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2006年07月07日

歴史人口学からみた今と昔の日本





本日は、歴史人口学のお話です。

伝統的な歴史学は、マルクス主義の影響を強く受けていたり、イデオロギー的な部分を多く含んでいたわけですが、それに対する批判・克服として台頭したのが歴史人口学です。




従来の歴史学においても、人口というのは、極めて重要な位置をしめているのですが、歴史人口学においては、フランスでは教区記録、日本では宗門改め帳を史料として使うことによって、当時の人々の生死、出産、結婚離婚などにまつわる諸指標を算出することを目指しました。



これは、従来の歴史学における構造研究への偏重への批判・再考を促すものだったのですが、歴史人口学の研究の発展の結果、当時の民衆の生活史の復元が可能になったのでした。



皆さんが、学校で習うような歴史は、歴史の中において、比較的文献資料を残した人々の歴史です。ですから、日本史であれば、主に貴族の歴史、あるいは武家の歴史といってしまったほうがいいものです。ほとんどの場合、文字を書き残せたのは、上流階級の人だけですから、どうしてもそうなってしまうわけです。

下流階級の人たちは、文献資料をほとんど残していませんから、歴史研究において、かなりの部分で謎につつまれた存在であったりします。

歴史人口学の優れていた部分は、史料を用いた人口動態の復元によって、当時の人々の生活史をそれが文献資料を残していない下流階級の人々のそれを含めて復元可能にしたことです。



歴史人口学

歴史人口学を学ぶ本

歴史人口学 

近代日本の社会変動

幾つか、資料となるページにリンクさせて頂きましたが、日本では速水融氏による宗門改帳の研究から日本の歴史人口学が幕をあけました。



幾つか、その成果について、書かせて頂きますが、
(例外は勿論、存在します)

1700年以前の日本社会においては、中世的な大規模世帯と小規模世帯が並存。

後者の傍系家族や下人は、婚姻率が低い。

乳幼児死亡率が非常に高く、子供は10歳までに約半分が死亡してしまう。

多産多死型社会であり、平均寿命は短い。

1700年前後に、日本では耕地面積が増大し、都市が発達。人口の増大がおこり、年1%の割合で増えていく。(生産能力などが発達した為と考えられる)

世帯構造が変化し、早婚・皆婚といった傾向が顕著になる。単婚世帯においても出産が行われるようになる。

乳幼児死亡率が低下し、子供の10歳までの死亡率も20〜30パーセントまで低下。平均寿命も上昇する。

この時期の平均余命の上昇と乳幼児死亡率の低下は、人口増大を吸収可能な耕地面積の拡大などによる、一般生活水準や生活環境の改善で起こったと考えられている。


人口が増加した後、人口を吸収可能な余地が低くなると、人々は、人口増加に人為的、あるいは無意識的とも呼べる行動を取り始める。平均初婚年齢が高くなり、堕胎や間引きといった出生制限が行われるようになる。

1720年以降、人口増加は再び停滞する。ただし、地域差が存在しており、東北日本で減少、中央日本で停滞、西南日本で増大という傾向は見られた。

人口吸収力のある地域(耕地可能な地域)では、人口増加が19世紀に入るまで見られた。

死亡率の悪化等は見られず、農民の生活に関して、死亡率の点からは、以前と比べて下がったという傾向は推論できない。

都市墓場効果。都市では出生率は死亡率より低く、農村では出生率は死亡率より高い。都市は、農村からの大量の人口流入によって人口を支えていた。このあたりは、こちらに詳しいです。


再び、日本全体で人口が増加するまでには、幕末にいたり、近代化がおこって新たな雇用機会と生産力の拡大、人口吸収力の増加がおこるまで待たれる必要があった。

こんな所になります。

皆さんのもつ江戸時代像と一致しました?

たとえば、核家族というのは、場所によっては、割と江戸時代からも見られた傾向であったりします。最近の傾向ってわけでもないんですね。

また、都市墓場効果に見られるように、人口密度の高い都市部では、死亡率が農村部より高くなったりします。疫病が発生しやすいって理由もあるんですが、農村部の暮らしっていうのは、カムイ伝の世界というほどに酷いというわけでもなさそうなわけです。(実際に、平均寿命などが江戸時代を通じて悪化したりはしないんですね。飢饉とかで減ることはありましたが)

また、新しい生産手段・技術革新によって、生産能力が上がると、人口が増大し、そして、人口吸収力が無くなって来ると、人口は停滞に向かう(晩婚化、堕胎・間引きなどの人為的な人口制限)というパターンが見て取れるわけです。(勿論、例外はあります。日本東北地方における早婚と出産制限という矛盾する状況とか)

現在、先進国では、晩婚化が進み、人口は停滞しているわけですが(アメリカみたいに移民増やしている国家を除く)生産能力が上がり、人口が増大した結果、人口吸収力のなくなった場所では、人類は人口を増やさなくなるという傾向とみてとれるわけもあるわけですね。

最近の日本の晩婚化、婚姻率の低下なども、日本の人口吸収能力が、以前と比べて、それほど無いことに原因を求めることもできそうです。

だから、マルサスの人口論は、歴史的にみると、あんまし意味が無いというか。

人間って、不思議なもので、自分達のすんでいる場所に人口吸収力があれば、勝手に人口を増やすし、無くなると勝手に制限する傾向が歴史を通じてあったりするんですね。



というわけで、本日は、人間って、何も考えていないように見えて、集団としては、なかなか合理的な活動しますよという話を歴史人口学の分野と絡めてお話してみました。







タグ:歴史 社会
posted by pal at 19:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
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