米国住宅市場: 「大宴会」の後、世界で二日酔いが始まる (英『エコノミスト』誌から):NBonline(日経ビジネス オンライン)
この問題は、随分前から、ブログの金融系コミュニティでは問題視されていて、僕の巡回先でも、しばしば取り上げられていた問題です。
んで、それらの記事をまとめつつ、この問題について、まとめてみようと思います。
ここんところの、アメリカのサブプライム問題に端を発したアメリカ経済記事のまとめですな。
中岡望の目からウロコのアメリカ » グリーンスパン議長の議会証言と『世界週報』(11月8日号)寄稿の拙稿「アメリカ経済の見通し」
えーと、まずは、こないだの金融・経済系ブログのまとめで紹介し忘れた中岡望さんのブログからです。ここもお勧めですんで、是非ご購読を。
この記事は、2005年11月4日の記事なのですが、この頃から懸念されていた問題が、最近、真面目に問題になってきた為、金融・経済関連のブログでは、しばしば記事になっています。
まず、なんですが、状況を当時の連邦準備制度理事会(FRB)議長グリーンスパンのお話から整理します。(現在の議長はバーナンキさんです。)
まず、FRBは、当たり前ですがインフレを警戒していることに留意してください。インフレという現象は、基本的に需要>供給の場合に起こります。もう一つ、コストインフレと呼ばれる賃金や原材料の高騰によって発生するインフレがあります。これは、原油高騰による物価上昇などが有名でしょう。現在、問題になっているのは後者です。
・グリーンスパンはインフレ再燃の可能性を警告
インドや中国、ロシアの膨大な労働力が、世界経済に組み入れられたことにより、労働供給が増加しているのが現在の状況。そのため、労働コストは、世界的に抑制傾向にあり、供給能力の増加に結びついているとグリーンスパンは2005年に述べています。
つまり、世界的には供給>需要といった具合になっており、その結果、インフレは抑制されてきたわけです。。が、その状況は変わりつつあると指摘しているわけです。
アメリカ経済の生産性は、引き続き堅調に推移しており、供給不足によるインフレはさほど懸念されていませんでした。
中岡さんのところから引用しますが、
「過去10年間のアメリカと他の多くの国の低インフレと堅調な成長は、この何十年間では前例のないものであった。こうした良好なパフォーマンスの大半は、特にアメリカにおいて、新しいコンピュータや通信、ネットワーク・テクノロジーを生み出したイノベーションの目覚しい進展によってもたらされたものであり、これが生産性向上を高め、単位労働コストの上昇を抑制し、インフレ圧力を押さえ込む上で役にたった」
あとは、ここ10年ほど、世界的には供給能力が順調にあがった事(世界経済に中国やインド、ロシアなどの労働力が増えたことが大きいと指摘されていますが)により、供給不足による高インフレという現象は、なりをひそめていたわけです。
その結果、世界経済では物価を安定させつつも、堅調に経済成長を遂げることができたわけですね。
ただ、問題が出てきていました。
問題は、アメリカ経済が、抱えているインフレ圧力である原油などの資源価格の高騰。
もう一つは、FRBの金利低下政策によって起こった住宅ローン金利(モーゲージ金利)の低下です。
住宅ローン金利が下がったことにより、家系部門は、低利の住宅ローンに資金の借り換えを始めました。この結果、住宅価格が上昇し、アメリカ経済の不動産部門がバブルの様相を見せたんです。
実際問題として、不動産の値上がりと低金利ローンによって、みんなハッピーだったんです。ちょっと前まで。ローンが下がったんで、返済負担が減り、その分、個人消費が増えたんです。その結果、需要が増えて景気回復が進んだんですね。その上、アメリカや世界経済の生産性は、順調にあがっていたのでインフレ無き成長が実現された・・・という感じだったんです。
中岡さんの記事にありますが、今回のアメリカ経済の成長は、こういった資産価格の上昇を担保にした個人消費の伸びが大きく寄与していたんです。
ところが、問題がありました。
サブプライム住宅ローンの資金使途の多くは、住宅購入じゃ無かった、@
ウォール・ストリート対メディア 住宅ローン市場の腐敗を暴露 @
2990兆円の頭痛
この間、ご紹介させて頂きました「お金のこねた」さんや「いちかいにヤリ」さんの所で分析されておられます。
簡単にいえば、サブプライムと呼ばれる比較的信用度の高くない消費者層への金融ローンが問題なんです。
サブプライム市場は、1990年代以降アメリカで急激成長した分野です。
まぁ、それはともかくとして、この手のローンには、ちょっとした仕組みがあります。この手のローンは、モーゲージと呼ばれる「不動産を担保にした貸付」なんです。
でもって、ここのところ、「不動産を担保にした貸付」で、サブプライムと呼ばれる比較的信用度の高くない消費者層への金融ローンが特に増えていたんです。
「おかねのこねた」さんの所から引用しますが、
要は、生活費をねん出するために、値上がりした不動産の価値を担保に金を借りて、束の間の浪費を楽しんだということなのです。
しかも、浪費のためのサブプライム・ローンの手数料や金利は、日本のサラ金と同様に劣悪なのです。
比較的信用度の高くない消費者層に、お金を貸して良かったのは、不動産価格が上昇していたからです。そのおかげで、お金貸せたんですね。
「いちカイにヤリ」さんの記事では、「モーゲジ・バンカーと投資銀行の癒着」のメディアの記事について触れられています。
投資銀行サイド
住宅ローン(サブプライム)をCDOと呼ばれる社債や貸出債権(ローン)などを担保として発行される資産担保証券をパッケージングして販売し、そこから手数料を取って儲けている。
サブプライム業者サイド
比較的信用度の高くない消費者層への金融ローンを組む。一方で、そうした金融ローンは、当然、リスクが大きい(焦げ付く可能性が高い)。
んであるから、焦げ付きをリスクヘッジするために、投資銀行が、そうしたローンをCDOとしてパッケージングして、住宅ローンを証券化して発行している。
・・・ともちつもたれつの関係でやってるらしいわけです・・・。
ですが、結局ですね。結局、これは
「アメリカの住宅バブルが弾けて、ローンの支払いが焦げ付いたらそこで終了」
なんです。どんなにリスクヘッジした所で、住宅バブルによる資産価値上昇が終ってローンの支払いの焦げ付きが目立ち始めたら、終わりです。
そして、そこで起こるのは何か?
まず、アメリカの成長は、住宅価格上昇と低金利を担保にした個人消費の伸びが支えてきたということです。これが終ります。
次に、金融機関で、サブプライム絡みの欠損を抱えるところが出てきます。損が一気に噴出すわけです。
そうなると、信用不安が一気に噴出して、金を借りにくくなります。個人も企業も。
そうなると、起こるのは何かというと。。。
当たり前ですが、不況です。しかも、資源価格の上昇が、このところ目立っているので、不況+インフレのダブルパンチ、つまりスタグフレーションになるんじゃねーかという。まぁ、ここまでいかんでしょう。FRBが絶対、それは避けるはず。
米国株、売り先行で始まる サブプライム懸念、小売売上高に失望
同時株安再び 背景に米住宅ローン危機
アメリカの株式市場で、株安が起こったのは、そういった背景によるものだとまとめることができます。
米不動産バブル崩壊
↓
不動産の価格上昇を担保にしていた個人消費減退
↓
アメリカ経済の鈍化
↓
アメリカ株が暴落
↓
ふっとぷ金融デリバティブ
↓
世界同時金融危機
↓
ここにコストインフレが加わって世界不況キター!?
と。
まぁ、ここまではいかんと思ってますけど。
サブプライム問題は、ぐっちーさんのブログでも随分前から話題にされていて、「サブプライム」で検索すると結構な量の記事が出てきます。
蛇がでたか!?
から、ちょっと引用させていただきますが、
如何せん大手金融機関がこういった住宅ローン専門会社にかなり貸し込んでいることに加え、ニューセンチュリーファイナンシャルなど、事実上破綻していると思われる会社が出てきた事、さらにこのあたりのサブプライムをインデックスにしたものをCDSにして、さらにレバレッジをかけてかなりの金額の売買をした経緯があること、更に更にそれらが結構ポピュラーな投資信託に組み込まれている事(日本にもたくさん入ってきてます)、などが複合汚染となって、金融危機が起きるのではないか、という危惧になっている訳です
要するに、住宅バブルが崩壊したら、それを担保にした個人消費が冷え込むだけですまずに、連鎖して金融危機が起こるんじゃないか、それが日本にも波及するんじゃないかって話なんです。
篭脱け まだまだ続くバイアウト・ファンド・ブーム
世界最大のLBOファンド、上場へ
借金をして株式買い戻しをしなさい!、、株価が上がるから!、、でも麻薬です
もう一つの見どころは、こっちですね。金融関連のブロガ―さんの間じゃ、時々、話題の同期がおこるんです。
世界最大のLBOファンドが上場を目指しているって所です。LBOファンドがIPOしたがる理由はなにか?って話についてです。
「ウォールストリート日記」さんと「いちカイにヤリ」さんの所を合わせて読むと、色々考えるとこがあるんです。
「お金のこねた」さんが書いていますが、LBOはぼろい商売です。上手くやれば、株価が上昇しなくても儲かる。
さて、LBOの弱点としては非公開化してからIPOするまでにある程度の期間がどうしても必要であり、その「潜伏期間」の間に経済の様子が激変すると思惑通りまんまとIPO出来ないケースが出てくることです。(これはLBOに限らず、ベンチャー・ファンドなんかにもある程度当てはまります。)
しかし、自分の所有するLBOファンドをキャッシュ・イン(現金化)するタイミングを繰り上げる秘策があるのです。それはそのLBOファンドそのものをIPOするという方法です。今すぐに自分のLBOファンドをIPOするということならば、パイプラインに蓄えこんだ非公開会社のポートフォリオが数年後に再公開された際にどういう評価を市場から得られるか?というリスクを100%自分で背負い込む必要が無くなるのです。
篭脱け まだまだ続くバイアウト・ファンド・ブーム
また、引用ですが、このあたりを読むと、LBOファンドが上場を目指す理由がわかってくるというか、見えてくるというか。
つまり、住宅バブル崩壊の前兆が見え始めた。
↓
バブル崩壊によるリスクが増大し、景気の見通しが不鮮明に
↓
LBOは、非公開化してからIPOしないと儲からない。
↓
しかし、リスクが高まり、IPOするまで待っているのは危険になってきた。
↓
そこで、LBOファンドそのものをIPOすることで、そういったリスクを回避する
という事なんじゃないかという奴なんですね。LBOファンドの上場が加速するとも見られてますけど。
なんというか、どこでも店じまいの気配が見えてきたので、景気後退が近いのかな、とも思ってしまうのですが。
色々ありますが、投資家の皆さんの判断は、多様です。巡回先でも弱気の人と強気の人でまっぷたつという感じです。
とりあえず、アメリカ経済が、今後、住宅ローン問題の顕在化にともない、スローダウンするという見方が主流なんですが、投資家の方は、どこで、どこに次のマネーが向かうかという形で、先読みをそれぞれなさっている感じです。
こないだ、バーナンキ議長の声明が出ましたが、要約すると、
NY株、一時130ドル下げ FRB議長発言受け急落
米FRB議長、議会証言で成長へのリスクやインフレ懸念に言及か
まぁ、バーナンキさんときたら
「サブプライム問題が心配。原材料高騰によるインフレも心配。経済が心配なので、利下げするかもね」
というわけです。とにかく、注意が必要な局面に差し掛かっているので、しばらく、アメリカの株価や経済ニュースは注意深くみておいたほうがよいんではないかと。