第二幕→ http://blogpal.seesaa.net/article/16386793.html
しずかちゃん「さて、王子様、まずは敵を知り、己を知れば百戦危うからずという孫子の教えに従い、まずは、ヒロインというものについて、レクチャー致します。」
王子様「・・・・ねぇ、まわりくどいことをしてないで、シンデレラを殺しちゃおうよ?」
しずかちゃん「王子、貴方は馬鹿です。救いようのない愚か者です」
王子様「なんでっ!?」
しずかちゃん「いいですか?ヒロインというのは、異常に逆境に強いクリーチャーであって、追い詰められれば追い詰められるほど、パワーを発揮するのです。」
王子様「どこぞの星の戦闘民族みたいだな・・・・・」
しずかちゃん「よーく覚えておいてください。死に掛けのヒロインほど手に負えないものはありません。そこから発揮される力がヒロインの真の力です。使わせてはいけません。場合によっては星一個くらいは簡単に壊します」
王子様「どこの世界の魔王だよ、それ・・・・」
しずかちゃん「それがヒロインなのです。一見、無害で、頼りなさそうで、ドジで間抜けでトロそうに見えますが、外見に惑わされてはなりません。ヒロインの中身は、全部範馬裕次郎と思っていただかないといけません。」
王子様「地上最強の生き物ですか・・・・・」
しずかちゃん「というか、中身は範馬裕次郎と江田島平八を足して二乗したくらいと思って頂いて結構です。」
王子様「勝てる気がしneeeeeeeeeeeeeeeee!!!!!!!!!!!!!!!!」
しずかちゃん「われわれが挑もうとする敵は、そういう相手なのです。ヒロインなんです。世界を征服寸前の魔王ですら、何故か殺せない存在なのです。それどころか、どんな窮地に陥っても生き延びて必ず最後に玉の輿を達成する、そういう生き物なのです。おわかりですか?これがいかに絶望的な戦いであるかという事が?」
王子様「狂ってやがる・・・」
しずかちゃん「いいですか?ヒロインを追い詰めてはいけません。そんな事をすれば、ヒロインの思う壺です。他に女を作ってみたり、ヒロインに罵詈雑言を投げつけたりすると、すごい勢いでフラグが立つので注意してください」
王子様「フラグ?」
しずかちゃん「一般に幸福量保存の法則とも言いますね。ヒロインを虐めたキャラは、その後でよくヒロインにした仕打ちに二乗したくらいの不幸が降りかかる事からそう呼ばれています。しかも、ヒロインは、不幸になればなるほど、その後で美味しい目に会うのが一般的です。小説から漫画、ドラマにいたるまで、この現象は実に幅広く確認されています。」
王子様「・・・・そうなのか・・・・」
しずかちゃん「ヒロインが失敗する、あるいは虐められるとフラグが発生し、見えざる神の手によって、その後のヒロインの大逆転を呼び込むことになるので注意が必要です。」
王子様「ちょっと待ってくれ。じゃあ、どうすればいいんだ?つまり、ヒロインを攻撃すると、必ず、それに対して最低2倍から、最大で∞のしっぺ返しを食らうってことだろ?」
しずかちゃん「よい指摘です。つまりですね、ヒロインとはイージス理論なのですよ」
王子様「イージス理論?」
しずかちゃん「完璧な防御手段、無敵の盾さえあれば、たとえ、攻撃力がスライム並のカスでも無敵の存在になるという理論です。まさに、ヒロインです。ヒロインと名のつけられた存在は、攻撃力はたいしたものはもっていないのですが、守備力は事実上、無限大です。いかなる攻撃もやつらには通用しません。絶対に死なないんです。また、攻撃を受ければ受けるほど、一般に強くなる傾向すらあります」
王子様「なんでそんな不自然な生き物を描いて誰にも怒られないのよ!?」
しずかちゃん「・・・・・・・王子様、貴方、快感フレーズという漫画をご存知ですか?」
王子様「知らん。」
しずかちゃん「一度、読まれるといいですよ。少女漫画読者の頭のイカレッぷりとヒロインの無敵ぶりを堪能でますから」
王子様「どういう漫画よ?ギャグ漫画?」
しずかちゃん「少女漫画界のグラップラーバキと思って頂ければいいかと思います。連載開始直後に、ヒロインが主人公に運転する車にひかれそうになったことから恋が始まる漫画です。しかも、ことあるごとに、ヒロインは脱がされたり、レイプされそうになるし、手に負えませんね。もちろん、大して美人でもないヒロインが超ハンサムで17歳なのにフェラーリを乗り回すような男に一目ぼれされる点も常識の範囲外です。大して美人でもないはずなのにね。その理由が愛。愛ってのは作品の不合理を正当化する作家の最強の免罪符だと確信させてくれる作品です。」
王子様「どっちかっつーと赤松健の漫画みたいだな。それ売れたの?」
しずかちゃん「大ヒットしてアニメにもなり、さらに作者は豪邸作るくらい儲かりましたね。お読みになって頂ければ、少女漫画読者の頭のいかれぶりがよく理解できると思います。私は、第二話まで読んだところで、ノックアウトされました。」
王子様「つまり、あれか。芸術家ぶって偉そうな講釈たれつつ、リアルを追求した漫画より電波ゆんゆんでご都合主義満載で、読者に媚び媚びな漫画ほど売れるってことだな。」
しずかちゃん「少女漫画読者向けでは、そのとおりですね。そもそも、少女漫画読者なんてドジで間抜けで不美人なヒロインにハンサムが惚れた後、物語の都合上、ヒロインと周囲の人間が不幸になるわけですが、そういうのを見て、大喜びする連中なんです。きっと真性の馬鹿かSなんでしょう。」
王子様「つまり、アレか・・・・少女漫画読者を皆殺しにでもしない限り、俺が助かる方法はないって事か・・・・・」
しずかちゃん「ふふ・・・・王子、ヒロインにも、ひとつだけ弱点があるのですよ」
王子様「え!?」
しずかちゃん「いいですか?ヒロインとは、守備力は無限大ですし、実際にいかなる攻撃をもってしても殺せない生き物です。しかし、唯一弱点があるのです。それは、不幸には強いが、幸福には弱いという点です。」
王子様「へ?なんで?普通、逆じゃね?」
しずかちゃん「物語とは、性質上、山と谷が必要になります。そのため、ヒロインは、幸福になればなるほど、その後で、凄まじい不幸に見舞われる体質を身につけています。幸福状態が長く続くと、物語がだらけるからです。これは、『おしん』や『ガラスの仮面』といった名作をご覧になればわかるでしょう。ヒロインがちょっと幸せになると、その後で親しい人との別離だったり、失恋だったり、知人の死だったりが起こるのです。」
王子様「ヒロインが幸せになると、その次は、ヒロインと周囲の人間が一気に不幸になるのね・・・それ、ただの疫病神では・・・・」
しずかちゃん「そうです。物語の疫病神。それがヒロインの正体です。ドジでクズでのろまで、何の役にも立たない上に、幸福になると、その後で他人を巻き込んでそこいら中を不幸にする存在。それが一般的なヒロインです。」
王子様「・・・・・・・」
しずかちゃん「私達は、このヒロインの絶対法則を逆手にとります。ヒロインを直接的に虐めると、フラグがたって、こちらがやられますが、幸福量保存の法則に従えば、ヒロインを幸福にすればするほど、ヒロインは後で手痛いしっぺ返しをくらうことになります。その幸福量がでかければでかいほど、ヒロインが食らうダメージも増えます。」
しずかちゃん「王子様・・・・貴方には犠牲を覚悟して頂く必要があります。至上最悪のモンスター・ヒロインを退治にするには、一度、ヒロインを死ぬほど幸福にする必要があります。」
王子様「まぁ、それはいいけど・・・・」
しずかちゃん「王子様、本当に覚悟がいるのです。シンデレラをラスト以外で幸福にした場合、幸福量保存の法則にしたがって、王子様の国を未曾有の災厄が襲うことになると予想されます。シンデレラと一緒に何の罪もない人々が沢山死ぬことになるでしょう。」
王子様「うそ!?そこまで!!??」
しずかちゃん「相手はヒロイン中のヒロイン、シンデレラですから…物語のセオリーを壊すには犠牲がつきものなのです。」
王子様「それしか、本当に道はないのか?他にも取るべき道はあるんでは・・・・」
しずかちゃん「王子様、残念ですが、世の女性の勘違いが生み出した悪夢の化身シンデレラを倒すには、他に道はないのです。」
しずかちゃん「さあ、選んでください。このまま、何のとりえもない平凡な女と結婚する道を選ぶか、罪のない子供たちが何百人も死ぬことになろうともハーレム建設のために、シンデレラを退治する道を選ぶかを。」
王子様「・・・・俺は、もう今まで、十分、尽くした。世の女どもの腐った理想に振り回されるのは御免だ。シンデレラとはもう結婚したくない。俺が作りたいのはハーレムだ。だから、たとえ、悪鬼と罵られようと、俺は・・・・・自分の夢に生きる!!そうだ!俺は、自分のために生きていいんだ!!」
シンデレラ「よく仰いました王子様!!私が必ず、貴方のお力になってハーレム建設の夢を叶えてさしあげます!!きっと!きっと!きっと!!!!」
つづく。