finalventさんの記事に関連して思うことがあったので、ちと便乗。
というか、簡単に自分で調べた事をメモ的にかいておくだけなんだが、
関東大震災の朝鮮人虐殺とルワンダ虐殺、
それから今回例にだすポグロム(19〜20世紀ロシア・東欧でのユダヤ人虐殺)には
幾つかの共通点と相違点がある。
それをちょっと並べてみる。
第一の共通点は、民間組織ないし、ただの民間人によって
いくつかの虐殺が行われた事。
関東大震災の朝鮮人虐殺は、
戒厳令司令部告諭により各地に作られた自警団によるものが
主因であったようだ(あくまで政府発表の資料によるもの)
そして、関東一円で3238の自警団が組織されていたようだ。
ルワンダの虐殺も、ホテルルワンダが、
民兵に襲われたホテルを舞台にしているのと同様に
民兵によるものがかなりの部分を占めているといわれる。
が、最近では軍や警察による組織的なものとする説もある。
今度、関連書籍を読んでみようと思う。
そして、ポグロムにおいても、同様に、民間人による
ユダヤ人虐殺が行われている。
第二の共通点だが、虐殺に関連した経済的利害が存在するように見える事。
まず、大学の頃にかじった知識で述べれる
ポグロムから例をだすが、第一次ポグロムと言われる1881年のポグロムでは
ポグロム参加者は、都市下層民、農民、コサックなどが大半を占めた。
第一次ポグロムは、南ウクライナを中心として起こったが、経済的利害を
原因としてあげるならば、当時のロシアにおける穀物価格の騰貴、
ユダヤ人資本家への敵意、そして、ユダヤ人とウクライナ人双方の
都市下層民同士の職を巡る争いが上げられる。
都市におけるポグロムにおいては、経済利害の関係は無視できない。
で、ルワンダの虐殺になるのだが、多数派のフツ族側においても格差が存在し
大統領の庇護をうけた裕福な北部のフツ族とたくさんの貧しいフツ族農民が存在していた。
政府及び大統領は彼らが貧しい原因をツチ族のせいにし、
彼らの不満がツチ族に向かうように仕向けた。
これが、ツチ族虐殺の一つの原因となっているという事だそうだ。
経済的利害の対立が、ここでも見られるのである。
で、最後に関東大震災における朝鮮人虐殺になるが、
自警団の構成員は、在郷軍人会や、消防署などの青年団の他に
都市貧民層・農民等といった社会の下層民がいた。
そして関東大震災当時の自警団による朝鮮人虐殺には
当時の構成員である都市下層民と、朝鮮人という格安労働力との間の
経済的利害の対立が背後にあるのではないかと思われる。
当時の日本国内における朝鮮人の賃金は、
日本人最低ランクよりさらに低い5〜7割程度だったようだが
このような格安労働力が入ってきた場合、どこかで誰かが失業する事になる。
このあたりはどこの国でも、下層民同士の争いの原因に発展しやすい。
これが火種の一つではないかというのが、自分としての仮説である。
あくまで仮説にすぎないが、宗教的対立原因が
当時の日本人と朝鮮人の間にない以上は
経済的な原因がある程度背後にないと、この虐殺、
僕には納得できないのである。
っつーか、資料なさ過ぎてはっきりした事はいえんね。
ネットで調べると
どうも
・殺された朝鮮人の数
・軍の関与
に関して、議論があり、はっきりした事がわからない。
また自警団の構成員に関しては、はっきりした資料が
見つからなくて、困った。ネットの限界かな。
真面目に議論するなら、自分で資料探さなきゃだめだね。
第三の共通点。
第一次ポグロムの多くが「皇帝がユダヤ人に殺された」という噂から始まった事。
ルワンダ虐殺が「大統領の暗殺」から始まったこと。
関東大震災の朝鮮人虐殺が「朝鮮人が井戸に毒を入れた」という噂から始まった事。
要するに、なんらかの形で、相手民族への暴力の免罪符が与えられているのである。
一種の血の復讐に近いようにも見えるが。
次に、それぞれの特色を述べるとこうなる。
まず、ポグロムに関しては、
それは宗教的側面を色濃くもっていたという特色がある。
(キリスト教圏ではユダヤ人は、キリストを殺した民族として疎んじられ続けている)
第一次ポグロムにおいては虐殺が起こったのは、
復活祭がおこった週であり、シナゴーグと教会のある町の中心部で多くが発生している。
また、伝統的反ユダヤ感情が農村部のポグロムにおいては、
主因となっている事も見逃せない。
さらに、第一次ポグロムに関しては、自然発生的なものであったが、
後の、第二次、第三次ポグロムに至ると政府の関与が色濃くなる。
そして、それに伴って、ユダヤ人の犠牲者の数が飛躍的に増える。
とはいえ、ウクライナ部隊によるポグロムのスローガンが
「ユダヤ人とブルジョワジーを打倒せよ!」
であった事を見る限り、そこにもやはり、経済的利害の対立は
見逃せない側面となるのだが、それと反ユダヤ感情という宗教と
結びついているのが、ポグロムとユダヤ人迫害の特色となる。
ルワンダ虐殺に関しては、かつては同じ言語を話し、
境界が曖昧で、牛をもてばフツ族もツチ族として認められたという
変動可能な民族システムが列強の進出と共に、民族主義が高揚し、二つの民族の間に
存在していた変動可能な民族システムが失われた点に特色があるように思う。
かつては、この二つの民族の垣根はひどく曖昧で、言語すら同じであったのに
年月を経て、このようなジェノサイドに発展したのである。
その意味では、ドイツのユダヤ人虐殺と似ている。
ドイツは、19世紀を通じてユダヤ人達が繁栄し、
世界的にも重要なユダヤ文化の中心地であった。
広範囲において、同化が起こっており、
経済的にも社会的にもユダヤ人は貢献していた。
第一次世界大戦にもドイツの10万人以上のユダヤ人が参加し
一万人以上が戦死している。
そんなドイツで、世界史上、稀にみる大虐殺が起こったのである。
原因は色々あるが、歴史的に見て、もっともユダヤ人が
文化的に溶け込んだ地域において、大虐殺がおこったと言う点には
特色があるのではないかと思われる。
そして、また、将来への警告でもある。
で、関東大震災時における朝鮮人虐殺に関してだが
上記にあげたような二つの虐殺と比べると、軍部などによる
関与の割合が低い。あくまで、政府公表の資料からによるものだが、
朝鮮人虐殺の多くは、自警団によるものとされている。
はてB経由で
朝鮮日報 関東大震災直後、300人の朝鮮人を守った日本人警察署長
って記事が回ってきたが、これ、朝鮮日報が伝えるには珍しいかもしれない。
同じ警察でも、日本の新聞記事に、当時、官憲が虐殺に加担していたって
記事が残っているようだからだ。
関東大震災時における朝鮮人虐殺は、
宗教的側面を除けば、第一次ポグロムと非常に似ているともいえる。
第一次ポグロムは、第二次、第三次のような政府の関与が色濃くなるソレと比べると
虐殺された人数が少なく、また、1日か2日で終わっている。
関東大震災におけるそれも、組織的に動いたと思われる軍部による
虐殺例が少なかったようなので、虐殺された人数が少なく済んだのかもしれない。
もっとも、政府公表の資料を信じればの話なのだが。
政府公表の資料を信じる限りでは、虐殺されたのは2〜300人だし
その後の調査では、max6000人まで、その数が広がっている。
手に入る信頼に値する資料が残されていない以上は、
何人殺されたのかは闇の中である。
最低300人〜最大6000人程度というしかない。
で、次になるが、差別意識が国家によって
意図的に煽られているかどうかという点がある。
ルワンダでは、フツ族上層部や列強による
差別意識の高揚が行われ、ツチ族との対立が意図的に煽られていたようだし
ポグロムにおいても、第二次以降においては、政府が意図的に
革命運動を制止する目的で、反ユダヤ主義的内容を書かせていたようだが
(不満の捌け口をそっちに向けるやり方である。ユダヤ人陰謀論というのは
この頃は、こういう目的で使われたようだ。つまり、政府への不満をユダヤ人へと
向けるよう仕組まれたわけである)
日本における朝鮮人差別・嫌韓において、どの程度、政府の関与があったかは
資料の問題から、判別が難しいようだ。その為、諸説ある。
日本には朝鮮人を差別する用語があるのは明らかで
嫌韓もネットでよく見かけるが、それが昨今の
政府への不満を国内の少数民族へと転化するという
典型的なプロパガンダ手法によるものかそれとも、
単に自然発生によるものなのかは、正直、よくわからない。
結局、関東大震災時の朝鮮人虐殺において
政府が仕組んだのか、そうでないのかや軍による虐殺がどの程度あったのかは
決定的な文書が残っておらず、証言などからしか伺い知ることができないようなので
立証が難しい。要するにグレー。だから、立場によって意見が異なっているのが
現実なように思われる。
まぁ、知ってる限りで、色々と並べてみたが、
みっつの虐殺は知った限りの知識では
「共通点は明らかに存在するし、相違点も存在している」
という玉虫色の発言しかできない。