禁断の木の実を食べた家電業界
ちょっと思うところがあり、南方司さんのブログにTB。南方さんの記事は、情報家電とPCのお話なんだけど、それについて。
機械というのには、主に、汎用機械と専用機械の二つの方向性が存在していて、
専用機械
熟練が不要で、少品種大量生産に向く。大抵、一つか二つのことしかできない。
汎用機械
調節によって、広範な作業が可能な機械。扱いに、熟練を要する。多品種少量生産向け。
という形で、発展してきている。
家電は、ほとんどの場合、専用機械で、ラジオにしろ、TVにしろ洗濯機にしろ、一つのことしか出来ない代わりに、扱うための熟練が必要とされていなかった。(誰でも使えた)
一方、PCは汎用機械としての色合いが強く、メインフレームの頃は、CUIが主体で、キーボードから入力コマンドを色々と覚えなければならず、非常に扱いが大変だった。
GUIになって、そういった不便は大幅に減り、扱いやすくなったものの、メールや各種ソフトウェア、インターネットを使うには、そこそこの熟練が必要とされており、汎用機械としての側面は、まだ色濃い。
ユーザーインターフェースを革新することは、こうした汎用機械の使い勝手を良くする為には、非常に重要なんで、しばしば問題にされる。
そして、今、情報家電と呼ばれる代物は、今までは、専用機械であった家電の多くを、より複雑にする方向性で進んでおり、操作の複雑性は増す一方だ。ここは未だに解決されていない。
ケータイは、その典型で、無駄に機能は増えているが、そのほとんどは使われていない。メールと通話機能以外は、ほとんどの人がつかってない。
結局、ある程度の熟練がないとできない操作は、ユーザーに受け入れられにくいって事なんだろう。受け入れてもらうには、UIをよりわかりやすく、簡単にする必要がある。
ちょっと、関係ない話かもしれないけれど、自動車は、当初、汎用機械によって作られていた。
そのため、自動車工は、非常な熟練が必要で、産業革命後も、こういった手工的な熟練が、機械生産のために必要とされていたわけである。
ここに風穴を開けたのが、フォード生産システムで、これには、互換性生産方式と、薄鋼板プレスと電気抵抗溶接技術、移動組み立て法といったブレイクスルーが出てきたおかげでもある。
これを、わかりやすく単純化して説明すると、汎用機械で自動車を一個ずつ作るのでなく、全部、部品を専用機械で製造し(部品は互換性がある事が前提)、その組み立てをベルトコンベア方式で行なうという形にしてしまったわけである。
つまり、汎用機械を使って、多品種少量生産するのでなく、専用機械を使って、互換性のある部品を大量生産し、部品を順番に組み立てていくという形にしたわけだ。こうすることで、自動車の大量生産時代がはじまった。
こうすることで、熟練が必要な技術をできるだけ少なくし、大量生産するための生産性をあげることに成功したわけです。
これは、汎用機械による生産を専用機械が置き換えた一つの例なんだけども、専用機械を使って汎用機械に挑む場合には、一つの参考になるかもしれないと思って、例を出した次第。
正直なところ、専用機械である家電で、汎用機械であるPCを置き換えるのなら、PCの機能一つ一つに絞って、それを上回る生産性と効率性を生み出さないとダメだろうと思う。そして、組み合わせて使うことで、汎用機械であるPCよりも全体として高い生産性・効率性が可能にするべきだとも思う。
ipodみたいな携帯音楽プレーヤーとか携帯ゲーム機は、やれることは限られているが、操作が簡単で持ち運びが楽、そして何より、TV見ているときや、PCやりながらでもプレイできる。つまり、組み合わせが簡単。
ipodを聞きながら、携帯ゲームをやれる。そして、そのどちらも、比較的操作が簡単で、覚えるのも難しくない。持ち運びが楽。そうやって汎用機械であるPCを上回っている。
家電を汎用機械にしようとするなら、それはそれでいいのだが、それは結局のところ、いきつく所はPCになってしまうので、あんまし意味が無いようにも思う。
汎用機械であるPCの機能の一つを取り出して、それを専用機械にして、より使いやすく、操作を覚えやすくし、他の専用機械との組み合わせて使うこともできるというのであれば、まだわけるけど、専用機を汎用機にしてしまおうとする方向性は、間違っているような気がするんである。
最初から汎用機械として設計されたモノと、専用機械を汎用機械とするのとでは、性能の差が出て当然だと思うし。
というわけで、情報家電というのは、あくまで、何か一つの機能をPCから取り出して、それを専用機械として利用できるようにするのが王道なんだし、今ある専用機械を汎用機械に近づけるような試みは、大抵の場合、頓挫してしまうのではないかと思った次第。
iphoneは、そもそも、スマートフォンだから、まだいいとして南方さんの記事のあるように、PCに対抗しようとして、色々な機能を取り入れている家電というのは、危ないんじゃないか、そういう風に思ったわけです。
要するに、
汎用機械としての情報家電を模索する→UIを革新して、より使いやすくする
専用機械として情報家電を模索する→汎用機械の一つの機能に特化して汎用機械のある特定の機能を上回り、より扱いが簡単で生産性・互換性・利便性などが高い機器を作る。
という形が王道だと思うのに、今の情報家電は、なんだかおかしな方向へと向かってないかという話なわけです。
専用機械は、結局、やれることが限られている分、扱いやすく生産性が高いわけで、少品種大量生産が必要な場所で強みを発揮できるわけで。
そして、汎用機械は、やれることが多い分、扱いにくく、生産性などが低いわけです。なんで、多品種少量生産に向く。
この二つは、お互いに足りない部分を補いあって、今にいたるわけですが、情報家電が汎用機械なのか、専用機械なのか、よくわからない中途半端なモノに向かっていっていると感じるんで、こんなエントリ書いた次第。
要するに、最近の家電ボタン大杉。説明書長すぎ。
言いたいことはそれだけです。
おしまい
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