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2006年01月22日

マッシュアップ戦略でヤバイのはどっちだ?

Web2.0 マッシュアップ時代への警鐘

ちと、GMOの熊谷さんのブログで面白い記事が出てたんで
それについて扱ってみる。


マッシュアップ--仮想空間と現実をつなぐ地図


こっちは熊谷さんの記事でも扱われているマッシュアップについての
CNETの記事。

噛み砕いていうと、マッシュアップというのは
「複数のソースから提供される部品を組み合わせ、
ひとつのサービスとして利用することを
可能にする」事。

記事で扱われているように、グーグルアースと
外部の不動産データと組み合わせる事により、
売り出し中の物件がサンフランシスコ周辺の
どのエリアにあるかをすぐにわかるようにしたサービスは
その代表例。



これ自体は、そう珍しい事ではなく、どの分野にも
見られる事で、大抵、それぞれの産業分野で、誰かが
マッシュアップをやっている。

というか、
「独創的なアイデア=既存のアイデアの組み合わせ」
が、アイデアというものの本質なので、
使う基準次第では、新しく生まれる全ての財・サービスは
全部マッシュアップともいえるんだけども。

マッシュアップが盗作と違うのは、
盗まれる側が、盗む側に対して
「どうぞ盗んでください。」
と許可を与えているところ。

「盗ませる」事で、いや、盗むだと印象が悪いから
「利用してもらう」にするか。

この場合、許可する側の意図としては
「利用してもらう」事で、自分達のサービスをさらに
発展させ、さらに自分のサービスの価値を高める事を
目指す。



最近のネット企業だと、これを積極的にすすめる企業が多い。


で、熊谷さんの記事だと、
このITにおける「マッシュアップ」、つまりは
ヤフーやグーグルが公開しているAPIを利用して
サービスを開発することが
ヤフーやグーグルを太らせるだけで
サービスを開発する会社は、いわゆる「タイヤキの尻尾」しか
もらえないんだよ、という事を指摘しているように
感じました。

ただ、これは企業の成長と市場の変化の変遷を
説明しきっていないと感じたので、その部分について、
個人的に補足しておこうと思ったのが
今回の記事を書いている動機。


まず、熊谷さんの記事の引用から入らせていただくが

事業や、物事には一番重要な「ポイント」が必ずあります。いつも、「ポイントは何だ?」を口癖にして、「ポイント」を見極め、対処し、「ポイント」を外さないようにしなければなりません。


これが大事だが、もっと大事なのは、「ポイント」は常に変化の力に
さらされているという点だと思う。

「ポイント」を見つけたとしても、それは、時間がたつと
変化してしまうのだ。これは、市場の競争のルールが変化する原因ともなっている。



まず、状況を整理しよう。
何故、グーグルやヤフーは自社のコア技術の一つであるAPI公開に踏み切ったのか?
ここを個人的にまとめてみたい。


まず、何故、この時期に、ネットの巨人二社が自社のAPI公開に踏み切ったか、だ。
これには、僕個人として、理由をあげるなら、
「チープ革命」
を挙げる。

つまり、サーバー代が安くなり、資本量、スキルの劣った生産者でも
簡単にwebサービスを作れる時代がやってきたことが挙げられる。

これは、ルールが変わる一つの前兆である。
つまり、全てはコストの問題なのである。
とてつもなく安いコストで、今まではできなかった事が
できるような手段が出現する時、それは、多くの場合、
市場に断絶の嵐が吹き荒れる予兆となるのだ。


ネットが普及し、回線が太くなり、個人で安価なサーバーを運営することが
苦でもなくなってきている。これは、ルールが変わる前兆だ。

誰でもとまではいかないが、ちょっと技術をもっている人なら
誰でも簡単にネットサービスを作れる時代になりつつあるのである。

自動車を例にあげるなら、初期の自動車は、ほとんどがオーダーメイド状態で
一つの自動車を作るのに、とてつもない熟練が必要だった。
千個以上の部品を組み立てる技術をもつ技術者が必要だったからだ。


それをブレイクスルーしたのがフォードであり、
彼は、さほど技術をもっていなくとも、「流れ方式」によって
大量の安価な自動車を生産することに成功した。


その結果、自動車業界は様変わりしたのである。
そして、これは馬車の死を告げるイノベーションともなった。



重要なのは、馬車が、フォードT型に比べて劣っていたという点ではない。
むしろ、最高級の馬車は、この時点で、フォードT型に様々な性能で
勝っていたといっていい。

だが、低価格で圧倒的にフォードT型は優位にたった。
そして、それだけで、フォードは、馬車を駆逐した。



ここで、大事なのは顧客が重要視している「ポイント」を
企業が「叶えてきって」しまうと、それは、勝負のポイントでは
なくなってしまうという点である。


馬車の乗り心地や、利便性は、その時点で、もうイノベーションが
起きようも無いほどに洗練されていた。

だから、そこが勝負のポイントにはならず、フォードT型が持ち込んだ
新しい評価軸である「低価格」が圧倒的な牙を剥いた。


技術というのの多くは、

機能性

信頼性

利便性

低価格

の順で顧客が評価する軸が変化する。
ポイントは、その市場、状況、顧客のセグメントにおいて、
一つの技術が、顧客が欲するどの部分を満たすのに役に立つかである。

そして、一つの市場の全ての顧客セグメントで
財・サービスを「低価格」でしか差別化できなくなった時、
もはや、その市場からは、魅力的な利益を得る事は不可能になるという
事も同時に覚えておかねばならない事でもある。


ヤフーやグーグルが、API公開に踏み切ったのは
上記のような理由からと思われる。

つまりなのだが、検索などの「利便性」「信頼性」「機能性」が
主流顧客層の満足度の上限を突破しはじめたという事だろう。

そして、それはすなわち、もはや、技術力で差別化するのが
難しくなり始めているという事でもある。

グーグルが新サービスを矢継ぎ早に繰り出し、
ヤフーが買収に積極的に打って出ているのは、
彼らが、危機的状況にあることの一つの証明ではないかと
思っている。

つまりなのだが、彼ら自身が、自分達の「金のなる木」の寿命を
他の誰よりもわかっているのだ。

「金のなる木」はいつかは枯れるのだ。
そういう風に市場は出来ている。

だから、定期的に新しい種を蒔かないといけない。

種まきをしなければ、いずれは死ぬ。
育成に失敗しても死ぬ。

やらなければ死ぬだけなのだ。


マッシュアップや、グーグルやヤフーの行動は、
それなりに理解できる。
彼らは、今、危機的な状況にいると考えているはずだ。
少なくとも経営陣は。

IT業界は、他のどんな業界よりも変化のスピードが速い。
次に金の向う場所を見定めて、滑走していけない会社は
あっという間においていかれてしまう。


マッシュアップというのは、すなわちだが、
大木を切り落とす木こりの斧の音のようなものだ。

これが出始めたという事は、ヤフーやグーグルの覇権が
完成したことを示すシグナルであり、そして落日への予兆でもある。

それを回避できるかどうかは、APIを公開した上で、
次に伸びてくる技術を、彼らが上手く取り込めるか否か、
あるいは、自分達で、次の「金のなる木」を育てられるかどうかだと
思う。

APIを利用してサービスを作る会社は、最初は、グーグルやヤフーの
為に働いてもいいと思われる。問題はその後だ。

ヤフーは、グーグルの検索エンジンを使用していた時期がある。
その時期まではグーグルとヤフーの仲はそう悪いものではなかった。

ところが、グーグルが検索エンジンのOEMから得たデータで
広告事業へ参入し、検索連動型広告で大成功するに至り、
ヤフーは自分が孵した卵に入っていたのがドラゴンだった事に気付いた。


サービス会社は、最初から、列強と戦ってはいけない。
最初は、実は、共闘するというか、自分と相手が
winwinの関係になるのがベストである。
そうしながら、市場のバリューチェーンにおいて、
自分の製品が、最終消費者にとっての差異化要因の決定要素になる
ように、戦略を進めることに成功すれば、小が大を食う事もありえる。
グーグルがやったように。

テクノロジーにおけるマッシュアップというのは、
一つでは「強者による弱者の利用」であるが
もう一つでは、「下克上」のチャンス到来の前兆でもあると思う

いじょ。




posted by pal at 22:47 | Comment(2) | TrackBack(5) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
この記事へのコメント
興味深い文章でおもしろいです。ひとつ下克上のところでグーグルとヤフーの例があがっていますが、これはちょっと違うような気がしまして、、、グーグルは他人(Overture)のバットを担ぎだして大ホームランをかっ飛ばしたわけですが、人のアイデアを元により早くスマートに動いたから成功したのであって、「検索エンジンのOEMから得たデータ」を利用して使う側と使われる側の関係を逆転させたわけではないと思います。しかも後になって訴えられてOvertureの特許に対して多額の費用を払っていますし。そんなわけで、これを例として、マッシュアップ→下克上と繋げるのは少し説得力に欠けるのではと思った次第です。
Posted by 通りすがりのものです at 2006年03月07日 01:03
>>通りすがりさん
そのあたりの事情は知りませんでした。
もっと僕は勉強しなきゃいません。
ご指摘有難う御座います。
Posted by pal@管理人 at 2006年03月09日 23:48
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