このブログの人気エントリを読みたい方はこちら
もう一つのブログはこちらです。

2006年03月12日

ボーダフォン買収雑感

乗り遅れたけど、SBによるボーだフォン買収の雑感。

まず、これについては、最初に
番号ポータビリティ開始が今年11月1日だって事に注意を払う必要があると思う。
ま、みんな、そう思っているだろうし、知っている人が
ほとんどかもしれないけど、ポータビリティについてまず、説明。


番号ポータビリティってのは、携帯の番号を変えずに
他社の携帯へと機種変更が可能になるシステム。
(メールアドレスは変わってしまう)

今までは、ドコモからauに変えると、携帯の番号が変わってしまう為に、
いったん、一つの会社の携帯を使い始めてしまうと、
変えづらかった。なんせ、一度携帯を変えたら、もう一度、
友人・知人に携帯の番号を入力しなおしてもらわないといけない。


こういう状況であった為、今までの携帯電話のシェア争いでは
顧客のロックイン効果が高かった。
他の会社で魅力的な機器・サービスが開始されても、
簡単に携帯を乗り換えるというわけにはいかなかったのである。


こうした、ロックイン効果が高い場所では、
(要するに捕まえたお得意様が離れにくい市場)
いったん、客を捕まえてしまえば、後のサービスに
さほど気をつかわずにすむ。ロックイン効果が高いので
客が離れていく危険性が少ないからだ。


ところが、番号ポータビリティの導入以降は、このロックイン効果が
薄れる。囲い込んだ乳牛が垣根を越えて、他の牧場に行ってしまうような
形に市場が変化する。


そういう場合、どうなるか、というと、
垣根が意味をなさなくなった以上は、他の何かで、乳牛を自分の牧場内に
とどめ続けばならなくなる。


結果としてどうなるかというと
サービス・機種の機能性・料金・信頼性・機種のカスタマイズ
といった他社との差異化要因が以前より重要になる。
これのどれかに強みをもっていない会社は
(ユーザーがどれを評価するにもよるが)
ロックイン効果が薄れる番号ポータビリティ導入以降、簡単に
ユーザーという乳牛を失うことになる。


ボーダフォンは、日本市場において、
上記のいずれにも強みがなかった。
要するに、番号ポータビリティ導入以降、
やっていける保障はどこにもなかったんである。


で、今回のSBによるボーダフォン買収となった運びにみえるのだが
これが、意味するところは何かというと、携帯業界全体の
バリューチェーンの分解と再統合といったところではないかと思う。


つまりだけれど、今までは、携帯電話というには
一回、サービスに新規ユーザーを加入させさえすれば、
あとは、ロックイン効果が強く働くので
(携帯番号を変えるわずらわしさから他社へと移行するユーザーが少ない)
新規ユーザー獲得に非常に重きが置かれていた。

で、戦術としては機種における機能面をアピールする方法や、
機種の価格を低価格あるいは0にして、月々の課金で回収したりするプランなんかが
よく取られていたようだけど。


番号ポータビリティ移行は、まず、後者の戦術は
使いづらくなるんじゃないかと思う。

理由は、単純で、顧客のロックイン効果が薄れてしまう以上は、
機種を低価格あるいは0にして、月々の課金で回収するプランは
取りにくいと思われるからだ。これは、ロックイン効果が高いから使える
方法であって、簡単に顧客が他の会社に逃げてしまう状況では使いにくい。


となると、機能面での差異化戦術はともかくとして、
低価格で勝負するには、携帯端末をモジュール化するか
海外の低価格端末などを導入するかといった形に変化するものと思われ。
あるいは、通話料・基本料を下げるなどして、垣根を越えて乳牛が逃げないようにするか。
(最後のは、通話料・基本料を下げるかわりに、他のサービス・コンテンツで金を取るしかないのでサービス面に強みをもっていないとできないと思うけど)

番号ポータビリティの導入は、既存の携帯事業から
顧客のロックイン効果を削ぐ。
結果として、ユーザーの流動性が高まり、選択肢が増えることになるから
サービス・機種の機能性・信頼性・機種のカスタマイズなどにおける
差異化と低価格化の競争は激化する。

SBが、ボーダフォンを買収した場合に、強みとできるのは、
ポータル事業や、大量のコンテンツを含めたコンテンツ面で
あると思われるので、ボーダフォンの事業をサービス・コンテンツ面から
再統合するだろうと思われる。


顧客のロックイン効果が薄れた以上は、
各携帯電話会社は、それぞれ、自社の得意とする分野・あるいは将来重要になると思われる
事業を中心として事業のバリューチェーンを再統合し、
顧客が評価していない分野は切り離してアウトソースしていく方向へと
動いていくだろうと思う。


SBのボーダフォンの買収は、その始まりだと思うし、
今後、そういう風な分離と統合の動きが業界内で進んでいくんだろうと思う。

いずれにしろ、顧客のロックイン効果が薄れる以上は、
ロックインした市場内でのみ通用する誰でも作れる程度の技術で
やっていたプレーヤーは、次々と消え去っていく運命には変わりないように思われる。

逆に、携帯機器の機能面や、サービス・コンテンツ面において、
重要な能力をもつプレーヤーは、市場における顧客獲得や契約継続に
関して、非常に強い影響力を以前より持てる。特に、顧客の流動性が高まる
以上は、顧客を一つの場所にとどめ続けることができるサービス・コンテンツ・機能を
提供できるプレーヤーはより強い価格決定権をもてる。


携帯電話においては、今、水面下で動いてる流れとして、
携帯電話の製造におけるモジュール化の流れがあるように見えるけど
これは、又、今度、機会があったら。

あと、ファイナンス面に関しては

ITAKURASTYLE「おーい日本経済新聞さんよぉー」

がわかりやすいと思ったので、そちらをどうぞ。


おわり。







posted by pal at 05:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック