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2005年04月20日

ネット時代の漫画ビジネス

バブルと情報化」、「お金の仕組みを教える理由」を参考にしたので
まずは板倉氏の所の引用から。

元々、経済は、物々交換から始まったことは、周知の事実です。
物々交換では、効率が悪いので、
「通貨」が、「一時的な実体経済価値との引換券」として、普及しました。
この段階では、実体価値と通貨は、ほぼ等価の状態を保っていました。
つまり、通貨は、実体経済価値に担保されていたということです。

しかし、「効率」ばかりを追求した結果、
「通貨そのもの」を取引することが、
最も効率が良いことに気がつく人たちが現れます。
通貨そのものだけを扱う方が、
荷物の移動や、モノの設計や製作、
情報の作成と流通や、販売の努力などの、
「お金だけを追求する場合において非効率なモノ」を、
そぎ取ることが出来るのですから、効率が良いに決まっています。

わかりやすいですよね。

渡辺聡氏が言っている通り、
過去の歴史をみれば、この通りの事が繰り返されてきました。

渡辺聡氏のエントリからの引用になりますが

そして、この話の本質である、
実体から通貨を切り離すという作業は、IT技術の本質とほぼ同じである。

情報化とは何?という問いかけには、
ネグロポンテの「ビーイング・デジタル」あたりから
普通に言われるようになっているように、
実体のモノ(=)から情報(=ビット)のみを切り離して
情報の管理を丁寧に行うことで、
モノの管理効率を上げること、と答えられる。
もちろん、元々物財を取引するのではない金融業だと、
情報化との相性は非常によい。
金融業とは情報処理産業そのものであるとの言い方も時々される


これなんです。今日、話題にしたいのは。

IT技術の錬金術は、実態からもっとも金になる部分の情報のみを
切り離し、その情報だけを売って儲ける事にあります。

わかりやすい例を漫画であげます。
ここからが漫画ビジネスに関わる部分。

漫画ビジネスにおいては

出版社が金になりそうな作家を見つける。

見出された作家が作品を書く。

それを編集者が編集する。

製本関係者が製本、印刷をおこなう。ここで初めて、漫画という情報が
換金しやすい形に変化する。

運送会社が、本を運び、最終的に本屋がそれを売る。

ここでやっと金になり、出版社に金が入り、その一部が作家に還元される。

みればわかる通り、金になるのは漫画を紙に印刷状態にした時です。
それまでは紙くず以下。つまり、それ以外の部分を
どう効率よく切り捨てるかが、ネット時代の漫画ビジネスの
課題となります。

さて、ネット時代のビジネスにおいて、この何が変わるのか。
板倉雄一郎氏のエントリは、その事を明確に述べておられます。
漫画ビジネスにもあてはまるようにちょっと改変します。

「効率」ばかりを追求した結果、「漫画情報そのもの」を取引することが、
最も効率が良いことに気がつく人たちが現れます。

漫画情報そのものだけを扱う方が、
荷物の移動や、漫画の設計や製作、流通や、販売の努力などの、
「お金だけを追求する場合において非効率なモノ」を、
そぎ取ることが出来るのですから、効率が良いに決まっています。


こういう形に変わっていくんです。。。。

もっとわかりやすく例を出して述べましょうか。

漫画家が人気を博すると、その下には巨大な
同人市場というものがあらわれる時があります。

漫画自体を創って売るよりも、人気漫画情報の精髄である
人気キャラクターを使って金もうけをするほうが
たやすいという事に気づいた人達です。

人気キャラの創造や人気漫画の創造というのには
大変な才能とそれを見つけようとする出版社の努力が
必要とされるため、とても非効率なんです。

漫画界ではしばしば、「漫画はキャラクターだ」といわれます。
これは、ストーリーが二次利用が効き難いのに比べ
人気キャラクターというのは極めて二次利用がしやすいからです。
とても金になるんです。

そして、それをついたのが同人作家達。

あまり知られてはいないのですが、
同人市場では、1億円作家というのが結構いたりします。
製本や流通において、極めて安価に本を作り、売れる時代に
なった為、そういった人達が多数出現したのです。

彼らは、漫画創造において非効率だった部分を
かなりの部分で省くことによって利益をあげました。
なかには商業誌では人気がでなかったが
同人に移行することで大変な人気、つまり金を
得たプレーヤーも存在します。
頭がいいというべきでしょうか。

ですが、IT技術の真髄はそこじゃない。

究極的に、効率化を進めるならば、
漫画という情報そのものを扱うのが究極形となります。
発掘、創造、流通、販売という四つの分野を
全て切り捨てた形です。

それが、今、いくつか現れています。

つまり、同人誌を大量にネットに集めて
それを公開している人達が現れているんです。

彼らは、何も創造はしていません。
ただ、集めて公開しているだけです。
そして、一番金になる部分である情報だけを
売っているわけです。

もちろん、本を売るわけではありません。
ただ、ネット上に同人誌を公開して、多数の人をあつめ
(すごいPVを誇っている同人専門サイトも多いです)
そこから上がる広告料で金を稼いでいるわけです。

こういう形は、現状の出版社にも応用できるという事を
早く気付いたほうがいい。

ブログの運営者のやっている事もある意味ではこれと同じなんです。
既存の紙情報発信(新聞や雑誌)にまといつく
全ての非効率な部分を切り捨てて
その精髄である情報だけを使って金を儲けるという仕組みを整えてるんです。
彼らはクズ情報というものを金に換える錬金術師といってもよいでしょう。

いずれ、ですが、これはとてつもない利益を生む形に昇華します。
勿論、ながいスパンで見なければいけませんが。
あと10年か、20年か、それとも30年か。

そして、これは漫画業にも応用できて、
その際、最も金になるのはクズな漫画なんです。

この形で動けるのは大手出版社しかありえず、
僕が考えているビジネスプランにおいても
大手出版社と組む事なしには実現しえません。

それと、これが漫画家に、既存の紙雑誌の死という事ではないです。
違う形でのビジネスモデル、天才作家に頼ることなく
漫画出版社を経営して行く為のビジネスモデルの構築なんです。
既存の漫画出版社の経営というのは、危なっかしく
非効率的な部分が多いですから。

それとこの手のビジネスプランは音楽、映像といった
デジタル化しやすいコンテンツで特に顕著になると思われます。

ネットは無限の空間であり、在庫コストがほぼ0に等しい空間です。
だから、なしえるのです。既存の、古本屋、漫画喫茶とやりあって
生き残る方向でのビジネスプランは、この方向がよいかと思われます。

いじょ。


この記事へのコメント
素晴らしいですね。

漫画とネットで何かビジネスをできないかと
考えていたのですが、ここまで掘り下げた
ご意見に感服致しました!
Posted by tackq at 2010年04月05日 18:48
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