というわけで、今日は、僕の好きな本「松下幸之助日々のことば」のご紹介です。
なにそれ?って思う人がいるかもしれませんが、現在のパナソニックの創業者、松下幸之助の696の言葉をまとめたモノです。
たったそれだけです。
wikipediaにありますが、
父親が米相場で失敗して財産を失ったため、小学校を4年で中退しわずか9歳で宮田火鉢店に丁稚奉公に出た。
まともな教育なんて、何一つ受けなかった人です。ただ、そんな人だからかもしれませんが、ほんのわずかな言葉で、物事の核心を言い表す能力の持ち主でした。
まぁ、また「マッチョ」の話か、とか思うかもしれませんが、でも、すごくいいことが沢山かいてあるんですよ。しかも、数行の文章で。これ、凄いことなんです。たった数行の文章で、深くて面白い事を述べてしまうんですからね。
うちのブログみたいにダラダラ長くつまらんことを書いたりはしてません。本当に短い。僕、疲れた時とか、よくこの本読むんです。本当に凄い本でしてね。
ほら、名言集とかあるじゃないですか。ネットでもよくあるし、僕も紹介してきましたけどね。
ただね、そういうのって、過去の偉人たちの集大成なんですよね。でも、この本は、松下幸之助の言葉だけです。それだけです。でも、それなのに、本当に面白いんです。名言の宝庫とは、まさに松下幸之助のことをいうんだと思います。
wikipediaにもありますが、
また、「松下はどのような会社ですか?」という問に対し「松下電器は人を作る会社です。あわせて家電を作っています」と答えた。
気がきいた返しだと思いません?こういうのが一杯載ってるんですよ。信じられないほど。
せっかくですから、いくつかお気に入りを紹介させてもらいますけど(ってかね、名言多すぎて紹介しきれないくらいあるんですよ、マジで。)
この本、月ごとの構成になってまして、1月の名言、二月の名言って形でまとめられています。だから、ここでは、三月の名言でお気に入りなのを紹介させていただきますが、
人間はともすれば、うまくいけば自分の腕でやったと思いがちである。それがおごりに通じる。だから、事がうまくいったときは運がよかったと考え、うまくいかなかったときは運がないと思わず、腕がなかったと考えたい。そうすれば、自分の力をあげざるを得まい。
(成功と失敗)
いきなりマッチョイズムかよ!とか思う方もおられるかもしれませんけどね、ただ、やっぱり、これは真理だと僕は思うんです。自分の力をのばす心構えってのは、絶対に人間に必要なものだと僕は信じているんです。
熱意というのは人から教えてもらって出てくるものではない。自分の腹の底から生まれてくるものである。
名言集とかの存在意義を失わせちゃう言葉ですが、たしかにそういうモノです。
商品の価値は、つくる人間より使う人間の方がよく知っている。買ってくれる人に聞くのが一番いい。
これもお気に入りなんですけど、はてなの「50%の状態で出す」じゃないですが、ユーザーの意見をくみ取るのが良い製品作りの近道っていうのは、今も昔も変わらないようです。無論、いくつか問題もあるでしょうが、これはやはり基本の一つでしょう。
順調なときに失敗の原因が生まれ、困難に直面しているときに成功の芽が生まれる。
これもお気に入りなんです。最近のサブプライム問題も、そうでしたけど、経済が好調な時に限って、なんかおかしなことが進行していたりするんですよね。それから、困難に直面している時に限って、何かの新しいモノが生まれてきたりする。不思議なものですけど。終わらない不景気はありません。かならず、再生の時期が来るんです。
人より多く働くことは尊い。しかし、人より少なく働いて、今まで以上の成果をあげることもまた尊い。
働くばかりが能じゃありませんよ、という経営の神様からのお言葉でふ。
天国の良さは地獄に落ちてはじめてわかる。不足を経験しなければ満ち足りた喜びは真に味わえない。
昨日のエントリはこれをだらだら長いこと述べたようなものなんですが。やっぱり、松下幸之助みたいに、20文字くらいでまとめたほうがよいですね。
事にあたって、ある程度の負担や多少足をひっぱられることは最初から覚悟してあたるべきだ。
これもお気に入りです。何するにしても、万事順調にいくなんてことはまずありませんからね。最初から、ある程度の負担や多少足をひっぱられることを想定しとくのが丁度いいんだと思います。
美と醜は表裏一体。美の面にとらわれ、反面の醜を責めるに急なのは、真実を知らぬ姿である。
これ、特に好きな言葉です。美と醜は、一つのコインの裏と表で、結びついているんです。醜いものを責めて無くそうとするのは簡単ですよ。でも、それは醜ものがあるから、美しいものがあるんだってことを無視している。この二つは、同じコインに刻まれているんです。
自分の意志によって何でもできると考えれば、必ず迷いが生じ苦難に陥る。心すべきことである。
これ、五月の言葉なんですが、好きな言葉なんでついでにご紹介。あのですね、僕、あんまり努力って言葉が好きじゃないんですよ。いやね、時々、僕も使いますけどね。
ただね、努力って言葉の裏側には、「頑張れば自分の意志によって何でも出来る」っていうある種の傲慢が感じられて、どうにも好きに慣れない部分があるんです。
この社会は、専業化と分業が進んでいるわけです。皆さんの生活に必要ほとんどのモノは、他人が作ったモノです。
我々は、生きていく上で、「他の人が私に必要なものを作ってくれる」っていう暗黙の了解の下で生きているんです。そういう信頼が、分業と専業化を支えているんです。
貴方一人の力で出来ることなんて、どんなに努力しようがたかがしれているんです。
他人と分業し、自分で出来ることをして、初めて、人間ってのは、一人でするよりも遙かに大きい事を成し遂げられるんです。そこを忘れてはいけないってね。
だから、富を生み出すのに重要なのは、努力よりも、分業や協業、専門化なんだと僕は思っているンです。自分の意志で何でもできるとか、自分の地位があるのは自分が努力したからだとか思うのは、思い上がりも甚だしいって思うクチなんです。
自分一人で何でもできると思って、何かに挑めば、ほぼ確実に失敗するし、貧乏になります。
貴方が成功できたとしたら、それは、色んな人と分業して、優れた成果を生み出せたからに他ならないんです。今の社会ではね。そこが重要なことなんです。一人で出来ることなんてたかがしれているんです。
あと、ついでに、5月のことばの最後についている松下の話がお気に入りなんで、ご紹介しておきます。
利益だけでは動かない
たとえば、ライオンに肉をやる。おまえの与え方が悪いから、おれは食わん、というライオンはいませんわな。とにかく腹がへっていればかぶりつく。それを十回ほどくり返していれば、顔を見せるだけで、ハハー、これはいつもわしに肉を人だなぁ、となついてくる。
ところが人間はそうはいきませんね。与え方によっては、「けしからん、そんなもの食えますか」と、こうなります。考えようによっては人間ほど厄介なモノはありません。しかし、これは、ある一つの正義感とか、正義とかね、そういうものと合わせて与えれば、それは成り立つことだと思うのですよ。人間は利益で動く面と、利益だけでは動かないという二つの面をもっていますからね。
まぁ、人間の心というものは複雑微妙というか、いわば千変万下の様相を呈しているものです。そして、そうした複雑微妙な心を持った様々な人によって成り立っているのがこの社会です。ですから、われわれはまずよくこの人間の心、人情の機微というモノをしらないといけませんね。そこから、よい人間関係も明るい社会も生まれるのではないでしょうか。
ついでに、ですが、昭和43年の発刊以来、累計400万部を超えているビジネス版バイブルである
も紹介させていただきます。これも、まぁ、定番っちゃ定番なんて、読んだ事がある人のが多いとは思いますけどね。松下幸之助のエッセイですけど、これはビジネスに関わる人間だったら読んだほうがいい。とにかく、含蓄が全然違う。
ビジネス書では、やっぱりね、8歳から商売に関わってきた人の言葉ってのは違うんですよ、レベルが。
そんなんで、読んだことのない人は、是非読んでみてください。これは本当に面白い本です。昭和からずーーーーっと読み継がれている理由は、読めばわかります。
これこそ、ビジネスのすご本ですよ。絶対に時間の損にはなりません。
あ、ついでに、もう一つ、この話も、「日々の言葉」からご紹介させていただきます。最近の流れで、ですけど。
幸せな時代
現在は一面生きがいを求めやすい時代だと思います。昔に比べたら、ずっと生きがいが見つけやすくなっている。たとえば、江戸時代なら、士農工商という身分がきっちり決まっていましたね。サムライの家に生まれればサムライになる、町人の家に生まれれば町人になる、というようにどういう道に進むかは最初から決められていた。選択の余地はなかったわけですよ。そういう状態の中では、自分のやりたい事をやるとか、適正を生かすということはむずかしかったと思うんです。
ぼくの少年時代には、もうそういった身分制度はなくなって、各人がそれぞれ志を持って道を求めることがしやすくなっていました。けれど、今のようなことはなかったですね。職業一つ選ぶにしても、限られた範囲でしかなかった。今は職業にしてもさまざまなものがありましょう。ぼくなど、名前を聞いただけでは分からないようなものも多いですが、とにかく非常にふえてきた。
また、高校、大学へも、行きたければ行くことができますし、自分のすすみたい道、あるいは自分のやりたいことが自由に選べるわけです。
そういう意味で、現在は生きがいを見つけやすい時代だと思うんですよ。今の若い人たちは実に幸せな時代に生きていると思います。
もひとつ。
百万円もらって不足をいう人もあれば、紙一枚もらって喜ぶ人もある。後者は心の豊かな人だと思う。