UIEngine で AJAX な RPG ゲーム
という記事があって、強く惹かれた。
どの部分に強く惹かれたかというと、プログラマーでなくても
ゲームが作れるという点である。
実際に、どうなるのかは知らないし、プログラマーでも何でもないので、実際に、どの程度凄いのかはわからない。公開待ちなのだが、こういった方向の進化は、非常にわかりやすいものである。
書評「ウェブ進化論」と「グーグル Google」。そしてメディアビジネスの競争構造の変化。
で、将来のゲーム業界像についても、ちょっと扱ったけど、今回のコラムでは、もうちょっと詳しく考えてみたい。
誰にでも、ゲームを作れるのというのであれば、古くはTRPG、それから、最近だと(そうでもないかな)RPGツクールなんてのがある。
現在、ゲーム業界自体は、大作RPGの開発費が高騰し、閉塞感に溢れている状況の中、低コストで作られたゲームのヒットが、最近多い。つまりは、ひぐらしみたいな同人ゲームのヒットだったり、動物の森だったり、脳トレ系だったりする。
で、その最後の一撃だと思ったのが、中嶋さんがいう誰にでもゲームが作れる環境であり、これは、開発コストの劇的な低下を市場にもたらす。
誰にでも作れるなら、つまり、高度な知識がいらないなら、人件費を物凄く安く抑えれる。というか、勝手にみんなが作っちゃう。だって、コスト安いんだから。ブログみたいに。
話を、ちと、かえるけど、わんわんワールドというはてなのサービスがある。ゲームとはいえない。ただ、ログインして、犬になってユーザー同士お喋りするだけ。
ワンワンワールド
MMO経験者のnaoyaさんもこんな事言っている。僕もMMOやっているから、ゲームとは言えない。だが、このシステムが提起する問題は、ゲーム業界の競争構造の変化の本質だと思っている。
というか、これがリリースされた時、ちょっと絶望と希望の入り混じった気持になった。
「ウェブ進化論」の一節に、『がっくりと肩をおとしたコンピューター業界の長老』というエピソードがある。梅田さんが、日本コンピューター界の黎明期に活躍した長老と会って、その方に「はてなマップ」を紹介した所、その方がネットのあちら側にAPIが公開されていることの脅威を瞬時に理解し、ある意味で絶望したというエピソードだった。
わんわんワールドを見たとき、僕も、その人と同じような気持になった。もう、とめられない。これは、希望と絶望のエピソードだ。主役交替のプロローグだ。
その後、はてなマップの開発費が、一人のプログラマーが5日かかって作り上げたものだということ、本来なら、数億円はかかるはずのものであることも指摘されている。APIが公開された故にコスト構造が激変したのである。
その後のシステム部長の言葉も興味深い。
「いや、これはおもちゃですから」
と言う。その後、梅田さんは、これに対して、
「どこかで聞いた言葉だなぁと私は思った」
と書いている。そして
「80年代にPCが世の中に登場したときも大企業のシステム部門の人達はこの言葉を繰り返し、1世代前の技術への莫大な投資を繰り返していた」
という。
このまんま、その通りのことが起こっているのが、実は「わんわんワールド」だと僕は思った。梅田さんは、このエピソードと一緒に、わんわんワールドの話も使うべきだったと思う。もっとも、時期的に使えるわけないんだけども。
確かに、UOやらFF11なんかをプレイしたことがある人には、あれは、おもちゃでしかない。ゲームとしては、あまりにブサイクで不出来だ。だが、問題はそこではない。質、価値の問題ではない。
はてなという会社のid:wanparkという一人のプログラマーによって、とんでもく低いコストで、ゲームじみたモノが作られ、そしてユーザーに喜ばれて、はてなというちっぽけな会社で運用され、ユーザーに使われているという点に最大の問題がある。
このシステムのコスト差、開発にかかるスピードの差は、競争においては、決定的であり、かつ絶望的なものである。競合企業がつぶしたくても潰せはしない。だって、ほとんど、はてなの既存インフラを使ってタダで運用されているようなもんだし、開発にも大したコストがかかっていないのだから。しかも、喜んでそれを使っているユーザーまでいる。
話を、中嶋さんに戻す。僕は、中嶋さんのブログが大好きで、しょっちゅうお邪魔して記事を読んでいるのだが、最近、CNETでこういう記事が上がった。
シームレス・コンテンツ
中嶋さんの言っていることで、この1〜4は、ビジョンとして、一部のプレーヤーにとって希望に溢れており、そして、一部のプレーヤーにとっては絶望的なものでもある。
こういう世界が現出すればどうなるか。
すでに、その兆候は現れている。
基本的に全てがウェブ・アプリケーションで、アプリケーションをデバイスにインストールしたりダウンロードしたりせずに、全ての状態やデータはサーバーに保持された状況を利用できる状況で、UIエンジンが今回、公開しようとしている「誰にでもゲームが作れる」状況が現出したら、どう世界は変わるのか?
結論は簡単。相対的に、従来のゲーム産業は高コストになる。一方で、低コストの恩恵をそれまでゲームが作れなかったプレーヤーが圧倒的に受ける。とんでもなく低いコストで、ゲームを作って、色んな人に遊んでもらうことが可能になるからだ。プログラマーでもないタダの素人が、たった一人でも。
わんわんワールドというのは、そういうインフラをすでに利用できる一人のプログラマーが、たった一人で何ができるのかという事を、現実のレベルで証明してしまった出来事だった。これは、現実なのである。
この流れは、もう止まらない。流れに逆らえば、あとは溺れるだけだと思っている。逆らえば、80年代のシステム部門と同じ間違いを繰り返すことになる。既存のゲームの開発環境は、すでに1世代前のモノになりつつある。
結局、チープレボリューションは、こっちにも飛び火してくるのだ。
これが現実なのだ。
ルールは変わってしまった。