だけで満足しちゃったりするので・・・。
Xb360もPS3と同じく今のところ体験版専用機みたいになってるなぁ。。
しかし、従来のPS2と比べて、
より面白いかというとそうではなく、違うベクトルの面白さだ。
例えば、PS2対GCだったら、巨人対阪神のような
比較が成り立つと思うが、
PS3対Wiiだと、野球対サッカーのような、
比較が出来ないような別ものだと感じる。
しかし、普通の人の認識はどちらも「ゲーム機」である。
一方を選ぶなら、従来の延長上にあるPS3よりは、
新しく刺激的であるwiiを選ぶのは自然だろう。
この先、wiiでも従来の延長上であるゲームのラインナップが
揃うなら、wiiの地位は安泰であり、そうでなければ、
PS3やXBOXが伸びてくる可能性もあるのではないか。
なんか、この時期から一気にゲームの話するの
辞めたサイト、PS3擁護、XBOX360叩きサイトが
更新しなくなってるよね。
SCEの逆ザヤ解消が出来ない体質に加えソニーの泥舟化が深刻になっているのにもかかわらず
この大切なクリスマス商戦直前にスクウェア・エニックスがドラゴンクエスト10をWiiで開発中と言う事を公式に明言しましたから。
SCEとの決別宣言でもありPS3の敗北において消費者心理的ダメ押しである事は明らかです。
ゲーム機としては完全に負けて砕け散りましたがホームサーバ&BDプレイヤーとしては優秀と思われますので
その用途で購入する分にはPS3はとてもお買い得であると言えます。