グーグル Google 既存のビジネスを破壊する
まだ、発売前だが、著者の佐々木さんから上記の
「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」を
頂いたので、書評を上げさせていただく。
発売前だがメールのほうで、読み次第、書評を上げさせて頂きますと約束したし、実際に、エキサイティングな本で、書評としつつ、今後のメディア産業についての自分的な考えの整理もしてしまおうと思う。
はてBでも話題になったdanさんの
すべてを一度懐疑していく
もあわせて、読んでいただくと、この二つの本、「ウェブ進化論」と「グーグル Google」に興味をもっていただけるのではないかと思う。
この二つの本は、あわせて読んだほうがいい。特に、今度のメディアビジネス、あるいは広告と関係する方には是非ともお奨めする。広告を作る人にも、自分で広告を出したいという人にも是非読んで欲しい。
今回のコラムでは、二つの書籍の書評を同時にする、というか比較しながら読んだので、これらの書籍を読んで、僕が考えたこと、そして日ごろから考えていることを扱うので、正確には書評ではないかもしれないが、これら二つの本がなければ、描かなかったエントリなので、やはり書評という形を題名にいれた。
二つの書籍からは、どちらからも、ネットからもたらされるであろうメディアビジネスの転換と市場競争におけるパワーシフトの転移についての洞察が得られる。
二つの書籍は、前世紀において巨大に膨れあがったメディアビジネスと広告市場におけるゲームの進展の物語である。
どちらの書籍にも副題があり、「本当の変化はこれから始まる」や「既存のビジネスを破壊する」という文が入っているが、これは、著者達がグーグルに代表されるIT業界のプレーヤーが今、何をしているのかついての説明を詳細に行っているからでもある。
つまり、破壊だ。
今回のコラムでは、もう一つ、紹介しておきたいエントリがある。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/0c536e5d461e49fbd7fb5e8c69781486
池田先生の所の、新聞の「水平分離」についての記事である。
ビジネスモデルの話から入るが、ビジネスモデルでは、どうやって競合を叩き潰すか、という点が、構築する際の、ひとつの課題となる。
そして競合を叩き潰す方法は、大きくわけて二つある。
ひとつは「強固な参入障壁」であり、高い技術力であったり、ネームバリューであったり、莫大なインフラ、あるいは法制度などで、競合他社に差をつけるか、あるいは、市場から締め出すことを目的とする。
もうひとつは、「低コスト化」であり、既存のビジネスの不必要な部分を分離したり、機械化やシステムの簡素化、流通経路の簡素化などによって、より低いコストで製品やサービスを作ることで、価格破壊を起こし、競合他社との競争に打ち勝つことを目的とする。
現在の日本のメディアビジネスは、新聞は100年前、TVは50年前にそのビジネスモデルが確立された。再販制度と、宅配制度、そして放送免許がこれにあたる。
それらは、いずれも、「強固な参入障壁」として機能した。記者クラブなどもビジネスモデル的には参入障壁として機能している。
現在のメディアは、こうした「参入障壁」によって自分の市場に新たなプレーヤーが入りこむことを阻止することで、「価格破壊」が起こらないようにしていた。
これは、参入障壁を築くことの目的であり、市場の価格破壊を嫌うプレーヤーはしばしばこれをやる。市場を独占し、価格破壊が起きない状況になれば、その企業は札束の印刷機を手に入れたも同然である。
ほかのビジネスでも、参入障壁を築いて、ほかのプレーヤーを締め出す企業は後を絶たないが、じつは、この参入障壁というのは、企業を腐らせる呪いともなる。
理由は、参入障壁を築くことに成功した企業は、必ず、高コスト体質になるからである。
理由は簡単で、参入障壁を築くことで、競合他社を市場から締め出すことに成功した企業は、市場を独占することが可能な故に、価格破壊は絶対にしない。
それゆえ、「価値とコストのトレードオフ」による、よりコストをかけて、高い価値の製品を作り、それを売るという高価値製品の開発に邁進してゆく。
もうちょっと、ビジネス用語にすれば、「製品の差異化戦略」といえる。参入障壁を築いた企業は、かならず、こちら側の戦略を取る。
顧客を満足させようと、コストをたくさんかけて、より価値の高い製品を作ろうとする。価格を下げるという選択肢は、競合他社がいる場合のみ、企業が選択肢として取る行為であり、参入障壁で守られた市場では、ほとんどの場合、価格破壊は起こらない。
顧客の望むのは「低価格」あるいは「高価値」であるので、参入障壁を築くことに成功した企業は、必然的に、売り上げを伸ばすために「高価値」を求めて突き進む。その結果、参入障壁によって守られた企業は高コスト体質になっていく。価値をあげるには、コストをかけるしかないからだ。
そして、高コスト体質が染み付いた企業というのは、競争力を失う事になりやすい。正確には、コスト競争力を失うのだ。
その結果、しばしば、何らかのイノベーションによって、より低コストのビジネスモデルを生み出し、参入障壁を突破した企業による価格破壊の波に抗しきれず、打ち負かされる場合が歴史上、多々ある。
「ウェブ進化論」と「グーグル Google」は、こうしたメディア・広告ビジネスの構造変化について語った書でもある。
差異化戦略をとり、参入障壁を築き上げた結果、高コスト体質になってしまった既存メディア企業がグーグルなどのIT企業による、メディア・広告市場の価格破壊に晒されているという事を分析した書でもある。
同じレベルの製品を作る企業が競争すれば、一般的に勝つのはより低コストで製品を作れるほうになる。
しかも、多くの場合、参入障壁によって自分の市場を守ってきた企業は、高コスト体質が染み付いてしまっていて、「低価格競争」ができるスキルをもっていない。彼らが持っている競争のための技術は「高付加価値」のための技術であり、「低価格競争」のための技術ではないことが多いためだ。
「スペック至上主義は必ず負ける」、あるいは「イノベーションのジレンマ」と直結する運命を辿る道筋は、ある意味で、強固な参入障壁から生まれる。 企業に莫大な富をもたらす「参入障壁」が、やがては企業を破滅へと導くわけである。
日本のメディア、特に活字メディアは、再販制度によって守られているため、価格破壊が起こらないシステムとなっていた。
が、ネットの登場によって、この部分が破壊された。デジタル化できる情報は、等しく0円の時代がやってきた。
ネットがもたらした、極めて低コストの情報発信。そしてビジネスモデル。
前者のみであれば、新聞社だけでも対応は可能だったかもしれない。実際、ブログを開設して人気を博しているジャーナリストも多い。
が、後者は、かなりの問題だ。特に、池田さんの所の記事を読んで、もう重病だと感じた。彼らは、ビジネスにおいて、「高付加価値」型の製品を作ることに邁進してきたのだから、当然だが。
自分たちが、今まで、真の意味で競争というのをしてこなかったのだから、仕方ない。ビジネスにおける競争は、顧客が求める「高付加価値」と「低価格」をめぐって行われる。
「より低価格でよい製品・サービスを」
これが企業に求められるのだ。が、メディアは、再販制度や、他の参入障壁に守られて本当の意味での「低価格競争」をしてこなかった。同業社との「高付加価値競争」しか経験してこなかった。
ネットのジャーナリストさんのブログで「一次情報の価値」とか「記事の質」を問題にした記事を見かけるが、新聞をよりやすくします、あるいは価格破壊しますなんて論調はほとんど見かけたことがない。新聞を買ってほしい、読んでほしいという人はいるけど、そのために、低価格化を本気で訴える人がほとんどいない。
再販制度があるから仕方ないが最大の顧客の要望のひとつである製品・サービスの「低価格化」については、既存メディアは全くのところ、素人なのだろうと思う。彼らは、それを経験したことがないのだ。だから、低コストによるビジネスモデルの構築というところにまるで頭がまわらない。で、必死に再販制度を守ろうとしている。
だが、もはや、インターネットが閉鎖される見込みはないし、ブログやSNS、ポータル、検索システムがなくなる見込みもない。
低価格競争は、もうとめられない。
プリントメディアは、現状の競争が、今までの競争とは、土俵が違うという点を認識しているのかと、よく思う。
「低コスト競争」という土俵でも、ネットとは戦わざるをえない。この先、この戦いは延々と続く。こちら側をどうするかを、本気で考えないといけない。記事の質などの「高付加価値」競争も大事だが、新規参入のプレーヤーが現れた以上、「低コスト化」競争には否応なしに巻き込まれる。その相手と戦う以上は、「低コストのビジネスモデル」は急務である。
これがわかっていないと、自分たちの相手が、どの競争優位をもって戦いを挑んできてるかを、理解していないと、間違った戦略で相手に挑むことになる。低コストで戦いを挑んできた相手には、より低コストで戦う以外にはない。
今まで、プリントメディアは、馬鹿の一つ覚えのように「高付加価値」タイプのビジネスに邁進してきた。
よりよい記事を。よりよい漫画を。よりよい画像を。よりよい動画を。
だが、今回のグーグルとの戦いは違う。
グーグルに代表されるような、IT企業との戦いは「低いコスト」によって、収益は同じでも、高い利益を出すことを求める戦いである。そういう認識を与えてくれたのが、今回、書評した二つの書籍である。
新たな戦いはすでに始まっている。
最小のコストで利益を生めるビジネスモデルを巡る戦いである。そして、誰にでも使える表現のための道具を提供する戦いでもある。
高付加価値型の競争はすでにある意味では終った。あくまで、企業間の競争という意味でだ。そして、企業間の闘争では低コスト型の競争が、今の主戦場である。
最後の勝利者は、最小のコストで利益を生み出せるビジネスモデルを生み出した存在となると予想される。
現在、その旗手はグーグルであり、彼らの価値は、高い技術力の他に 極めて強力な低コストのビジネスモデルである。
梅田さんのいう、あちら側とこちら側をビジネスの観点から述べるのであれば高付加価値型ビジネスモデルに邁進するプレーヤーと低コスト方ビジネスモデルに邁進するプレーヤーの断絶といっていい。
よりよいモノをコスト、つまり金や時間をかけてつくろうとするプレーヤーと より低コストで、競争相手と同じモノを作ろうとするプレーヤーの違いである。
一般に前者のほうがビジネスとしては儲かるが、後者は、その性質からして破壊的である。なぜなら、市場に価格・価値破壊を持ち込むからである。
グーグルによる破壊については、特に、「グーグル Google」に詳しい。メディアとグーグルとの軋轢とのエピソードも体系化されて読める。
日本企業の問題が「こちら側」なのは、エレクトロニクス産業の多くが、「高価値付加タイプ」にあまりに邁進しすぎているからであり、低コストタイプのイノベーションに対して、あまりに無関心すぎるからともいえると思われる。
低コストタイプのイノベーションは、初期ソニーのお家芸でもあった。しかしながら、現状のソニーは、高付加価値タイプになっており、再び、消費者に低コストタイプの製品・サービスを提供する企業に戻れることはおそらくないだろう。一般に低コストタイプが、高付加価値型に移行することは容易く、高付加価値型が、低コストタイプに移行することは難しい。
なぜなら、「イノベーションのジレンマ」にあるとおり、高付加価値タイプは、必ず、価値とコストのトレードオフによる高いコストを払ってよりよい製品を作る方向で組織をマネジメントしていくからだ。
一方で、低コストタイプとは、より低いコストを達成することにより市場における価格破壊を引き起こすイノベーションを主軸とする。
価格破壊を最も嫌う高付加価値型のビジネスモデルは価格破壊による競争優位を作り出す低コストタイプのビジネスモデルとは、決して相容れない。
高い価値を作り出すためのイノベーションと低コストを達成するためのイノベーションは、産業の車輪とエンジンであり、この二つは、交互にお互いを補いあう。イノベーションのジレンマにあるとおり、高い価値を作り出しても顧客の利用能力を超えてしまえば、その価値を顧客は認めない。
よって、その時点から、競争の軸が、高付加価値から低コスト、低価格に移る。その時点から、競争は、低コスト競争へと移る。そして、イノベーションも又、低コストを達成するためのそれを作り出すプレーヤーが必要とされる。
そして、メディアは、まさのこの時期にあり、高コストになりすぎた、あるいはネットの登場によって相対的に高コストと認識されるようになった既存メディアビジネスは、低コストのプレーヤーにより破壊される危険性をはらんでいる。
何度もいうが、これは高価値を生み出す戦いではない。グーグルは、情報の世界の低コスト化を生み出すために存在する。それこそが、彼らの競争優位を生み出す源泉の一つである。これらについては、「ウェブ進化論」が詳しい。コストの問題について、多くのページが割かれており、チープレボリューションという言葉がしばしば出てくるのもこのためである。低コストによる市場の価格破壊について、梅田さんが、エピソードを交えて非常に鋭く分析している。
わずか5000人の会社が10兆円を越える時価総額をもつ会社グーグル。そして、その力はイノベーションを低コストへと振り向けることによって達成されている。高価値でなく、ユーザーに低コストを提供する会社。それがグーグルである。
知りたい情報など、図書館にいけば、大抵はみつかる。そこいらの人に聞いてまわるのもいい。だが、グーグルで検索すれば、そういった労力はほとんどいらない。
彼らが生み出しているのは、高価値の情報でなく、情報収集の低コスト化なのだ。何度もいうが、こういう低価格・低コストという形のビジネスモデルを構築したプレーヤーが現れた時には、既存プレーヤーは、最大の注意を払わねばならない。
なぜなら、彼らは、必ず、市場に価格破壊と既存プレーヤーの価値破壊を持ち込むからである。一旦、これが始まれば、その波は市場全体を巻き込む。破壊の規模は、とてつもない形になる。
ゲーム業界でいえば、中嶋さんのUIエンジンの考えはこれにちかい。縦の進化と横の進化という形で、中嶋さんは表現したが縦の進化とは、高付加価値型であり、横の進化とは低コスト型である。
縦の進化は、コストの増大を必然的にもたらす。その進化が限界まで来ると、今度は、横の変化、つまり、低コストを追及する戦いが始まる。高付加価値型イノベーションは、必ず、コストの増加による高コスト体質を企業にもたらす。
そういった進化が限界まできた時、低コスト型のイノベーションが現れ、そして市場に価格破壊を持ちこむ。
ゲーム業界の高コスト体質は、いずれ、低コスト型のイノベーションを生み出したプレーヤーによって破壊されるだろうと思うことがある。
実際、今、ゲーム業界は、その過渡期にあり、高付加価値型のゲームから低コスト型のイノベーションによる、低コスト競争へと軸足を移しつつある。
この勝者は、何度もいったように、最も低いコストで利益を生み出すことに成功したプレーヤーとなる。そのための、イノベーションを達成できたプレーヤーが次世代のリーダーとなるだろう。
低コストでスピーディーに。
これが、グーグルの競争優位を生み出す根源となるものである。グーグルの小さな組織ユニットと、スピードを最重要視する姿勢はこの競争優位を作り出す為にあるともいえる。小さな組織ユニットによる、時間・金の低コスト化。そしてスピーディな開発。現状のルールにあわせた組織文化である。
「ウェブ進化論」ではグーグルの組織マネジメントにもページが割かれているが、こうした組織マネジメントがビジネス的にどんな意味をもつのかと言われたら、僕は、上記のように答える。
グーグルの競争優位は技術のみでなく、低コストでも築かれている。既存メディアにおける高付加価値ビジネスモデルや、法・インフラによる参入障壁の時代を破壊するという結末を、これはもたらしかねない。
「グーグル Google」では、グーグルが破壊するであろう市場についての考察に第一章が割かれている。そして、第二章から第四章では低コスト化、チープレボリューションによって、恩恵をうけたニッチなプレーヤーのエピソードが載せられている。山崎夫妻、三和メッキ工業のエピソードは、その象徴であり、次の10年を占うエピソードでもあるだろう。低コスト化、チープレボリューションによって、飛躍するプレーヤー、そして、失墜するプレーヤーを何とはなしに予期させてくれる。
あちら側とこちら側。
それは高価値付加型に邁進し、その結果、価値とコストのトレードオフの結果、こちら側の高コスト体質になってしまった企業とあちら側の低コスト化によって、価格破壊を起こし、市場そのものを破壊しようとする企業の断絶となって「ウェブ進化論」に描かれているように思う。そして、実際に波にのったプレーヤーと、波に逆らおうとするプレーヤーの対比が「グーグル Google」には描かれている。
マイクロソフトとグーグル、そしてオープンソース勢の戦いの焦点はここになる。
これは、高付加価値ビジネスと低コスト化ビジネスとの戦いであり、その展望は、ある意味で絶望的なものである。今まで、何度と無く、高付加価値型ビジネスは低コストを武器に参入してきたプレーヤーによって破壊されてきたからだ。佐々木さんの本の「既存のビジネスを破壊する」という副題は、これを如実に表した言葉ともいえる。
差異化型ビジネスは、本質的に高コストになることを免れ得ない。価値とコストのトレードオフにより、より高価値な製品を作ることに邁進するからである。
ウィンドウズvistaは、このジレンマに陥った。より高価値な製品を作り出すことに邁進した結果、プログラムは長大化し販売時期は、どんどん延期されつづけている。
ウィンドウズは、かつては、誰にでもパソコンがつかえる世界を作り出すことを目的とした低コスト型のビジネスから始まった。が、今は、その面影を失い、より高い利益を求めて、自社ソフトに高価値を付加するビジネスに邁進している。
そして、結果として、高コスト体質を身につけてしまった。
オープンソース、そしてグーグルに代表される低コストのビジネスモデルは 高コスト体質の企業を打ち倒せる矛となる。マイクロソフトは、かつて自分が倒してきたライバル達と同じ運命を辿る可能性が高い。グーグルとオープンソースとは、そういうものである。
この動きは、延々と地下で進行してきたが、遂に、グーグルという形で一つの形に結集した。この先、もっと他の形でもあらわれていくだろう。佐々木さんの「グーグル Google」では、グーグルのルールにそって成功をおさめたプレーヤーの話が扱われている。このエピソードだけでも、これからネットを活用しようという人は、読んでおいたほうがいい。
ゲイツがグーグルを叩き潰せなかったのも、ある意味ではこれが原因だった。 新規参入のプレーヤーを叩き潰す方法は、差異化された製品・サービスではない。
低価格による価格戦争なのである。ネットスケープをMSが叩き潰せたのはウィンドウズに抱き合わせでIEを出し、タダでブラウザをばらまいたからである。
だが、MSは、それができなかった。これからもできないだろう。
なぜなら、グーグルは、タダで検索システムをユーザーに提供しているからである。それどころか、アドセンスでは、ユーザーにお金まで払っている。価格ではすでに競争できない次元なのだ。そして、そのビジネスモデル自体が破壊的なのである。すべての既存メディアにとって。
自分の敵が、全く異なる収益構造、低コストのビジネスモデルを確立した時点でビルゲイツとMSは、自分達の高コスト体質と競争力のなさに気付いただろう。ゲイツは気付いているが、既存メディアは気付いていないように思う。これは、ITからメディア、広告業界にまで及ぶ大きな破壊の流れなのだが。
ネット発のソフト・サービスは0円という時代。
誰でもコンピューターをもてる時代が終わり、誰もが、コンピューターを使って何かを生み出す時代へという一つのパラダイムシフトの転換に伴ない、必然的に起こるべくして起こった波ともいえる。そして、それは、悲しいが、既存のメディアビジネスモデル、そして高コスト体質の企業を破壊することになるだろう。
次の10年というのは、僕の理解では低コストのプレーヤーによる高コスト体質のプレーヤーの破壊だ。
メディア産業全体をこれが襲うのは想像に難くない。コスト構造の変化は、否応なしに、今まで、産業に大きな波をもたらしたからだ。
コスト構造の変化は、その後の長い長い断絶の時代への幕開けとなる。
高価値付加型のビジネスモデルによる競争でなく、低コストビジネスモデルでの競争という変化がそれを後押しする。
企業間競争は、再び、血みどろの戦いにはいった。インターネット、オープンソース、チープレボリューション。それらは、競争の原理すら変えてしまう。
コスト構造が不可避的に変化するからである。
永遠にではない。ルールがいつかは変わるまで。
Vistaは高付加価値商品というよりは、「OSに必要なものってなんだ?」を突き詰めていった結果の完成系で、「カーナビとスレテオコンポと(その他色々)等を積みまくった車」ではなく「必要に応じて積めるようになった車」のようなものかと…
あと、個人的な感想なんですが
googleのニュースや地図等の新サービスって、先を見据えた戦略商品に見えてこないんですが…
本読んでこの認識変わるのかなぁ…
みなグーグルが検索エンジンでシェアがあることを前提に議論をしているが、検索エンジンのテクノロジーによってひっくり返る可能性があるのでは?
そのあたりは、本をお読みいただけるとよろしいかと。
>>ばばさん
新しいルールをひっくり返せるくらいのテクノロジーがでてくれば、又、話は違ってくると思います。
グーグルは頭のいい人を大量に雇い、研究開発投資もかなりの額になると思うので、コスト体質としては、本来は高コスト体質であると定義するのが正しいと思います。
低コストビジネスモデルといった場合、貴殿も書いている通り、通常は人を少なく効率をあげ無駄なものを省くことで低コストを実現し、売価も下げるといったことをします。
グーグルがそれをしているとは思えないので、拝読してまして、ちょっと違和感を覚えました。
グーグルのビジネスモデルは、既存のモデルと切り離して(というか、ロングテールになるんでしょうが)、論点を整理しないと、理解できないのかもしれません。
確かに、グーグルの人は高価ですが、代わりに物凄く人が少ないんです。売上に比べて。たった5000人ぽっちしかいないわけですから。
売上6,138Mドル、純利益1,465Mドルの普通の会社なら、連結含めて10万人単位の雇用を生みますし、そのくらいの人が必要なのが普通なんですが、ここでグーグルはかわりに30万台のコンピューターを使ってるわけです。
ネットによる安価で効率的なターゲット広告を最新技術を使って配信し、機械化で人件費を極限まで下げ、根幹となるコンピューターシステムを自作することで低コストを実現しているわけですから、グーグルのビジネスモデルは、やはり低コストを主軸としていると僕は思うわけです。
既存の広告代理店やメディアとの、この部分でのコスト差は、相当なものだと思われます。
あと磯崎さんのブログでグーグルの財務分析も出ていますので、そちらもどうぞ。↓
http://www.tez.com/blog/archives/000676.html
>確かに、グーグルの人は高価ですが、代わりに物凄く人が少ないんです。売上に比べて。たった5000人ぽっちしかいないわけですから。
メディア業界では、これぐらいの売り上げ・人数比率は極端に高いという訳ではないと思いました。
例えばリクルート:
従業員数
5,873名(2006年4月1日現在)
売上高
4,078億90百万円(2005年3月期)
経常利益
1,223億76百万円(2005年3月期)
新聞社、TV局、電通なんかも似たような比率だったはず(ただし利益率はまちまちですが)。
単に業界特性と言うことであって、私がグーグルの利益体質を否定するものではありません。
リクルートの従業員数は正規職員以外の
非正規職員も含まれていますか?
グーグルにも非正規職員はいると思いますが、
マウンテンビューにはあまりいないのでは
ないかと思いますよ。
新聞社、TV局など、周辺の非正規社員を
いれるとかなりの人数になりませんか?
現に、今googleは猛烈な勢いで社員を増やしており、人材募集中の、空のポストが1000以上あるといわれています。
googleの経営方針が少数精鋭というよりも、単にgoogleが求めるレベルの人材の獲得が(googleの成長に比べ)間に合っていないだけではないでしょうか。