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2007年04月15日

書評「 日本の経営・欧米の経営―比較経営への招待」

本日は、久々に書評でも。


最近は経営史に凝っているので、よく経営史関連の書籍を読むんだけど、本日は、比較経営についての本の書評でもしてみようかな、と思う。

で、本日書評するのは、吉森 賢著の「 日本の経営・欧米の経営―比較経営への招待」で、読みやすくて面白かったんでご紹介。




本書を読むことで、簡単に日米欧の経営文化やその違いを簡単に把握できる。本日のエントリはそれらの簡単なまとめてきなものでもあるので、ご了承を。


本書によれば、フランスなどにおいて、特に特徴的な考え方であるが、技術・生産中心の考え方は、「良い商品は何もしなくても口コミだけで売れる」というのがある。


一方で、アメリカ型の考え方は「良い製品は良い広告から」といった形で、マーケティング要素が製品と一体化されて語られることがある。マーケティングや経営的な要素が重要になり、販売手法や広告の重要性が理解されているのである。


「わが社は製造業企業であり、わが社の製品は優れており、わが社の製品は買われてしかるべきである。」


このような考え方は、製品ライフサイクルが短くなってきた昨今、通用しずらくなってきている。何故なら、顧客満足度は、ある程度まで行けば上昇しにくくなるからだ。典型的なイノベーションのジレンマにぶつかるまでの期間が短くなってきているのである。製品ライフサイクルが短くなってきた世界とはそういうことを意味している。


セールス(販売活動)と広告を忌避する考え方は、イギリスやフランスで特に強い。人間の中の物質への欲求は、しばしば卑しいものだと考える文化のせいではないかと考えられる。特に男性は「紳士」を目指すべきだと教えられるイギリスでは、物質的な富の為に働く行為を特に卑しいものであるという考え方が根強く、(カネのために働くという行為はNG)、そのため、消費を刺激したりする行為、セールスや広告が忌避される運動にも繋がったのだと思われる。詳しくは本書を参照いただきたい。



一方で、日本やアメリカでは、広告や販売が企業でも非常に重要視されており、それらの部門の地位も相対的に高い。もっとも、イギリスやフランスなどで、同じ手法が通用しないことは、気にとめておくべきであろう。イギリスやフランスにおいては、宣伝広告や販売活動が、日本やアメリカほど、世間的にいい仕事であるとは思われていないので、効果が薄いのである。

本書では、各国の経営者へのアンケートから、それぞれの国の経営者の考え方の傾向を導き出している。標本抽出であり、母数が少ないのが難点ではあるもの、そういった統計的な問題点を踏まえた上で、各国の経営者の傾向をまとめると、以下のようになるだろう。


イギリス  
アマチュアリズムに代表されるように、ゼネラリスト信仰が強い。広く浅く知っている人間が好ましいとされ、狭く深く知っている人間、つまりは専門家の地位は相対的に低い。経営者は、ゼネラリストであることが望ましいとされる国。官僚の地位は、経営者と比較すると相対的に低いものとされ、経営者への天下りも非難される向きが強い。エリート教育、特定大学の出身者によって経営者の多くが占められている。


フランス
官僚文化が根強い。息子が大官僚になるように願う国。「フランスでは全てが官庁で終る」経営者の中には多くの天下り官僚が含まれている。

アメリカ
高級官僚の地位が極めて低いものと見なされる。アメリカンドリームに代表されるように、民間の知恵が重要視される。また、政府の活動の多くを有害と考えるような自由主義的な考え方も根強い。とはいえ、父親の職業は、中・上流層によって多くが占められており、MBAなどが経営者へのキャリアパスとして考えられる向きが強い。経営層は、財務出身者や、MBA取得者が多いのが特徴である。


ドイツ
高級官僚の地位は、経営者と比較して、低いものと見られる向きが強い。これは、ドイツにおいては、エリートの概念が、官僚や経営者といった向きでなく、指導者としての資格が、博士学位と結びついているためと言われる。ドイツ大企業の経営者の6割は博士学位所持者である。つまり、イギリスと比較すると、専門的な知識をもっているプロフェッショナルとしての経営者が多いのが特徴とされる。


先進国では、唯一といっていいほど、経営者の出身階層に、階層間の差異が少ない国でもある。また、父親の職業が公務員である経営者が多いのも特徴。非常に変わった経営者育成システムといえるかもしれない。他の国では、大抵の場合、特定大学への集中や、階層間の差異が現れるのだが、ドイツにおいては、それが少ない。指導者としてのキャリアパスが、博士学位のように専門性の強いものである点、それゆえに出身校がさほど重要とされない点などが上げられるかもしれにない。



日本
経営者は内部昇進による役員就任が一般的。残りの社外からの就任の場合は、銀行か天下りとなる。当然だが、勤続の長い人間が経営者となることが圧倒的で、最高経営責任者になる年齢が非常に高い。また、経営者は、中流・上流から多くが輩出されている。



このように、先進各国でも、それぞれに特徴があるのがよくわかって面白い本である。


経営者になる人なんて、そうはいないと思われるが、他国の経営者と日本の経営者の違いを比較すると、色々と面白いことがわかる。


そういった形で、経営に変化を加えたい時などは、本書は参考になるかもしれない。


ちと、最近は、労働の問題に関して、考えていることがあるので、明日か明後日あたりには、それらのことを各国の経営事情などと比較しながら書いてみたいんで、こういう書籍を読んでみた次第。


とりあえず、今回のエントリはつなぎてきなものですが。


本日はこのあたりで。


タグ:書評
posted by pal at 21:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
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