前回のコラムで、mattyanさん、REVさんに、
こちらの記事をご紹介頂きました。
有難う御座います。
サウサンプトン大学チームが登場するまでは、安定してゲームをものにしていたのは、「しっぺ返し」と呼ばれる戦略だった。この戦略では、プレイヤーの最初の選択は、必ず相手のプレイヤーと協調する。その後、プレイヤーは相手がどんな選択を行なっても、それに追随する。この戦略は、冷戦時代に核兵器を保有する大国が採用していたものと似ている。つまり、相手が核を使用しない限り、こちらも使用しないと両者が約束するのだ。
前回、紹介した「しっぺ返し」戦略が、とうとうチャンピオンの座から
引きずり落されたという記事です。
その戦略とは、
各チームは、複数の戦略、複数のプレイヤーを送り込むことができる。サウサンプトン大学チームは、60のプログラムを用意した。ジェニングズ教授の説明によると、それらはすべて、ある1つの戦略を少しずつ変化させたもので、あらかじめ決めた5から10の選択を行ない、プレイヤーは互いにそれらを認識できるようにプログラムされているという。サウサンプトン大学チームのプレイヤー同士が互いに相手を認識すると、2人はすぐに、「主人と奴隷」の関係になる片方が自分を犠牲にし、他方が繰り返し勝てるようにするのだ。
といったものだそうです。
各チームは複数の戦略と複数のプレーヤーを送り込めるところがミソです。
ジェニングズ教授は、ある特定の5〜10の選択をおこなって
相手がサウサンプトンだと認識し合うと、主人と奴隷の関係となり
片方が自分を犠牲にして、相手に利得を稼がせるプログラムで
サウサンプトンチームから一位のプレーヤーを出したわけですな。
サウサンプトンにしても、奴隷となったプログラムは
最下位近くになることは明らかなわけですが、
実は、このゲーム、最終目的としてチームの誰かが勝利すれば
いいのであるとすれば、個々が犠牲になってもいいわけです。
ジェニングズ教授は、チームのだれかが一位になりさえすれば
いいという戦略で、「しっぺ返し」戦略を一位の座から引きずり落したわけですね。
6人のチームであれば、5人最下位になっても、残りの一人が
チャンピオンになればいいわけです。この手の大会は一位になった
チームこそがすべてを手にするわけですからね。
しかも、チームの総合点が一位になるのでなく、
チームから一位が一人でればいいんです。
チームを組んだ誰かが勝てばいいという状況においては、
こういう戦略が現実世界でもしばしば取られます。
勿論、チームの勝利には犠牲が必ず伴ないますが。
囚人のジレンマは、利己的な二者が協力不可能な状況で
競争する場合においてのみなりたつものであり、
二者が何らかの形で協力するインセンティブ、
協力可能な手段がある場合においては、状況が変わります。
自由競争とは、協力しない利己的な二者が
競争する場合になりたつものです。
その場合、一番得をするのは消費者となります。
囚人のジレンマで、一番得をするのが警察なのと同様です。
かならず、企業は、囚人のジレンマに陥り、血みどろの価格競争へと
突き進まされるからです。
一方で、二者が何らかの形で協力するインセンティブ、
協力可能な手段がある場合、警察、あるいは消費者は悲惨になります。
この戦略の代表例は実世界だとカルテルだったり、談合だと思われます。
例ですが、100の企業が一つの国からの工事を
オークションで競いあう状況がこれから100回続くとします。
最初はお互いに最高限度額まで競いあう状況が続くでしょうが、
ゲームは次第に、裏切りから協調へとなっていきます。
しっぺ返し戦略をとるプレーヤーが増えるからです。
しかし、それでも、国が一番得をすることに変わりはありません。
ここで出品者に常に都合のいいルールに頭がきたプレーヤーが
20社くらいと協力して、チームを編成したとします。
そして、オークションの平均落札価格を二倍まであげます。
その場合の損失は、20社で共同して負担します。
他のプレーヤーは当然、価格が高すぎて落札できません。
そして、最終的には、工事を落札できずに、ゲームから離脱するか
協力しているチームに入るしかなくなります。
結果、20社と加わった仲間のみが残ります。
チームが市場を独占した時点で、最低落札価格で
工事を落札していきます。
そして、市場に新たなプレーヤーが現れたら、
又、価格をつりあげて、プレーヤーを追い出し、
追い出したら、最低価格の落札をくりかえす。
こうして、談合が永続する仕組みが出来上がるわけです。
ゲームとして、一位になりさえすればよいという状況から
プレーヤー同士が協力してチームを編成し、
チーム内では協力し、競合者はチーム全員で叩き潰すという
戦略がここで最適化するわけです。
最終的には、しっぺ返し戦略も、談合戦略も
(協調、協調)になってしまうのが面白いかなっと思いました。