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2005年05月30日

口コミ検証:情報の外部性という視点から

「デジモノに埋もれる日々」さんの記事を読んで:口コミに関する考察

広告とクチコミが織り成す「ポジティブ/ネガティブ」の綱引き合戦 

本日のエントリは、この二つのブログで話題に関連したもの
なので、上記の二つのブログを読んでからお読みいただけると助かります。

口コミとマスコミによる宣伝の二つ。
この二つの効用を考える時には、一つの視点があります。
僕もネットワーク解析を学びはじめてから知ったことなのですが、
その視点が「情報の外部性」になります。

心理学者、ソロモン・アッシュがおこなった興味深い実験があります。

8人の人間を集め、そこで、4本の線の書いてある図を
見せました。

soromon.gif

個人の意思決定に関する集団からの圧力の影響を調べた実験です。

「この図において、右側に書いてある線と同じ長さの線は、
ABCのどれか?」

という質問が8人に対してなされます。
誰でもわかりますが、答えはAです。

が、この実験のキモは
8人中、7人はサクラで、7人がBを選ぶように
指示されていたことです。

そうなった場合、何がおこったか?

なんと3分の1の被験者が、その実験において
周りの圧力に屈して、Bを選んだという事です。

圧力をうけても選択を誤らなかった人達ですら、
額に汗をかいたり、動揺したりするなどといった
苦悩の兆候があったとアッシュは報告しています。

つまり、周りの7人が同じ意見であるなら、
それが間違っている事などありえないと
判断した人が3分の1もいたということ、
周りの圧力に対して、極めて、人間というのは
弱いという事が明らかになります。

この実験は、人間の合理性に対する、ある一定の弱点を
露わにします。

つまり、人間の合理的判断というものは
「外部」からの情報が、ある一定の量を超えると
閾値を越えて、合理的な判断をしなくなる、というモノです。

このような、意思決定における「情報の外部性」は
主に三つが確認されています。


一つ目がアッシュの実験で明らかになった

「強制的情報外部性」

つまり、まわりからの圧力によって合理的判断が覆される場合。

2つめが

「不確実性情報外部性」

人間は合理的に振舞おうとするが人間の能力には
限界があるため、知っている事には限界があります。
故に、他人は自分の知らない事を知っているという前提の
下で行動するため、例え、答えがわかりきっていても
他人の行動に影響されるというものです。

現実世界においては、知っている情報よりも
知らない情報のほうが多い為、つねに我々は
周囲の言葉に耳を傾けます。
そして、その習性が、この「不確実性情報外部性」を
生み出します。

3、「同調の外部性」

これは、意思決定を下すのが個人でなく、集団である
事から起こります。

集団に対して、ある一定の利益が
確保されるならば、その集団に対して、人は参加するという事です。

例えば、まわりの人間全てが、酒を飲んでいるとします。
酒なんてのは、体にとって害にしかならないのですが、
まわりの人間と仲良くするには、それと同調しなくては
いけません。そうしなければ、将来的に、その集団と
うまくやれないからです。

このように、将来への担保として、合理的行動をせず
に外部と同調することを「同調の外部性」と呼びます。
これは、共通の利益を得ようとする人間心理から生まれるものだと
言われます。


さて、口コミにしろ、マスメディアの宣伝にしろ、
全て、外部からの情報です。

ですから、そのそれぞれが、この三つの「情報外部性」に
最も上手い形でフィットした場合に、もっとも高い効果が
生まれるものだと思います。

ネット時代に入り、大量のリンクが人間という
ネットワークを構成するノードに張り巡らされました。

これは、情報の外部性が、今までになく拡大した事を意味します。

今までは、雑誌や新聞、TVが情報の外部性をほぼ独占してきました。
それが、崩れ始めたことを、まず、意識せねばならないと思います。

そのため、今までのような、
メディアによる情報コントロールは
極めて難しいといわざるをえません。

ある一つの情報という刺激を一つのノードに与えたとします。

今までは、リンクが少なかったため、その刺激に
対して、反応させるのは、比較的簡単でした。

ですが、ネットによってリンクが増大した為に、
その刺激が、刺激を与えたノードにリンクを
はっている多数のノードによって
抑制されるネットワーク形態に移行しつつあります。

つまり、情報を与えるだけでは、もう大した効果が
望めない時代なのです。
今までの広告手法は、かなりの部分で通用しない時代といってよいと
思います。特にネット上では。

これが、ネット時代の広告戦略を考えるために
重要なファクターになります。

つまり、現在、ネットユーザーは、
極めて情報という外部刺激に対して閾値が高くなっている状態なのです。
これは、リンクの増大がもたらす必然的帰結であり、
これを無視していては、高い広告効果は望めないと思われます。

では、リンクが増大した状態において、どのような広告戦略が
求められているのか?

それは、以前、「情報のカスケード」というエントリで書いたのが
参考になると思われます。それから、TB下さったinsiteさんからも
非常に参考になるコメントをinsiteさんのブログでいただきました。

色々と考えましたが、今までのような広告戦略というのは
転換期を迎えていると思います。

ネットによってもたらされたリンクの増大による
「情報の外部性」の強大化は、これからのマーケ戦略において
非常に重要なことであります。


posted by pal at 22:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
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