まぁ、予想通りというか、今回の金融危機のアメリカじゃ犯人捜しが始まっています。
今回の金融危機の主犯としては、サブプライムレンダー、ブローカー、投資銀行、格付け機関、政府、借金した人が上げらます。ただね、今回の金融危機って、もうアメリカ一国の問題に収まってないんですよね。
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最初は、アメリカだけの問題と思われていた金融危機が、あっという間に全世界に燃えひろがっているわけです。これ、サブプライム危機ってだけじゃくくれないんです。
日本のバブルが崩壊しても、他の国にまで直接的な影響は与えなかったけど、今回は、全世界に危機が燃え広がっている。
問題の根源は、なんですがね。全世界的なマクロ経済の脆弱性なんです。これは2000年台あたりから特に酷くなっていたことなんです。今日は、そのあたりの話をしようかと思うんですがね。
問題の芽に関しては、どこまで遡るかによるんですが、アジア通貨危機あたりまで行くのが良いかと思うんで、そこから始めますが。
当時のアジア諸国は「アジアの虎」とか呼ばれてて、年率5〜8%の成長を遂げていたわけです。誰もがうらやむ経済成長で、これらの国々の先行きは薔薇色かと思われていた矢先でした。
しかし、一方で、これらの国々は、マクロ経済での脆弱性を抱えていました。タイやマレーシア、それから韓国あたりがそうなんですが。
これらの国々の成長は、ある一面では、海外からの資金流入によって支えられていました。今、やばくなっている国々もそうですがね。外貨建てで資金いれこんで吹っ飛びかけてるアイスランドやらアルゼンチン、ハンガリーあたりそうですけど。
これらの国々は、経常収支の赤字を、海外からの資金流入によってファイナンスしてたわけですよ。短期の借金をくるくる回して、赤字を補填してる家計みたいなもんです。
これは継続的な海外からの資金の流入を前提にしたやり方なので、その副産物として、為替レートが過大評価されることになります。
過大評価された為替レートと、経常収支の赤字。これが、アジアの虎のアキレス腱でした。
もし、何かのショックで、海外の投資家が、もう赤字をファイナンスはしないと決めて、一斉に資金を引き揚げれば、為替レートは暴落します。その結果として、今、アイスランドで起きてるように、払わなきゃいけない対外債務が雪だるま式に膨れあがることになります。
そうならないためには、どうすればいいか?
簡単にいえば、高金利にして、海外からの資金を呼び戻すことです。ただし、その場合には、高金利によって、自国内の銀行や不動産が皆殺しにされることを覚悟しないといけません。実態経済が酷い状況になることも。
一方で、海外資金が逃げ出すと、銀行や不動産などは、突如として資金が逃げ出したことによる混乱にさらされます。資金繰りがつかなくなって、銀行が潰れたり、不動産市場がメルトダウンするわけです。
ここで銀行や不動産を守ろうとするなら、金利を低く保つしかありません。
ここで、重要なのは、この二つは同時にできないということです。
アジア通貨危機では、諸国がやったことは後者です。海外の資金が逃げ出した後、弱り果てた銀行や不動産を守るために、金利を下げた。金利が下がったので、資金が逃げ出して、外貨準備は急速に減少した。
そこをついたのがヘッジファンドで、徹底的に過大評価されていた通貨を売り崩して、やりたい放題しまくったわけです。外貨準備のない国は、もう投機にやられるままだったわけです。
でなんですけどね。
ハンガリーは、外貨建ての借金をしまくった国です。というか、東欧諸国は、救いようがないんですよ。アジア危機の教訓を学んでないというか。
過大評価された為替レートと、経常収支の赤字を抱えている国々は、これから地獄を見かねません。
アジア金融危機を鮮やかに指摘したのが、ルディガー・ドーンブッシュです。
「ネズミ講がうまく回り続け、為替を安定的にするためには引き続き資金の流入が必要だが、そのためには外国投資家のリスクに見合うように金利を引き上げねばならない。しかしこれは不動産と銀行をさらに悪い状態にする。銀行を生かしておくには、金利は引き下げねばならない。政府は両方を同時に実現することはできない。政府は金利を下げ、そして為替については投機をやらせるままにした。これが現実におきたことだ。」
いわゆる、ネズミ講、ポンジファイナンスに近いんですよ、こういう仕組みって。
金融の自由化以降、国民に薔薇色の未来を約束した政府の多くが、外貨建ての資金調達に依存しました。
海外からお金を借りるのは問題ないんですよ。ダム創るのだって、発電所たてるのだって、お金のない国は他から借りてくるしかない。
問題は、その借りた金をどこに使うかです。発電所やダム、道路の整備なんかの社会的インフラならいい。しかし、問題は、多くの国々で、そういうお金が不動産に使われたってことです。馬鹿げている。そりゃ、一時はいいですよ。不動産の値上がりによって、借り手は、不動産の値上がり分を担保にして借金して消費できます。それで、国内経済が堅調になる。
でも、結局は、バブルにしかならないんです。そして、そのバブルは海外からの資金流入によって支えられてるわけで。その金がある日、突然消えたら、後に残るのは不良債権の山と対外債務です。
その上、資源バブルが起こってたので、そっち系の企業には銀行が過剰融資していました。結局、これも不良債権になります。
最後に残るのは、不良債権という十字架なわけです。バブルをエンジョイすれば行き着く先はそこです。そして、これから起こるのもそういうことなんです。
1992年ERM戦役経験者は、これは直ぐに制御不能になるんだよ、と言っている。
ヘッジファンドが東欧のペッグ制をぶっ潰して血の味を覚えれば、今度は莫大な赤字の穴埋めを外国からの借金に依存している、ユーロ経済圏の国を狙うかもしれない…特にスペイン、ポルトガル、ギリシャ辺りがヤバイ。
ハンガリーのびっくり利上げ3%で、東欧の危機深まる
2年前であれば、まだ収集がついたかもしれない事態は、もう手がつけられない状態になりつつある。ヘッジ連中が、東欧に襲いかかってるみたいですが、次にスペインあたりが狙われるのは時間の問題でしょう。(どうも不良債権隠しているっぽいですからね)
このあたりは、日本がアジア危機の時にくらったことでもあるんですがね。
金融危機を引き起こすには、二つの異なったプレーヤーを必要とします。一つは、借りすぎた借り手。アジア通貨危機では、アジアの虎。今の危機では、東欧諸国、スペイン、ギリシャ、ポルトガル、それから幾つかのアジア諸国。アメリカの消費者。オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン。
そしてもう一つは、貸しすぎた貸し手です。筆頭は日本とアメリカ、それからユーロなどです。馬鹿げた勢いで、アクセルを踏んで世界に金をばらまいた。
特に日本なんて、1990年台中盤から、世界に円をあふれさせて満足してたわけですが。
その結果、低利のアメリカや日本で借り入れて、海外の高金利の資産に投資するキャリートレードが引き起こされました。
東欧や中南米の不動産や資源関連にそういった金がばらまかれ、不動産と資源のバブルが引き起こされたわけです。
しかし、巨額の資金流入とは、すなわち、経常収支の赤字と実質為替レートの増大を意味するんです。これがわかってない政府が多すぎた。それとも、意図的に無視したのか。
これは、血に飢えたヘッジファンドの連中の前に、肉をぶら下げるようなもんです。投機のチャンスを極大化させるようなもんです。もし、運良く、ヘッジファンドの攻撃をかわせたとしても、問題は残ります。例えば日本。
1998年、日本で、金融危機が起こると、ムーディーズは、日本のソブリン債務の格付けを引き下げました。当時、アジアの最強の経済国家であった日本の格付けの引き下げは、アジア全体への投資家の信任を失わせました。
不良債権さっさと処理しときゃよかったのにと今さらながら、ぶつくさいいたくなりますが。当時、僕は何もわかってませんでしたがね。おかげで、ジャパンプレミアムなんて状況が現出したんです。
1990年代にはいるとバブル景気が終焉し、それにより青天井に上昇していた地価が大幅に下落した。金融機関はバブル景気の時に不動産会社などに大量の資金を融資していたが、土地の価値が失われたため返済ができず債務不履行(デフォルト)や倒産が相次いだ。さらに無謀ともいえる海外投資の結果、大量の資金が海外へ流出したため日本の金融市場は著しい資金不足に陥ってしまう。その結果ショートによる破綻を回避しようと海外の銀行間取引市場(コール市場)へなだれ込み、資金調達を行なった。しかし日本の会計は取得原価主義であったため保有の資産が取得時の高値価格で記録されており、簿上の財務に隠された含み損に対し海外の金融市場は不信感を募らせ、日本の金融機関に対してのみ通常の金利よりより多くの金利を要求するようになった。
影響
国内からの資金調達が困難な状況に陥っていたうえに金利上乗せが発生したため無担保コール市場などが混乱し、日本の金融機関は海外からの資金調達も困難になった。特に北海道拓殖銀行(拓銀)は無担保コールを当てにしていたため大打撃を被り、これが影響して破綻に陥っている。そしてその拓銀から融資を受けていた山一證券も破綻するなど負の連鎖反応が起きている。
ジャパン・プレミアムComments
結局、バブルのつけを日本は払わされることになったわけです。市場からのアタックによって無理矢理払わされた、といってもいいんですよ。それ以前、日本の政治家と官僚と銀行が一体となって、損失の隠蔽と先送りを繰り返していたんですけどね。
しかし、日本の金融機関に対する信任が薄れ円安が進むと、日本から機械を輸入して工業化を進めていたアジア諸国がさらに打撃をうけて通貨の切り下げをしかねないので、日本とアメリカはせっせと円買い介入をして、円を支えたわけなんですがね。
しかし、結局のところ、この脆弱性故に、日本の金融機関は、高すぎるツケを支払わされることになり、北海道拓殖銀行と山一の倒産への連鎖を引き起こされることになったわけです。
これから不良債権を隠し通そうとする国は、高いツケを払わされることになります。日本と同じくね。結局のところ、不良債権買い取って、公的資金いれて、駄目な銀行は整理・合併させていくしかない。辛いでしょうが、そうしないと金融危機を自己実現することになるわけですよ。
アジア通貨危機の時は、危機国が困難を脱出するために、輸出先が必要でした。しかし、アジア最強の経済国である日本には、その力がなかった。
また、アジアの様子がおかしくなると、無謀ともいえる海外投資を続けていた邦銀は、一斉にアジアから債権を引き上げた。これによってアジア通貨危機は、フルスロットルで進行することにもなったわけです。日本はアジアを見捨てた、と言われてもしょうがない。この時の恨みは、まだ向こうの金融機関は忘れてないでしょうね。
悪夢の階段を転げおちていったわけなんですがね、日本とアジアは。
今、世界で起きているのも同じことなんです。ちょっと違いがあるのは、アメリカまで、この罠にはまってバブったことですかね。
アジア通貨危機の時に、貸しすぎた貸し手、バブルの輸出国だったのは、低金利やってたアメリカと日本だったんですが、サブプライム問題で、貸しすぎたのは、アメリカと日本の低金利、それから途上国を中心として膨らんだ余剰貯蓄なんです。
「お願いですからもうやめて下さい、グリースパン議長、福井総裁、途上国の貯蓄者の皆様」
と、バブルが起こってた国々が苦情を言ってもおかしくなかった。でも、愚かにも、そういった国々は、そういった低金利について、歓声で答えた。
借り手は借りすぎた。アメリカでは投資銀行、ブローカー、サブプライムレンダー、格付け会社がそれを後押しした。流入した資金を高金利の金融商品に変える形で。不動産バブルが起こり、それがさらに金融システムを脆弱にしていった。
東欧やEU、オーストラリア、中南米では、流入した金を外貨建てで借金して、家や車に変えた。資源バブルが起こったので、だれもがそれが永続すると信じた。そして不動産バブルが起こり、景気に沸き立った後、今、その全てが消え失せた。
ここ数年、多くの国は、経常収支の赤字を、低金利国の資金でファイナンスしてきた。彼らの成長は、低金利国からの資金の流入とアメリカへの輸出、資源バブルで支えられてきた。
為替レートが過大評価され、資金の流入が続き、資源が上がり続ける限り、このネズミ講は回り続ける。
しかし、一旦、資金の流入が終わり資源価格のバブルが終われば。
残るのは、過大評価された為替レートの巻き戻りによる対外債務の増大と経常収支の赤字。そして、減り続ける外貨準備。
そして、一斉に資金が引き戻されるので、世界的な信用収縮が引き起こされてしまう。
途上国の政府に残った選択肢は、二つしかない。
1 「金利を上げ続けて、資金を呼び込見続ける。しかし、金利を引き上げれば、不動産バブルで崩壊しつつある自国の金融システムを犠牲にすることになるが、それは見捨てる」
2 「金利を下げて、不動産バブルで痛んだ金融機関を助ける。一方で、それは海外かの資金の流入を止めることを意味するので、為替については投機にやられるままになる」
いずれにしろ、ただじゃすみません。1では、自国の金融システムが犠牲になるし、2では、為替が売り崩されるので自国の輸出産業が犠牲になる。
今回の危機について、はっきり言えるのはこういう事です。
全世界が借りすぎて貸しすぎた。要は、未来の富を前借りしすぎたって事です。
そして、その未来が、現在になったわけ。
バリー・アイケングリーン教授によれば、一国全体に広がった銀行危機は、起きた年の経済成長率を1%低下させ、その翌年には3%程度低下させ、その次の年からは程度がいくらか少なくなるそうです。
また、このコストとは別に、銀行危機を解決するために、不良債権を買い取るコストと公的資金の注入コストが必要となります。これは、大体、合計でGDPの10%から20%になるそうです。(過去の例からみて)
結局のところ、バブルのつけは、払わないといけないわけ。