ちょっと人類学の本を漁っていた。
知りたいテーマは、浮気、不倫、離婚とは
生物的に見た場合、それはどのような意味を
もつのかという点にある。
日本の一般道徳では、これらは、非道徳的、あるいは
悪と認識されている。
が、浮気、不倫、離婚は、どの時代も常に存在してきた。
また、風俗も同様である。
僕個人は、常に、文化・社会によって
自然、つまりは人間のもつ生物的本能を押さえ込むのは
限界があると思っている。
また、例え、非道徳的であろうとも
長らく存在してきた習慣には人間本来がもつ
本能の部分での裏づけがあるはずだとも。
そういう観点から、今回のコラムは進めるので
「愛」という言葉に神聖かる不可侵なイメージを
もつ人は、不快になるかもしれないので
読まないほうがいいかもしれない。
このコラムでは、愛という言葉は、
生物的、あるいは人類学的観点から
「子孫を残そうとする人間の本能」から
派生した二次的なものという位置付けを行う。
神聖かつ不可侵なものではない。
子孫を作り、種の保存をするために
人間に備わった自然の本能であるとする。
これが前提なので、
それを受け入れることができない人は
悪いがさっさとお引取り願いたい。
人類学的に使いフルされた言い回しをするならば
人類は「裸のサル」にすぎないからだ。
受け入れれない人も多いんじゃないかと思うし。
では、本題に入る。
性について考える時、
人間のオスは性について積極的であり
メスは受け入れる側であるという観点がある。
だが、これは受け入れがたい。
人類学のいくつかの研究では
各文化圏において、女性が男性と同じくらい
性について積極的である事が明らかになっている。
実際に、ブログ界隈をみていても
女性は恋愛についてエントリを書く事が多い。
また、バーや他の場所で、女性と男性のうち、
どちらが誘いの合図をかけるかというのを
調査した結果、3分の2は女性がゲームを始めた事が
明らかになった。
女性の多くが、相手を意識して会話に誘い込み、
さりげなく相手にさわったり、さりげない質問を
装って男の気を引く行動を(この戦術は実に多様だが)
とっていた事が確認された。
結論をいうと、女性というのは性に対して
非積極的であるという観点は
ほとんどの場合、幻想であり、
どの文化圏においても
男性と同じくらい(あるいはそれ以上に)
性に対して積極的であるという事である。
さて、ここで、他の猿ではどうなのだろうか?
人間はハダカの猿である以上、同じような行動は
他の猿にも見られてもおかしくない。
その事例をあげると真っ先にあげられるのが
チンパンジーである。
人類の女性の積極的性行動は、実は、他の類人猿の
行動の反映でもある。
人類以外の類人猿のメスには、すべて「発情期」があり、
その期間の類人猿のメスは、極めて積極的にオスを誘う。
これはメスの誘導行動として知られる。
発情期のチンパンジーのメスの行動は
大胆である。オスに近づき、尻をオスの顔の前に突き出す。
そうやって誘惑し、交尾する。
一匹がすむと、群れの他のオス全部と交尾する。
交尾の8割は、メスからの誘惑によって始まる。
メス犬も発情期には、つまりさかりがつくと
もう最悪である。オスよりもタチが悪くなる。
メスが性的に積極的なのは種としては
極めて合理的な事である。
メスが子供を産まなければ、種は滅びるからだ。
女は誘いを待つべきという考え方は、
生物界ではメジャーではない。
そんなんでは種の保存が上手くいかない。
だからこそ、メスのチンパンジーは発情期には
積極的にオスを誘うのである。
ここで、チンパンジーのメスが、オス全員と交尾することを
おかしな事と思う人がいるかもしれないが、
これは、実は、チンパンジーのメスにとっては
重要なことである。
理由は二つ。
まずは♂による子殺しを防ぐ為である。
ライオンは、ハーレムを作るが、時々、
そのハーレムのオスが、他の若いオスによって
追い出されることがある。
そうした場合、ライオンのオスは、その群れの
子供を皆殺しにしてしまう。
これには理由がある。ライオンのメスは
子供がいる間は発情しない。つまり妊娠できないのである。
その為、ライオンのオスは自分の子供を作ろうとしたら
その群れの子供を全部殺してしまうのが手っ取りはやい。
残酷だが、自分の子供を残そうという生物的本能に
従うならば、こうせざるをえないだろう。
チンパンジーのメスは、この問題を
全てのオスと交尾することで回避する。
つまり、群れ全員のオスと交尾すれば
どこのオスの子供だかはわからない。
そのため、オスは自分の子供かもしれないという
理由で子殺しをする可能性が低くなる。
又、自分の子供かもしれないのだから
群れのオス全体で、メスの子供は大事にされる。
チンパンジーの乱交にはちゃんと理由があるのだ。
また、もうひとつ重要なのは、
多くの相手の子供を産めるという点である。
子孫は、環境の変化に対して多様性を持っていることが
生物として好ましい。その為には一生の間、一つの相手の
子供を産みつづけるというのは、好ましくない。
様々な相手の子供を産むことで、多様な子孫、DNAを得ることが
できる。そして、そのほうが将来の環境変化のリスクに
対し、自らの子孫が強くなるのである。
又、オスにしても多様な相手と交尾することで
自分の子孫を多様な形で残す事を可能にする。
チンパンジーの乱交は極めて生物的に
洗練された乱交形態なのである。
浮気という問題について考える時、
上記のチンパンジーの行動は極めて参考になる。
上記の行動を参考にした上で浮気という人間の行動を
解析するとこうなる。
まず、人間の男女ともに、子孫を残す場合には
「将来の環境変動のリスクに備えて多様な子孫を残すほうが好ましい」
という大前提がある。
そして、アメリカなどの浮気・不倫調査や離婚の統計が
この事実を物語る。
結婚した男性のうち、50%は妻以外の女性との性交渉をもつ。
結婚した女性のうち、25%前後は夫以外の男性と性交渉をもつ。
結婚したカップルの半分が離婚する。
これは、聞き取り調査なので、事実かどうかわからない。
僕個人、女性というのは男性と同じくらい性に積極的であるか
あるいはそれ以上に積極的なのではないかと思っているので
(種としてはそのほうが好ましい)
50%くらいの女性が、夫以外の男性と性交渉しているのではないか。
そんな風に考えている。
また、浮気・不倫は、どんな厳しい処罰がある文化圏でも見られる。
例え、殺されることがあっても、不倫・浮気にはしる男女がいる。
これは、一重に文化に対する自然の勝利なのだろう。
そして、人類の文化が本能を押える事ができない事の
証明でもある。
つまり、だが。
男性が多くの女性と性交渉するのは
種の保存本能からいうと合理的なのだ。
一人の女性に四人の子供を産ませるよりも
二人の女性に二人ずつ子供を産ませたほうが
環境変動のリスクに対してより強靭な次世代を残せる。
また、女性も同様である。
人のメスの場合は、さらに複雑な理由が付け加えられる。
複数のパートナーをもっている場合、
原始時代の女性は、複数のパートナーに対する交尾の
見返りと引き換えに余分な資源を手に入れることができたはずだ。
動物界では、オスが交尾したいメスに対して
資源を提供するのは珍しいことでもなく、日常的な光景である。
安全に守られ、多様な資源とDNAを手に入れる上で
複数のパートナーと上手に交渉をもつ女性は有利だ。
「君を一生守る」は使い古された口説き文句だが
女性にとって、自分と子供を守ってくれる男性というのは
極めて重要である。
原始時代であれば、他の男にレイプされる危険性、
妊娠や出産というリスクに対して、相応のコストを
負担してくれる男性が好ましかっただろう。
そして、一人の男性にのみコストを負担してもらうので
なく、二人の男性と関係し、二人から様々なサービスを
受けた方が女性にとって、より沢山の資源をもてて有利である。
未開民族などでは、そういう形で
自らを守る女性は多く存在する。
先進諸国でも、同じやり方で身を守る女性はいくらでもいる。
また、多くの男性と関係することで、
一人の男性に捨てられた時の保険をかけることも可能だ。
こういった事を考慮した上で結論を述べると、
不倫が、どんなに文化的に容認されていなくても
全ての文化圏で見られるのは、間違いなく、
こうした種の保存本能の観点からみて
不倫することが以前は「必要」だった、
あるいは今でも必要だからである。
結婚制度と浮気というのは、チンパンジーの乱交社会が
人間社会においても存続していることを示す一例にすぎないのだろう。
男性は種の保存本能から種をばらまく。
女性は種の保存本能から多くの相手と関係しながら
かつ、子育ての必要性から多くの資源・サービスを
提供してくれる男性を必要とする。
つまり、種の保存本能によって我々は突き動かされている。
我々は「ハダカの猿」に過ぎないのである。
そして、それでいいのだ。
(第二回に続くかもしんない。)