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2005年12月14日

web2.0という戦い


Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(前編)



Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル(後編)


上記はオライリーの記事なわけだけども、
又、ちょっと考えてた事のまとめ的に。
一昨日あたりから書いてた奴が出来たので。
こないだのyahooの買収のことも含めてのエントリ。

本題に入ると
ビジネスモデルってのは、常に移り変わるもんだけど、
今回のweb2.0という話は、これまでの企業間競争とは
ちょっと毛色が違うと感じ始めている。

我々がよく目にする企業間競争とは
実は同一市場におけるゼロサムゲームに近い。

TV、パソコン、他多くの既存製品・サービスにまつわる
企業間競争は皆そうだ。

限られたパイの奪い合いであり、競争者は
常に目にみえた形で存在している。
市場は、すでに可視化されおり、その中で
生き残りをかけて戦っている。

ある意味で、土俵の中で戦っているのである。
土俵の外にはでれない。
出されたら負けである。

ところが、企業間競争では、別の軸の競争が
実は、目に見えないところで行われている。
土俵の外でも戦いが行われているのだ。

それは、新市場を探し出すという競争であって、
こいつが、web2.0という言葉の裏にあるものなんだと
解釈すべきなんじゃないかってこと。

windows95の発売から10年が経った。

その間に世界は変わった。
パソコンはコモディティ、つまり日用品となり、
OSも同じくそうなった。
そして、何よりも、利用者の利用能力もまた、着実に
進歩してきた。

その結果、市場自体が膨れ上がった。

市場が膨れ上がると、同時に大量のニッチ市場、
そして、その背後に非消費者の群れが出現する。

かつてはメインストリームであった
パソコン製品の開発競争やOSの開発競争だけでなく、
他の様々な場所で新たな産業の産声がし始めている。

そして、ユーザーの利用能力の上昇が、
そうした産業の発生を望みはじめている。

ワードとエクセルとネットだけでなく、
もっと他のパソコンから派生するサービスを
大量に必要とする群れが生み出されようとしている。


これが、おそらくはweb2.0なのだと思う。
一つの技術が成熟し、それがコモディティとなると
そこを基点として、別のレイヤーに新たなビジネスが
生まれるのは何時の世も同じだが、
その条件が整ったが故に叫ばれはじめた言葉なんだろう。

もし、そうであるならば、web2.0というのは
かつてのような技術やサービスをコアにした
企業間競争ではない。

それは新たな市場を発見する事を主体とした
新たなマーケットの発見競争なのだと思う。


誰よりも早く新たなマーケットを見つけ、そこにどれだけ速く、
その市場内で評価される製品をリリースできるか、
そして、その市場を大きく育てていけるかというのが
勝負の分かれ目なんじゃないかと思う。

これは、大企業が追求してきたビジネスとは
違う。

大企業とは、生き残りに、つまり、同一市場での
シェアの奪い合いに特化した企業であることが多く、
そういった新市場発見のためのビジネスプロセスを
内部にもっていることはほとんどないからだ。

一方で、ベンチャーなどは、常にニッチな市場を
できれば、誰もまだ見たことのない市場を目指す。

強大な先行他社がいる市場内では、
彼らに勝ち目はほとんどないからだ。


この、企業文化、企業の生き残りに対する戦略の相違が
こういった、技術的断絶の時代において、
それまでの場合と全く違う形で働く。

場合によっては、小さいものに有利に働くのである。

大企業が、中核事業へとその力の大部分を注ぎ、
そして、市場でのパイの奪い合いに躍起になっている間に
その市場から派生した二次市場、そして、新たに生まれた非消費者の
群れを奪うのがベンチャーなんだろう。


そして、その新たな市場を見つけ、その市場を成長させ、非消費を
消費に変えたとき、第二のグーグルが生まれるんだろう。
かつて、企業間の競争において、何度も起こったように。
検索という一つの技術だけで世界屈指の企業に
駆け上がったグーグルだが、こういう企業がこれから
生まれる可能性があると思う。
想像もつかなかった場所から生まれるのだ。
なぜなら、それ以前には、そこに市場はなかったのだから。


無論、そうはいかない場合もある。

web2.0という言葉によって、投資家の期待が最大化されている。
株式市場とは、期待だけで膨らむ。
その結果、第二のITバブルが起きるかもしれない。
昨今のネット列強の買収が物語るように。


もし、ネット列強が期待したほどには、
市場の拡大とユーザーの利用能力の上昇によって
生まれた「非消費者」が多くなかった場合には
買収は悲惨な結果となるだろう。


コレもまた、何度もあった事である。


もし、web2.0と呼べる企業、ビジネスモデルがあるのであれば、
それは、それまでなかった市場をターゲットにしたものであり、
今、すでに見えている市場をターゲットとして
投資家に訴えるベンチャーは期待はずれに終る可能性が高いんじゃないかと思う。

今までは存在していなかった市場をターゲットにするのが
web2.0なのだし、そして、その背後の非消費を消費に
かえるための戦いのはずである。

もし、本当に、非消費者がいるのであれば、だが。

過去に存在していなかった顧客は定量化できない。
だから、勝負の行方は誰にもわからない。

そして、定量化が可能になった頃には
競争は終ってしまっているのである。
卵の中身はドラゴンなのか。それとも腐っているのか。
あけてみないとわからない。

ところでこの間、はてなが「はてなカウンター」をリリースしたが、
はてBでも散々子馬鹿にされていた。

あれは、当たり前で、アクセス解析サービスは、
すでに飽和しているというか、
sinobiであったり、google analyticsのような
圧倒的に優れていて、又、ただのサービスがある。

はてなはベンチャーであって、
ああいう市場に強大な先行他社がある市場には
乗り込むべきではなかったと思う。

小さい会社が、戦いを挑む時、
市場に強大な先行他社がいる場合は
ほぼ確実に負ける。

はてなのような会社は、常に、新しい、今までなかった市場を
開拓するサービスを発表すべきだし、
20人に満たない会社が、企業間競争に巻き込まれたら
それに全てのリソースをつぎ込むことになってしまう。

まだ、レース場で競争できる会社ではないのだし、
誰もいないレース場をみつけるほうが
先じゃないかとも思う。

無論、はてBのように、レースで圧倒的に優位にたったサービスも
あるのだから、そこでは、生き残りと競争優位、シェア確保の
戦いをする必要があるが、他の場所では、競争でなく
探索と発見、育成を続けて欲しいと思っている。



最後に、この間のはてなの近藤社長のインタビューに触れておこうと思う。

50%の完成度でサービスを出す

このコラムは、今まで、はてBなんかで散々ネタにされた。
そんなサービス、誰が使うんだとか
企業としては、常に100%を目指すべきだとか
社長が絶対いってはいけない言葉だとか。


僕に言わせれば、半分正しく、半分間違っている。

最初でも触れたが、競争には2種類ある。

一つは、競合企業との市場のシェアを巡る戦い。
もう一つは、新しい市場を発見するという戦い。

この二つでは、戦い方が違う。

前者においては、常に120パーセントの品質を
目指さなければならない。
なぜなら、常に競合企業の製品100%とするなら
それを何らかの形で上回らなければならないからだ。

だから、100%でなく、120%を、
20パーセント分の付加価値をつけて
リリースしないと話にならなかったりするのである。


一方で、後者は、50%でいいから、とにかく
早くサービスをリリースし、新市場でいち早く
シェアを握らないといけない。

そして、ここが重要なのだが、50%でも
使ってもらえるし、その市場の顧客はその程度の完成度でも
理解を示してくれるんである。

なぜなら、作られたての市場である為に
他に比較すべき、製品・サービスがないからである。

新市場がないとわかったら、そこで撤退していい。
そして、また新たな市場を探せばいい。
そういうトライアンドエラーをしながら
新しい市場を見つけるのがベンチャーなんだし。


はてながカウンターで色々と突っ込まれたのは
そのサービス市場内において、先行他社が存在し、
優れた技術があるのに50%で出してしまったからともいえる。

既存市場の顧客というのは、比較対象を知っているし、
サービスについても口うるさい。質にこだわる。

はてなのような会社だと、そういう顧客とのやり取りを
していたら、すぐに磨り減ってイノベーションが止まってしまう。

50%でいいのは、新市場向けの製品・サービスのみであり
既存市場向けのサービスでは、120パーセントを
目指さないといけない。そして、後者の市場の顧客は、品質にうるさい。
これを満足させきるのは、小さな会社では、中々難しい。

はてなが会社として
生き残りのイノベーションでなく、
破壊のイノベーションを追求するのであれば、
ああいう形での新サービスは
あんまりリリースして欲しくない。

常に、新しい市場、新たな消費を
創造するようなサービスをリリースしてほしい。

はてなの要望市場は、活気があるけれど
それを眺めていると、既存製品の改良の要望が多く、
それの追求をすると、ベンチャーとして強みが消えてしまう事もある。

まだ、その強みを生かさねばならない時期でもあるし、
できれば、顧客やユーザーの要望による製品の改良に
全力を捧げるのでなく、新たな市場の開拓を目指しつづけて欲しい。

それができなければ、
ベンチャーというのはまず
生き残る事は出来ないのだから。

はてなは、ある意味で転換期じゃないかと思う。

つまりは、はてなダイアリーやはてB,はてなRSSのような
既存技術におけるレースに全力を傾ける時期か
それとも、まだ、新たな市場の開拓に精力を傾ける時期か。

企業は、ある時期において、そのどちらかを選ばないといけなくなる。

既存マーケットでのレースをするか、
違うレース場を探すか。

両方を同時に追求することはできない。
それがはてなのような企業が抱える苦悩でもあると思う。

この苦悩の解決策の一つは、事業の売却であり、
育てたサービスを大手に売って、
得た資金でまた新たなサービスと市場を
探すというプロセスに特化するという形である。

いわば、投資会社に近いが、
破壊的イノベーションのみを追求するのであれば
それが一番理に叶っているかもしれないと思う事もある。

ある意味では、発明家のようなものだ。

そして、大企業は、断絶が起きた場合にはどうしたらいいのか?

大企業が強いのは、基本的に金持ちマーケットと
激しい競争のマーケットだ。

消耗戦に陥っても、規模で凌ぎながら
相手を叩き潰せるからである。

それゆえ、もし、web2.0という動きが、
新たなマーケットの創造であるならば、
まず、最初に目をこらすべきは
ネットにおける「PV」の創出である。

例えばだが、はてBなどのSBMのPVの増加は注目に値する。

SBM内のトラフィックの増加は、それまでなかった
トラフィックだ。

つまり、新たな市場が創造されたのである。

このような新たなPV、あらたな情報摂取の形態が
ネット上に現れたならば、それをどう判断するか
できるだけ速い段階で決めねばならない。

買収するか、それとも自分達でも同じサービスを
打ち出すか。

これに失敗すれば、第二のグーグルによる脅威にさらされる。
高く買いすぎても失敗する。育て方を失敗しても同様である。

新たなゲームの行く末は誰にもわからない。

だが、新たな市場が生まれ、そこが爆発的な成長率を
生み出す時、それが、やがては自分達の市場を脅かす存在に
なりかねないという事を、理解せねばならないだろう。



posted by pal at 20:43 | Comment(2) | TrackBack(1) | コラム このエントリーを含むはてなブックマーク | 編集
この記事へのコメント
このオライリーさんの論文、来月号のインターネットマガジンに掲載されていますネ
Posted by マルセル at 2005年12月15日 00:08
マルセルさん、情報ありがとうございます。
インターネットマガジン読んでみますね。

それと、いつもコメントやTBありがとうございます。
Posted by pal@管理人 at 2005年12月15日 00:51
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僕はちょっと感じ方が違うなぁ。
Excerpt: この記事を読んだ。 http://blogpal.seesaa.net/article/10664083.html  確かにそのとおりなんだけれども、先行者だけが利益を出せるかというかというと、そ..
Weblog: あるメモ帳。
Tracked: 2005-12-15 12:19