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2006年10月12日

チープ革命と大企業の歴史@web2.0といつか来た道

2045年のチープ革命


Cnetで鈴木健さんが、こんな記事書いていた。


で、なんだけど、尻馬して過去の歴史とチープ革命の進展について、ちょっと書いてみようかと思う。まずなんだけど、IT業界は、変化が烈しいけど、上記の記事のように、ある程度、経験的に変化の予測がつく分野がある。その中で最も有名なのが、


ムーアの法則


で、『半導体素子に集積されるトランジスタの数は、24ヶ月で倍増する』という経験則。


2020年頃には、限界が来るらしいけど、それまでは、この経験則のまま行くらしい。


で、IT業界の歴史においては、企業ごとの盛衰の原因は、人的要因と技術的要因に単純化してわけられるわけだけど、IBMとメインフレームがPCの前に破れさった原因は、技術的な要因で述べるなら、ムーアの法則の前に破れたって話にして展開することもできる。


で、今まで、「web2.0といつか来た道」なんてエントリで、IBMの歴史を扱ったらしたわけだけど、IBMは、かつてはメインフレームを作る会社で、その市場をほぼ独占したことによって超過利益を得ていた。


最盛期には40万人を超える従業員、不況知らずの経営で、アメリカで最も賞賛される企業だった。



ただ、そんな企業も、ムーアの法則の恩恵を受けてあらわれたPC企業群の前に破れた。


テッド・ホフ、フェデリコ・ファジン、そして嶋正利らによって、偶然作られたマイクロプロセッサは、ムーアの法則の下で、指数関数的な成長を遂げ、やがて、PCにかつてはメインフレームでしか出来なかったことを出来るようにさせてしまった。


これが、IBMとメインフレームの没落の主要な原因の一つだった。


かつては、400万ドルしたメインフレームでしかできなかった事が4000ドル足らずのPCで出来るようになるロードマップが敷かれた時点で、IBMとメインフレームの没落は、ある意味、定められていたとも言える。


そして、インテルの恩恵を受けてデルやコンパックが表れたのである。



又、マイクロソフトとビル・ゲイツを世界一大富豪にしたのも、やはりムーアの法則のおかげだった。


マイクロソフトが、windows95で、OSによるIT業界の支配を完成することが出来たのは、インテルのプロセッサーが、PCでGUIを問題なく動作できるようにしてくれたからだ。


* GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)とは、アイコンをマウスのようなポインティングデバイスでクリックしてアプリケーションを起動させるタイプのインターフェースのこと。それ以前はCUI(キャラクターユーザーインターフェース)と呼ばれるものが主流で、キーボードから文字で出力を行なうインターフェースが主流だった。


PCがGUIを備えた事によって、PCは、以前とは比べ物にならないほど沢山の人に使われるようになったが、一方でワークステーションやメインフレームは、一部の人や場所、企業などで使われるものへと追いやられてしまった。



IBMは、10万人以上の人員削減を行なう羽目になったし、PCが安くなったことで、

映像表現の「作品」性と「商品」性を制作コスト低下を前提として調和させるには


で、essaさんが、書いているように、COBOLプログラマーという職種はほぼ消滅してしまった。



これは、コンピューティングのパラダイムシフトであり、大きく強く、そして利幅の大きいコンピューター(メインフレーム)は、より小さく、弱く、そして利幅の小さいPCの前に敗れ去った。



ムーアの法則の前に、IBMとメインフレームは敗れ去ったのだ。


チープ革命は、確かに革命そのものだ。恩恵をうける人と破滅を宣告される人が、ある時期にでる。


そして、今、MSが危機的な状況にあるということで、

R・Ozzieメモ:「インターネットサービスの破壊力」

っていう、ビル・ゲイツの後継者とされるレイ・オジ―のメモが出回っているけれども。


人的要因をほっておいて、技術的要因に絞って話をすると、MSをここまで追い詰めているのは、やはり、ムーアの法則と、そして、


ギルダーの法則


ビル・ジョイの法則



になる。


ビル・ジョイの法則である「通信網の費用比性能は1年で倍になる。通信網の性能比費用は1年で半分になる。」は、現在までの所、経験則的には、正しく進んでおり、最初の鈴木さんの記事にあるとおりだ。



未来技術年表では、
「2017 エレクトロニクス 10Gbps光加入者系システムが家庭で一般化 」
とあります。いまの一般家庭では10Mbpsレベルが普及していると考えると、ほぼビル・ジョイの法則通りに展開していく予測のようです。






MSを追い詰めているのはインターネットの発展と、回線速度の指数関数的な伸び、HDDの容量の指数関数的な伸び、なのだとも言える。



かつて、サンがRISCチップの恩恵をうけて、ワークステーション分野で大成功を収めたように。


インテルはムーアの法則を最大限生かせるプロッセッサーで、そしてMSは、そのプロッセッサーの恩恵を受けてGUIをPCに載せて動かすことを可能にし、IT業界の盟主となったように。




ムーアの法則の恩恵が、彼らの躍進の原動力の一つだった。そして、IBMを没落させた原因だった。


そして今、インターネットの発展と、回線速度の指数関数的な伸び、ストレージの伸びの恩恵を受けて、表れたプレーヤーがいる。


グーグル、ヤフー、セールスフォースといった企業群だ。


さんが以前言ったように、web2.0をささえているのは、「回線速度の増加と通信価格の下落」と「サーバーが安くなったこと」で、この二つの恩恵を最大限受けて表れたのが、これらの企業になる。



ムーアの法則とビル・ジョイの法則の恩恵によって、彼らはその地位を築いている。




回線速度が増大し、サーバーが安くなったことで、「Software as a Service」というビジネスモデルが可能になったのである。


セールフォースのプレジデントの話の記事のリンクを載せておくけれど、


オンデマンド時代のマイクロソフトを目指す



セールスフォースのプレジデント、ジム・スティールの、上記の記事の中の言葉は、それを端的に表していると思う。




「ガートナーの報告は2010年までにすべてのソフトの30%がSaaSになると予測している。彼らは従来型のソフトウェアベンダーで、これからビジネスの転換をする必要がある。SaaS分野で先行しているのは我々であり、(他メーカーの後続製品の発表は)彼らが我々と競合したいという意思表明だととらえている」




「IBMがメインフレームを独占し、マイクロソフトがクライアント/サーバ市場を独占したように、我々はSaaSの独占的なプラットフォームホルダーになり、オンデマンドの世界のマイクロソフトになることを目指している」




IBMのメインフレームの時代が終わったとき、マイクロソフトがクライアント/サーバ市場で王者となった。そして、今、また風向きが変わりつつある。



ムーアの法則とビル・ジョイの法則が、ルールを変えてしまったのだ。


MSは、かつて、ムーアの法則の恩恵を受けていた。だが、その力は彼らの下から離れつつある。



メインフレームやワークステーションの時代は随分昔に終わってしまった。


今はPCの時代、ウィンテルの時代、だ。


だが、その時代も、終末に差し掛かってきたんだと思う。


全てのアプリケーションをサーバー側からブラウザーを通して提供するウェブ・アプリケーションという構想が現実味を帯び始めたからだ。


回線速度の増加(ビル・ジョイの法則)とサーバーの価格下落(ムーアの法則)によって、それが可能になったのだ。


これが進めば、ユーザーは、アプリケーションのインストールやアップグレード、データの保管といった作業から解き放たれる。


そして、ここからが重要なのだが、特定のOSの乗ったマシンを選ぶ必要がなくなるのだ。このゲームが進めば。


それは、最終的にはマイクロソフトの利益の源泉であるwindowsの価値低下をもたらすことになる。


アプリケーションやコンテンツが特定の端末、OS向けに開発される時代は終わりつつある。この流れが続くならばだが。



ハイビジョン映画約140本分を1秒で転送--NTTが毎秒14テラビットの光伝送に成功




GIGAZINE - ハードディスクの容量が約10倍になる技術をSeagateが開発





上記の記事にあるように回線速度が速くなりつづけ、ムーアの法則の恩恵を受けてサーバーが安くなりつづけ、ストレージが増えつづけるなら、ネットワークを通じて、個々人の端末にアプリケーションやコンテンツが提供されるようになったほうが遥かに安く大量のコンテンツやアプリケーションを届けることが可能になる。



IBMとメインフレームは、ムーアの法則の前に敗れ去った。指数関数的に高くなるPCの性能、一方で下がりつづけるPCの値段の前には、400万ドルもするメインフレームは歯がたたなかった。



PCとマイクロソフトは、同じように、指数関数的に高くなる回線速度とストレージ容量の前に、敗れるのかもしれないとは思っている。「SaaS」、それから時々話題になる「グーグルOS」。どれも、今までよりも遥かに低いコストで、今まで出来たこと、出来なかったことを可能にしてしまう。


グーグルのGmailのストレージは、一年ちょっと前は1Gだった。今では、2.7Gまで増えている。ストレージは、指数関数的に伸びている。そして、グーグルのそれも指数的関数に伸びているんである。


1年で二倍ずつ、グーグルがストレージを増やしつづけるならば、10年後にはグーグルは現状の1000倍のストレージをユーザーに開放することになる。

つまり、2000Gのストレージをユーザーに無料開放することになる。


10Gbps光加入者系システムが家庭で一般化すると予測されている2017年には、グーグルは2000Gのストレージをユーザーに無料で開放可能になる・・・ことになる。さほどコストをあげることなく・・・・だ。



10Gbpsの回線とグーグルが提供する2000Gの無料ストレージを我々は利用できることになる。


そうなると「ネットワークこそがコンピューター」というかつてのネットスケープが提唱した世界が現実的になってくる。グーグルOSなんてのが真面目に夢物語ではなくなってくる。回線につなぎさえすれば、それが利用できる土台が整うはずだから。


セールスフォースのプレジデントがいうように。


「Microsoft CRMを導入する場合、その前に同社のActiveDirectoryやIIS、SQLサーバなどを導入する必要がある。SaaS型の Salesforceであれば、PCに電源を入れて、アクセスするだけだ」




この先にあるのは、かなり絶望的な戦いだ。


かつて、幾度もあったように、幾つかの大企業は、より安く、小さく、そして利幅の小さいもの・・・・との戦いを強いられるからだ。





MSのバルマーCEO、ウェブサービス時代のPCの役割を語る



MSも、そういう時代が来ると分かっているんだと思う。レイ・オジ―、ビルゲイツ、S・バルマーも分かっているんだと思う。



ただ、どんな優秀な企業と技術者をもってしても、この指数関数的に伸びる技術革新の前には、どうしようもないのかもしれない。今まであげたIT業界の法則性がある限りは、製品・サービスは、より安く、小さく、そして利幅が小さくなっていく。自分達のメインの収益源を守ることは、ものすごく難しい。IBMがメインフレームを守りきることができなかったように、MSはwindowsを守りきることができないかもしれない。


IBMは、メインフレームが売れなくなり、価格が下落したとき、それを補う何かを持っていなかった。プロセッサーやOSをもっていれば、又違ったかもしれないけれど、OSやプロセッサーが、メインフレームの売上・利幅の減少分を補うほどに巨大になるには2000年まで待つ必要があった。多分、例え、OSとプロセッサーをもっていたとしても、一時的な痛みは避けられなかっただろう。


MSも、windowsが売れなくなったとき、それを補う何かを現状持っていない。IBMの二の舞を踏むのか、それとも、生まれ変われるのかは、まだわからない。ただ、現状、


大浦博久氏のマイクロソフト退社と昨今のマイクロソフト事情


を読んでいると、まるでかつてのIBMだ。


ここから先は人的要因になる。


優秀な頭脳の流出。一方で、財務的には問題のない経営。


1980年代のIBMは、そういう会社だった。2000年代のMSにもそういう所があるように見える。中島さんのブログを読んでいると、


Googleの強さはStructured Chaosにあり



 2000年あたりからMicrosoftがトップエンジニアたちにとって魅力的な企業でなくなってしまい、大量な頭脳の流出が起こった



IBMは、1980年代にそれが起こった。トップエンジニアや重要人物が相次いで、IBMを去ったのだ。希望退職制度などを通じて。

ソフトウェアエグゼクティブの一人だったマーケルは、「ソフトウェア(OS/2)を使ってハードウェアを差別化する」という主流派の主張に対して、そんなことは不可能だと主張した。なぜなら、小細工をちょっとしたところで、互換機では、それら全てが動いてしまうからだ。


マーケルは後にこう言っている。

「私の最大の過ちはこういうやり方をしていたら破局が来るということを納得させることができなかった事だ」

彼は、あまりに腹を立ててしまい、IBMをやめてしまった。


同じように、IBMに腹を立てた人々がIBMをやめていった。


同時に、肥大化して、官僚化し、問題点が山積みになる。熾烈な社内政治が繰り広げられる。


91年頃のIBMの社内掲示板の様子はそれをよくあらわしている。


「プロセスについては多くの話を聞いてきた。しかし我々が知っている唯一のプロセスは、繰り返される大混乱くらいのものだ。IBMが説くプロセスは、希望的観測やプロジェクトだけではないだろうか。BGCのだれかが、製品Xを時間Tで作らなければならないと決心し、それを設計するプロジェクト・チームを任命する。六ヵ月後、それは没になり、同じプロセスが繰り返される。そのときすでに我々は競争から六ヶ月も遅れているのだ」


ポール・キャロル著 「ビッグブルース」 P290より引用。




OS/2は完成せず、バルマーは、IBMのことを「あそこは競争相手がヘマをした時だけ好調になる」と皮肉った。92年にはPCビジネスは事実上転覆し、将来性は失われていた。研究開発費は削られ続けており、その中でも画期的な発明は、採用されずに終わってしまった。そして、頼みの綱のメインフレームは売れなくなりはじめた。




MSが、そこまで落ちるかどうかはわからない。


ただ、あまりにも、1980年代のIBMと似ていて、不思議なものである。


S・バルマーやビル・ゲイツが、かつては反面教師としたIBMと、まるで一緒の状態だ。



優秀な頭脳が流出し、開発は遅れに遅れ、社内の椅子取りゲームだけが烈しくなる。


技術的要因によってルールが変わった。増えつづけるストレージ、回線速度。それが新しいビジネスモデルを可能にさせている。

一方で、内部では大企業病がMSを蝕んでいる。



いつか来た道をいく。


その力に、MSも屈しようとしている。そして、いずれはグーグルもそうなるのだろう。


それが当然だと言わんばかりに、かつての勝者を敗者におとしめ、イノベーションは最高の頭脳をもつ人々の予想を越えて荒れ狂う。




歴史と技術の進展は、あまりに苛烈だ。


























タグ:歴史 IT google
この記事へのコメント
You've really ctauperd all the essentials in this subject area, haven't you?
Posted by MqPIvVCUc at 2012年09月06日 11:18
Posted by VftiKEAlqboPu at 2012年09月06日 20:54
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Posted by kQcDMlkKULRpZtpt at 2012年09月08日 01:48
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